東洋大学パワハラと不正裁判を糾弾する会

東洋大学パワハラ裁判
控訴理由書

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令和6年(ネ)第1270号 損害賠償請求事件

控訴人(一審原告) 福田 拓也

被控訴人(一審被告) 学校法人東洋大学

控訴理由書兼訴え変更申立書

2024(令和6)年5月5日

東京高等裁判所 第8民事部 御中

控訴人(一審原告)   福  田  拓  也




目次

第1章 第一審訴訟手続きの違法……………………………………………………5

第1 前提事実…………………………………………………………………………5

1 第一審第2回口頭弁論の展開と構成……………………………………………5

2 第一審が本人訴訟であったこと…………………………………………………5

3 第一審大須賀寛之裁判長と東洋大学法学部とをつなぐ個人的人間関係のネットワークの存在の可能性…………………………………………………………………5

第2 第一審において大須賀寛之裁判長が控訴人本人尋問主尋問個所につき控訴人を欺いた違法行為…………………………………………………………………………6

1 第一審大須賀裁判長が指示した陳述書のアンダーライン部分が控訴人本人尋問主尋問で全く質問されなかった事実……………………………………………………6

2 上記事実からの大須賀裁判長が控訴人を尋問個所につき欺いた事実の推認… 11

3 大須賀裁判長が控訴人を尋問個所につき欺いた事実が法令違反であること…11

(1)上記行為が被控訴人東洋大学への加担であること……………………………11

(2)上記行為の違法性…………………………………………………………………12

第3 控訴人本人尋問の主尋問における法令違反……………………………………14

1 控訴人本人尋問主尋問が被控訴人の主張を立証させようとした事実…………14

(1)東郷裁判官による主な質問………………………………………………………14

(2)上述の質問がすべて被控訴人東洋大学の主張を控訴人に立証させようとしている事実……………………………………………………………………………………15

(3)東郷裁判官による上記尋問の法令違反…………………………………………16

2 多重法令違反主尋問………………………………………………………………… 18

第4 裁判官が判決で争点を変更した違法行為………………………………………32

1 裁判官による争点変更の事実………………………………………………………32

2 第一審裁判官による争点変更の違法性……………………………………………33

3 原判決の違法性………………………………………………………………………34

第5 小括…………………………………………………………………………………35

第2章 原判決の違法性…………………………………………………………………35

第1 原判決におけるパワハラ判断基準の欠如………………………………………35

1 パワハラ3要件の無視………………………………………………………………35

2 パワハラ判断基準の欠如……………………………………………………………36

3 通常の業務範囲逸脱という判断基準の無視………………………………………36

第2 控訴人によってなされた主張の遺脱……………………………………………37

1 遺脱された主張………………………………………………………………………37

2 主張の遺脱の違法性…………………………………………………………………50

(1)本件行為1~9に関する主張の遺脱の違法性…………………………………50

(2)「付随的ハラスメント」に関する主張の遺脱の違法性………………………50

(3)パワハラの長期にわたる継続性と大規模な組織性に関わる主張の遺脱の違法性……………………………………………………………………………………………50

第3 認定事実の遺脱……………………………………………………………………51

1 前提事実の誤り及び遺脱……………………………………………………………51

(1)「ハラスメントの防止に関する定め」に関する事実の遺脱………………….51

ア パワハラ3要件及び6類型の遺脱…………………………………………………51

イ 「学校法人東洋大学ハラスメントの防止等に関する規程」第18条7項の遺脱

………………………………………………………………………………………………….51

(2)「本件訴訟に至る経緯」に関する事実の遺脱…………………………………52

(3)控訴人の経歴の遺脱………………………………………………………………52

(4)控訴人のくも膜下出血既往症の遺脱……………………………………………53

2 本件行為1~9及びパワハラの長期にわたる継続性と大規模な組織性に関する認定事実の誤りと遺脱……………………………………………………………………53

第4 事実認定及び法令解釈適用の違法………………………………………………69

1.本件行為1……………………………………………………………………………69

2.本件行為2……………………………………………………………………………75

3.本件行為3……………………………………………………………………………80

4 本件行為4……………………………………………………………………………84

5 本件行為5……………………………………………………………………………88

6 本件行為6……………………………………………………………………………92

7 本件行為7……………………………………………………………………………94

8 本件行為8……………………………………………………………………………96

9 本件行為9……………………………………………………………………………99

10 「小括」について……………………………………………………………… 101

(1)本件各行為の不法行為性……………………………………………………… 101

(2)大規模な組織性と長期にわたる継続性……………………………………… 102

(3)損害賠償請求について………………………………………………………… 103

11 安全配慮義務違反について…………………………………………………… 104

(1)安全配慮義務違反の存在……………………………………………………… 104

(2)被控訴人が「学校法人東洋大学ハラスメントの防止等に関する規程」を踏まえた対応を行っていなかったこと…………………………………………………… 105

結語……………………………………………………………………………………… 106

第3章 訴え変更申立書……………………………………………………………… 106

第1 請求の原因の追加……………………………………………………………… 106

第2 変更の理由……………………………………………………………………… 107

1.第一審弁論において「付随的ハラスメント」とされた4件の行為………… 107

2.令和6年に控訴人に授業を全く担当させなかった行為等合計3件の行為… 108

(1)当該行為3件の概略…………………………………………………………… 109

(2)控訴人の令和6年度授業担当を認めない文書の作成とその教授会承認… 109

(3)令和6年に控訴人に授業を全く担当させなかった行為の不法行為性…… 117

(4)深田孝太朗の法学部フランス語専任教員としての雇用…………………… 117


第1章 第一審訴訟手続きの違法

第1 前提事実

1 第一審第2回口頭弁論の展開と構成

第一審第2回口頭弁論(令和5年11月27日)の展開は、控訴人本人尋問のみで、被控訴人に対する尋問は一切行われなかった。控訴人本人尋問については、まず東郷将也裁判官による主尋問が行われ、次いで被告訴訟代理人による反対尋問があり、その後で酒井直樹裁判官による尋問、最後に大須賀寛之裁判長による尋問が行われた。控訴人本人尋問主尋問の構成としては、東郷裁判官による尋問が本件行為1、本件行為4、本件行為6,本件行為7,本件行為8,本件行為9、本件行為1~9についての7つの部分からなり、反対尋問後の酒井裁判官の尋問は主に東洋大学との契約形態や控訴人が教授になった事情に関するものであり、大須賀裁判長の尋問が主に控訴人が教授になった事情、懲戒処分や給料に関する不利益の有無等に関するものとなっている。

2 第一審が本人訴訟であったこと

 第一審において当初は控訴人の訴訟代理人は笹山尚人弁護士であったが、令和5年5月に笹山弁護士を解約したため、第1回弁論準備手続き以降、本人訴訟となった。したがって、第一審第2回口頭弁論の控訴人本人尋問主尋問は、3人の裁判官によってなされた。

3 第一審大須賀寛之裁判長と東洋大学法学部とをつなぐ個人的人間関係のネットワークの存在の可能性

 本件の舞台となったのは、被控訴人東洋大学のうちでもとりわけ東洋大学法学部である。したがって、本件にあっては、被控訴人の主たる部分が大学法学部であるという看過し難い特殊事情がある。大学法学部と裁判官との間に出身大学等を介した複数の個人的人間関係のネットワークが存在し得ることは、社会通念からしても当然に推認される。例えば、東洋大学法学部には、大須賀寛之裁判長と同じ早稲田大学出身者として、令和5年3月に定年退職した****名誉教授と****名誉教授に加えて、****、***、****、****ら少なくとも4名の教員がいる。また、1997年から2003年まで東洋大学法学部教授を務めた*****氏は2010年から2019年まで最高裁判所判事を務めている。このような人脈あるいは他の個人的人間関係のネットワークを介して東洋大学法学部が本件原審の大須賀寛之裁判長に何らかの影響を与えんとして接触を図る可能性は決して排除されない。

第2 第一審において大須賀寛之裁判長が控訴人本人尋問主尋問個所につき控訴人を欺いた違法行為

1 第一審大須賀裁判長が指示した陳述書のアンダーライン部分が控訴人本人尋問主尋問で全く質問されなかった事実

まず、第一審において裁判所が、控訴人本人尋問主尋問に際して、証拠申出書と尋問事項書2通の提出を要求することも、本人訴訟の場合は通例そうであるとされるように、控訴人に質問事項を提出させることも一切なかった。

第一審第3回弁論準備手続(令和5年8月22日)において、大須賀寛之裁判長は陳述書の作成につき控訴人に「裁判所にこの点は訊いてほしい、ここのところを質問してほしいということを中心に書いてほしい」と要求した。その上で、本件行為1~9を中心に「裁判所にこの点は質問してくれというところに陳述書にアンダーライン部分」を引くように指示し、「裁判所がその部分を質問事項として訊いていく」と確約した上で、「付随的な点も裁判所で確認した方がいいことがあれば陳述書に書く」ようにと付け加えた。付随的な点とは、第一審弁論において(準備書面5)で控訴人が指摘した複数の「付随的ハラスメント」のことである。大須賀裁判長はまた、「陳述書をもとにして事実を確認して行く」とも言った。(甲81)控訴人は、大須賀裁判長の指示通り、控訴人主尋問において裁判官に質問されたい個所にアンダーラインを引いた陳述書を作成し(甲80)、アンダーライン部分についての質問に答えられるよう準備して尋問に臨んだが、第2回口頭弁論の控訴人主尋問において陳述書のアンダーライン部分は一つも質問されなかった。(控訴人本人調書)したがって、本人調書冒頭に、東郷将也裁判官の発言として「裁判所からは、この陳述書に記載いただいていることに加えて、補足で何点か質問をさせていただきます」と記載されているのは全くの虚言である。

(表1)

控訴人本人尋問主尋問における、大須賀寛之裁判長による「陳述書の質問して欲しい箇所に下線を引くように」との指示のもと、陳述書に下線を引いた部分(表左側)と、東郷裁判官による尋問(表右側)とを、本件行為1~9について対照表にしたものである。

控訴人本人主尋問における質問を希望した箇所と実際の尋問の比較

本件行為番号

陳述書下線箇所の記述

東郷将也裁判官の尋問

 1

●フランス語教員の増減はフランス語履修者数とは全く関係ありません。2016年の***枠の転用を含めてこれらすべてのフランス語教員人事は一貫して、私を不利益に陥れようとする悪意によるものです。

「あなたは政治学への転用は、教授会の審議を経ずに行われたと主張されていると思いますけど、このように主張されている根拠となる事実があれば、御説明頂いてもよろしいですか?」

「決まった日にちというのは、決まった教授会の日にちということですか?」

「平成28年当時、あなたの教授会への出席状況といいますか、全部出席されたのか、欠席することもあったのかという点について、御説明お願いします。」

「それはどのくらいの頻度で欠席するのですか。」

「あなたは本訴訟において、退任された***教員の教員枠にフランス語教員を補充すべきと主張されていると思うんですけれども、それはなぜですか。」

 2

●**学部長らは、私の原稿を無視するという他の教職員に対しては絶対にしない通常の業務を逸脱した対応をいくつかの選択肢のなかから私を苦しめようという悪意によって選んだのです。

(尋問なし)

 3

●この不平等状態が2016年からほぼ5年間続いていた期間法学部の誰も私にそのような場があることを私に教えなかったことは、孤立し味方のいない弱い立場に立たされた私だけになされたことであり、通常であればトラブルを引き起こすことからなされない行為であることを考えれば、通常の業務の範囲を超えており、私に対する悪意なくしては考えられません。

(尋問なし)

 4

●法学部の大半の語学教員が教養演習を開講している中で私だけが開講していないという異常な事態が10年間も誰にも批判もされずに放置され維持されているという状況自体が孤立し味方のいない私以外の教員には起こり得ない、通常の大学業務の範囲を超えるものです。

●このような状況は、**法学部長らが、私以外の語学教員には「教養演習開講方針」に従わなくていいことを伝え、それによって私だけがこれに従うようにし向けたということがなければ起こり得ません。

●被告が私に対して悪意をもってハラスメントを犯すために、私を不利益に貶めたり苦しめたりする限りにおいて、ある時は6コマ必要と主張し、ある時は5コマでよいと主張しているだけであることがわかります。

「教養演習の担当希望を聞くというような、担当に希望がある場合にはお申し出くださいという内容なんですけれども、このような内容で間違いないですか」

「これに対して、あなたは希望されなかったのですか」

「なぜ希望されなかったのですか」

「この開講方針に従ったら、教養演習を平成23年度に担当できたということは間違いないですか。」

「この開講方針に納得できなかったということなんですけれど、このメールに返信等をするような形でその方針に抗議するとか、とういうことはされなかったんですか」

 5

●法学部のほとんどすべての専任教員が「長」のつく何らかの役職を経験している中、私にだけ20年以上も何らの役職にもつかせないということは、通常の大学業務の範囲内では起こり得ないものであり

(尋問なし)

 6

●****学部長らは、副査の見解は踏まえながら主査である私の見解は審査結果報告書に全く反映させないという私以外の他の教員には決してなされない通常の業務を逸脱したことをしました。

「あなたがこの非常勤講師採用審査の主査となった経緯は、どのような経緯でなられたのですか」

「あなたが主査を御担当されたことは間違いないですね」

 7

東洋大学でただ一人私のみに、ほぼ10年連続で他の入試業務をほとんどさせず日本人であれば誰でもできる留学生日本語試験採点を強要する行為は、偶然にはなされ得ず、私への悪意によるものであると考えるほかはありません。

「あなたも面接を担当する機会を与えられていたということで間違いないですか」

 8

私に対する徹底した組織的な誹謗中傷と仲間外しの結果、大学職員の職分を超えしたがって通常の大学業務の範囲を逸脱したそのような非常識な行為が味方のいない私に対してだけは許されるという共通認識が醸成されており、

「では、最終的に研究計画書が、あなたの作成した原稿から変更されたということはなかったということですか」

 9

●そのような試みが全くなされないままこれだけ大きな予算格差が10年間も維持された事実は通常の大学業務の範囲を超えたものであり、

●私が2016年には**予算委員長に、2017年には****教務課長に予算格差の是正措置を要望しているにもかかわらず、法学部が私の訴えに対して何らの対応もしなかったこと、それどころか、私が2017年に**教務課長にフランス語教育における映画DVDの重要性を強調したことを踏まえて2022年に敢えて教材等購入費でDVD購入を禁ずる規則を定めたことは法学部教職員らの私の教育活動を妨害しようという悪意を明白に証明しています。

「フランス語の予算について、配分を受けるために何か行動をとったことはありましたか」

2 上記事実からの大須賀裁判長が控訴人を尋問個所につき欺いた事実の推認

 大須賀裁判長が控訴人に控訴人本人尋問主尋問個所を前もって指示しておきながら、第2回口頭弁論においては全く別の個所を尋問したという上記事実から、大須賀裁判長が控訴人を尋問個所につき欺いたということが容易に推認される。もちろん上記事実から二つの可能性が想定される。つまり大須賀裁判長は、当初から、つまり第3回弁論準備手続の時点で控訴人を故意に欺いたか、第3回弁論準備手続後のある時点で予定を変えて全く違う質問に変更した上でその変更につき控訴人に全く知らせなかったか、どちらかである。後者の場合でも、尋問事項の変更につき控訴人に全く知らせなかったのであり、それは故意に控訴人を尋問個所につき無知の状態あるいは勘違いしたままの状態に置いたことを意味するから、いずれの場合も大須賀裁判長始め裁判官が控訴人を欺いたことに変わりはない。

3大須賀裁判長が控訴人を尋問個所につき欺いた事実が法令違反であること

(1)上記行為が被控訴人東洋大学への加担であること

そもそも控訴人本人尋問の主尋問にあっては陳述書を踏まえた質問をするのが通例であるところ、第一審にあっては、大須賀裁判長が控訴人を欺き、陳述書のアンダーライン部分はもとより陳述書から全く質問しなかった事実により、控訴人本人尋問の主尋問は、通常の主尋問のあり方を大きく逸脱したものとなった。控訴人本人尋問の主尋問において予想もしていない質問が来ることは通常あり得ないという点で、控訴人は既に不利に陥っている。また、欺くという行為は無意識になされるものでなく通常故意になされると考えるべきものであるから、大須賀裁判長は控訴人を故意に不利な状況に陥れるために尋問個所につき控訴人を欺いたと推認すべきである。そして、控訴人を故意に不利な状況に陥れた事実は、必然的に被控訴人東洋大学を故意に有利にするという結果を伴う。したがって、大須賀裁判長は、東洋大学に何らかの忖度をし、尋問個所につき控訴人を欺くことによって故意に控訴人を不利な状況に陥れると同時に、被控訴人東洋大学に有利に訴訟を展開させることを意図し、それによって一方当事者である東洋大学に加担したと推認するべきである。この忖度については、大須賀裁判長と主に法学部出身者からなる東洋大学法学部教員らとの間に当然想定される多岐に渡る人的関係のネットワークによるものであることは十分に推認される。

(2)上記行為の違法性

 上記の理由により、尋問個所につき控訴人を欺き、訴訟の展開において被控訴人東洋大学を有利な状況に置いた大須賀裁判長の行為は、本件裁判第一審の一方当事者に加担するものと言え、裁判官自ら意図的に公正中立と独立、そして良心に従うという責務を否定するものであり、憲法第76条第3項に明白に違反する憲法違反である。

 公正中立につき、最高裁大法廷判決平13.3.30.裁判集民事201号737頁、判例時報1760号68頁は次のように判示する。「裁判の公正,中立は,裁判ないしは裁判所に対する国民の信頼の基礎を成すものであり,裁判官は,公正,中立な審判者として裁判を行うことを職責とする者である。したがって,裁判官は,職務を遂行するに際してはもとより,職務を離れた私人としての生活においても,その職責と相いれないような行為をしてはならず,また,裁判所や裁判官に対する国民の信頼を傷つけることのないように,慎重に行動すべき義務を負っているものというべきである」。当事者本人尋問の主尋問において、本人訴訟であることを利用して、控訴人を欺き被控訴人東洋大学に加担する行為が、「公正,中立な審判者」としての裁判官が絶対にやってはいけない「裁判官の公正,中立に対する国民の信頼を傷つける行為」であることは明白であり、大須賀裁判長はこの行為によって、「裁判官の公正、中立に対する国民の信頼を傷つけ、ひいては裁判所に対する国民の信頼を傷つけた」(上記最高裁大法廷判決平13.3.30.)と言えるのである。

 良心に従うべきことについて、最高裁大法廷判決昭23.11.17刑集2巻12号1565頁は次のように判示する。「憲法第七六条第三項の裁判官が良心に従うというのは、裁判官が有形無形の外部の圧迫乃至誘惑に屈しないで自己内心の良識と道徳感に従うの意味である」。本件第一審裁判官が被控訴人東洋大学に加担し東洋大学有利な控訴人主尋問本人尋問を組織するために控訴人を欺いた上記行為は、裁判官が「有形無形の外部の圧迫乃至誘惑に屈し」たことを明白に意味するのである。

 大須賀裁判長の上記行為は、裁判所法49条違反でもあると考えられる。高橋省吾は「「裁判官の倫理」について」で次のように書く。「裁判所法49条は、裁判官が高度の品位保持義務を負っていることを前提として「品位を辱める行状があったとき」を懲戒事由の一つに定めたものであり、「品位を辱める行状」とは、職務の内外を問わず、裁判官として国民の信頼を失墜するような醜行を演じたり、裁判の公正を疑わせるような行動をすることをいうのであって(兼子一=竹下守夫・裁判法[第4版]259頁)、具体的に如何なる行為がこれに当たるかは、世人の裁判官に対する信頼、ひいては裁判制度そのものに対する信頼の念を危うくするかにより決すべきであるとされている(最高裁事務局・裁判所法逐条解説(中)148頁)」。上記最高裁大法廷判決昭23.11.17の反対意見には、次のようにある。「具体的にいかなる行状が裁判所法49条に規定する「品位を辱める行状」 に当たるかを一概にいうことは難しいが,「品位を辱める行状」の意義については ,従来,その本来の語感よりは広く解されており,国民の裁判官あるいは裁判所に対する信頼を揺るがす性質の行為がかなり広くこれに包摂されるものとは解される」。本人訴訟であるため控訴人に訴訟代理人がついていないことに付け込み、裁判官が被控訴人東洋大学に加担し、控訴人本人尋問主尋問個所につき控訴人を欺いて、これを不利に陥れることが許容され、同様の非行が横行するようになれば、国民の裁判官や裁判所に対する信頼が揺らぐことは明白である。したがって、大須賀裁判長の控訴人に対する上記行為は、明白に「国民の裁判官あるいは裁判所に対する信頼を揺るがす性質の行為」であると見なされるべきである。

 控訴人を欺いた大須賀裁判長の行為は、以上に加えて、民事訴訟法第2条、及び、訴訟手続きが法律に違反している点で、民事訴訟法第308条2に違反する違法行為でもある。

第3 控訴人本人尋問の主尋問における法令違反

1 控訴人本人尋問主尋問が被控訴人の主張を立証させようとした事実

(1)東郷裁判官による主な質問

 控訴人本人尋問主尋問の主要部分をなす東郷裁判官による本件行為1、本件行為4、本件行為6,本件行為7,本件行為8,本件行為9を対象とする6グループの尋問の主な質問は次の通りである。

ア 本件行為1についての主要な質問

「あなたは政治学への転用は、教授会の審議を経ずに行われたと主張されていると思いますけど、このように主張されている根拠となる事実があれば、御説明頂いてもよろしいですか?」

「決まった日にちというのは、決まった教授会の日にちということですか?」

「平成28年当時、あなたの教授会への出席状況といいますか、全部出席されたのか、欠席することもあったのかという点について、御説明お願いします。」

「それはどのくらいの頻度で欠席するのですか。」

「あなたは本訴訟において、退任された***教員の教員枠にフランス語教員を補充すべきと主張されていると思うんですけれども、それはなぜですか。」

イ 本件行為4についての主要な質問

「教養演習の担当希望を聞くというような、担当に希望がある場合にはお申し出くださいという内容なんですけれども、このような内容で間違いないですか」

「これに対して、あなたは希望されなかったのですか」

「なぜ希望されなかったのですか」

「この開講方針に従ったら、教養演習を平成23年度に担当できたということは間違いないですか。」

「この開講方針に納得できなかったということなんですけれど、このメールに返信等をするような形でその方針に抗議するとか、とういうことはされなかったんですか」

ウ 本件行為6についての主要な質問

「あなたがこの非常勤講師採用審査の主査となった経緯は、どのような経緯でなられたのですか」「あなたが主査を御担当されたことは間違いないですね」

エ 本件行為7についての主要な質問

「あなたも面接を担当する機会を与えられていたということで間違いないですか」

オ 本件行為8についての主要な質問

「では、最終的に研究計画書が、あなたの作成した原稿から変更されたということはなかったということですか」

カ 本件行為9についての主要な質問

「フランス語の予算について、配分を受けるために何か行動をとったことはありましたか」

(2)上述の質問がすべて被控訴人東洋大学の主張を控訴人に立証させようとしている事実

 上記(1)の質問がすべて被控訴人東洋大学の主張を前提としており、東洋大学の主張を控訴人に回答として口にさせることを狙ったものであり、したがって、被控訴人東洋大学の主張を控訴人に立証させようと企図したものであることは明白である。

本件行為1の主要な質問5問は、被控訴人東洋大学の2つの主張、すなわち、フランス語教員枠の政治学枠への転用は教授会の審議を経ているという主張と***フランス語教員枠でフランス語教員を雇用しなければいけないわけではないという主張を立証しようとしている。(被控訴人第2準備書面2頁、第3準備書面2頁)

本件行為4の主要な質問5問は、教養演習担当につき控訴人に担当希望を訊いているという被控訴人東洋大学の主張を立証しようとしている。(被控訴人第1準備書面9頁、被控訴人第2準備書面5頁、被控訴人第3準備書面5頁)

本件行為6の主要な質問2問は、非常勤講師採用審査で控訴人を主査にしているという被控訴人東洋大学の主張を立証しようとしている。(被控訴人第3準備書面6頁)

本件行為7の主要な質問1問は、控訴人に留学生日本語試験以外に面接もさせているという被控訴人東洋大学の主張を立証しようとしている。(被控訴人第3準備書面7頁)

本件行為8の主要な質問1問は、改竄された研究計画書は最終的に控訴人の作成した通りになったという被控訴人東洋大学の主張を立証しようとしている。(被控訴人第2準備書面7頁)

本件行為9の主要な質問1問は、控訴人が予算の不公平をやめさせようと試みなかったという被控訴人東洋大学の主張を立証しようとしている。(被控訴人第3準備書面8頁)

(3)東郷裁判官による上記尋問の法令違反

ア 民事訴訟規則第114条違反

被控訴人本人尋問の主尋問が控訴人から引き出そうとしている上記(2)に明示されている7点の主張は、陳述書のアンダーライン部分に対応する控訴人の主張では全くなく、逆に被控訴人東洋大学の主張である。しかも、上記尋問につき14問中9問が法令違反の誘導尋問となっており、控訴人が一言「はい」と回答すれば被控訴人の主張を述べることになるように仕組まれている点において、上記尋問は極めて悪質な本人主尋問である。

 東郷裁判官は、控訴人本人尋問の主尋問において、控訴人本人尋問の主尋問の立証すべき事項をなす控訴人の主張ではなく被控訴人の主張を控訴人に立証させることを上記尋問を通して狙うことにより、主尋問の内容を「立証すべき事項及びこれに関連する事項」とした民事訴訟規則第114条に反する法令違反を犯している。

イ その他の法令違反

東郷裁判官が控訴人に、被控訴人東洋大学の主張を立証させることを目的とした質問をしたという事実は、必然的に控訴人の主張の機会が奪われたということを意味する。これを言い換えれば、控訴人の依拠する法律効果の発生に必要な事実の提出を裁判官が妨害し、被控訴人の依拠する法律効果の発生に必要な事実の提出を裁判官が控訴人に促すという民事訴訟の根本的あり方を損なう違法が犯されたというべきである。判決の基礎となる事実や証拠の当事者による提出を裁判官が妨害する行為が弁論主義違反の違法であることも明白である。

自身の主張の機会が奪われ、自身の依拠する法律効果の発生に必要な事実の提出を妨害されることによって、控訴人が訴訟進行上不利な状況に陥れられ、必然的に被控訴人東洋大学が有利な状況に置かれることは明らかである。東郷裁判官がこのように一方当事者である東洋大学に加担し、形だけ控訴人本人尋問を実施したものの、実際には控訴人が自身の主張をすることを妨げたのみならず、被控訴人の主張を口にさせることによって控訴人に不利な訴訟展開を実現しようと意図したことは明白で、この行為は、民事訴訟の基本構造を侵犯した極めて不正なものである。

東郷裁判官による控訴人本人尋問主尋問は、一方当事者である東洋大学に明白に加担している点において、大須賀裁判長による控訴人を尋問個所につき欺いた行為と同様、憲法第76条第3項、裁判所法第49条、民事訴訟法第2条、民事訴訟法第308条2等に違反する違法行為を構成する。

また、第一審裁判官らは、控訴人本人尋問主尋問において控訴人の主張が全く述べられないまま、控訴人自身の依拠する法律効果の発生に必要な事実の提出が妨害されたまま、訴訟手続きに重大な欠落があるまま訴訟手続きを進めたのである。そのような欠陥のある訴訟手続きに帰結する判決は、審理不尽の違法を犯していると言うほかはない。

2 多重法令違反主尋問

東郷裁判官による本件行為1、本件行為4、本件行為6,本件行為7,本件行為8,本件行為9を対象とする6グループの尋問の主な質問は、その各々が複数の法令違反を犯す多重法令違反尋問である。

(1)本件行為1についての質問1

「あなたは政治学への転用は、教授会の審議を経ずに行われたと主張されていると思いますけど、このように主張されている根拠となる事実があれば、御説明頂いてもよろしいですか?」

ア 法令違反1

この質問は控訴人が陳述書の下線部を引いた個所に全く対応しない。したがってこれは大須賀裁判長が主尋問個所につき控訴人を欺き控訴人を不利益に陥らせることによる憲法第76条第3項に違反する違法である。

イ 法令違反2

たとえフランス語教員枠の転用が教授会の審議を経ていることが証明されたとしても、それによってこれがパワーハラスメント(以下パワハラとする)でなく不法行為でないことは帰結し得ない。したがってこの質問は争点と関係ない質問であり、民事訴訟規則第115条に反する法令違反である。本件行為1につき争点の中心をなす控訴人の主張は、したがって主尋問で立証すべき事項は、フランス語教員枠の政治学枠への転用が被控訴人の主張するフランス語履修者減によるものではなく東洋大学法学部のパワハラであり悪意ある不法行為であるということである。

フランス語教員枠の政治学枠への転用がパワハラであるというのが争点1に関わる控訴人の主張である。この転用は大学設置基準第13条に反する法令違反であり、法令違反である決定は業務上必要かつ相当な範囲を超えているためパワハラであると見なされる。争点2に関する控訴人の主張は、被控訴人東洋大学が転用の理由をフランス語履修者数減としているにもかかわらず履修者数の変わらない時にフランス語教員を増やしている事実があることから(2008年、2022年)、履修者数が口実に過ぎず、フランス語教員枠の政治学枠への転用が悪意によるパワハラであり不法行為であることであることが証明されるというものである。

ウ 法令違反3

東郷裁判官の質問の主題である教授会決定の有無より重要なのは、フランス語教員枠の政治学枠への転用が大学設置基準第13条に反する法令違反であり、法令違反である決定は業務上必要かつ相当な範囲を超えているのでパワハラになるという点である。(控訴人準備書面4、3頁、準備書面5、5頁)控訴人のこの主張を無視し、控訴人本人尋問主尋問で教授会決定の有無につき質問することによって、東郷裁判官は教授会決定の有無の方がこの転用が法令違反である事実よりも重要であるということを誤って前提し、質問している。このように、教授会決定の有無の方がそれが法令違反である事実やフランス語教員の増減が履修者数と関係ないという事実よりも重要であるという争いのある事項を誤って前提した上での質問であるので、これは誤導尋問であり、民事訴訟規則第115条に反する法令違反である。

エ 法令違反4

教授会決定があったというのは被控訴人の主張であり、控訴人の主張は教授会決定の有無よりフランス語教員枠の政治学枠への転用が大学設置基準第13条に反する法令違反である事実の方が重要だというものであるので、 この質問は被控訴人の主張を立証しようとしていることになる。被控訴人の主張は主尋問において立証すべき事項ではないので、この質問は民事訴訟規則第114条に反する法令違反である。

(2)本件行為1についての質問2

「平成28年当時、あなたの教授会への出席状況といいますか、全部出席されたのか、欠席することもあったのかという点について、御説明お願いします。」

「それはどのくらいの頻度で欠席するのですか。」

ア 法令違反1

この質問は控訴人が陳述書の下線部を引いた個所に全く対応しない。したがってこれは大須賀裁判長が主尋問個所につき控訴人を欺き控訴人を不利益に陥らせることによる憲法第76条第3項に違反する違法である。

イ 法令違反2
 教授会への出席状況に関する主張は控訴人の訴状、準備書面、陳述書のどこにも現れておらず、逆にこれは被控訴人準備書面に現れる主張であることから、この質問は被控訴人の主張を立証することを意図していることが結論される。被控訴人の主張は控訴人本人尋問の主尋問において立証すべき事項ではないので、この質問は民事訴訟規則第114条に反する法令違反である。

ウ 法令違反3
 控訴人の教授会の出席状況及び欠席の頻度はパワハラ及び不法行為の有無とは全く関係がないことから、たとえフランス語教員枠の転用が教授会の審議を経ていることが証明されたとしても、それによって本件行為1がパワハラでなく不法行為でないことは帰結し得ないことは明白である。したがってこの質問は争点と関係ない質問であり、民事訴訟規則第115条に反する法令違反である。

(3)本件行為4についての質問1

「教養演習の担当希望を聞くというような、担当に希望がある場合にはお申し出くださいという内容なんですけれども、このような内容で間違いないですか」

ア 法令違反1

この質問は控訴人が陳述書の下線部を引いた個所に全く対応しない。したがってこれは大須賀裁判長が主尋問個所につき控訴人を欺き控訴人を不利益に陥らせることによる憲法第76条第3項に違反する違法である。

イ 法令違反2

この質問は誘導尋問であり、主尋問では誘導尋問は禁じられていることから、民事訴訟規則第115条に反する法令違反である。

ウ 法令違反3

 この質問は、争いのある事項を事実として前提している点で誤導尋問であり、誤導尋問は誘導尋問に含められることから、これもまた民事訴訟規則第115条に反する法令違反である。「教養演習の担当希望を聞くというような、担当に希望がある場合にはお申し出くださいという内容」というのは事実ではなく、3つの準備書面すべてにおいて教養演習担当希望を控訴人に諮ったが回答がなかったとする被控訴人東洋大学の主張の前提である。ここで裁判官は控訴人の陳述書どころか被控訴人東洋大学の準備書面を踏まえ、そこから質問を引き出している。控訴人の主張は逆に開講方針が控訴人の教養演習開講を妨げることを目的とした不正な文書であるということである。(準備書面4、陳述書)つまり、この質問は、争いのある事項を事実として前提した誤導尋問である。

エ 法令違反4

 開講方針が控訴人の教養演習開講を妨げることを目的とした不正な文書であるということは証拠である陳述書に書かれていることであり、この質問は証拠に現れている内容と矛盾する事項を前提とした質問である点においても誤導尋問であり、民事訴訟規則第115条に反する法令違反である。

オ 法令違反5

 開講方針はその後10年以上にわたってこれに従わない開講例が続出していることから、無効で不正な文書であることが控訴人の提出した証拠によって証明されている。したがって、この質問は開講方針を有効で正当なものであると前提している点において既に出された証拠に矛盾する事項を前提した質問であるので誤導尋問であり、民事訴訟規則第115条に反する法令違反である。

カ 法令違反6

 この質問は、教養演習の開講を私に諮ったという東洋大学の主張を立証しようとしている。被控訴人の主張は控訴人本人尋問の主尋問で立証すべき事項ではないので、この質問は民事訴訟規則第114条に反する法令違反である。しかも、この質問は、控訴人本人尋問の主尋問で被控訴人の主張を立証し、控訴人に教養演習の開講を控訴人に諮ったという東洋大学の主張を言わせて、これが控訴人本人尋問の主尋問である以上、被控訴人東洋大学の主張を控訴人の主張として調書に書くことを目的とする非常に悪質なものである。

キ 法令違反7

 この質問は争点に関係のない質問である。たとえ東洋大学法学部が控訴人に形式的に教養演習担当を諮ったとしても、その後10年間以上の間に開講方針を守らない開講が相次ぎ、また東洋大学自らその行為と言述によって開講方針を否定していることにより開講方針が、そして控訴人に不正な開講方針に基づいて教養演習開講を諮るという行為自体が無効で不正なものであることが事実によって証明されている以上、東洋大学が教養演習を控訴人に担当させないというパワハラと不法行為を犯していないということが全く帰結しないし証明もされないので、この質問は争点に関係のない質問であり、民事訴訟規則第115条に反する法令違反である。

教養演習開講問題についての争点と関わる控訴人の主張は、控訴人以外の大半の語学教員が10年以上に渡って渡って開講方針を守らずに教養演習を担当しているという事実、東洋大学自ら開講方針の中心の一つであるコマ数につき開講方針と矛盾する行為と言述をしている事実から東洋大学の悪意あるパワハラが帰結するというものである。矛盾する行為というのは、語学授業最低6コマ担当を課する開講方針と異なり2023年度東洋大学は控訴人に4コマしか授業をやらせていないという行為である。矛盾する言述というのは、被控訴人準備書面で東洋大学は開講方針に反して授業担当は5コマでよいと主張していることである。(第3準備書面、10頁)

ク 法令違反8

 この質問はすべて明白に東洋大学法学部が教養演習開講を控訴人に諮ったのに控訴人が希望しなかったという東洋大学の主張を立証することを目的としている。このように東洋大学側に与することで、東郷裁判官は公正中立、独立、そして良心に従うことを放棄することによって、憲法第76条第3項に反したことになり、明白な憲法違反を犯している。

(4)本件行為4についての質問2

「これに対して、あなたは希望されなかったのですか」

「なぜ希望されなかったのですか」

ア 法令違反1

これらの質問は控訴人が陳述書の下線部を引いた個所に全く対応しない。したがってこれは大須賀裁判長が主尋問個所につき控訴人を欺き控訴人を不利益に陥らせることによる憲法第76条第3項に違反する違法である。

イ 法令違反2

 これらの質問は、教養演習開講を私に諮ったのに私が希望しなかったのでハラスメントはないという被控訴人東洋大学の主張を立証しようとしている。被控訴人の主張は控訴人本人尋問の主尋問で立証すべき事項ではないので、これらの質問は民事訴訟規則第114条に反する法令違反である。

ウ 法令違反3

 控訴人が無効で不正な開講方針に基づく誘いに応じて教養演習開講を希望するかしないかは東洋大学が教養演習を控訴人に担当させないというパワハラと不法行為の有無とは全く関係がないので、この質問は争点に関係のない質問であり、民事訴訟規則第115条に反する法令違反である。

エ 法令違反4

 これらの質問は、教養演習開講を控訴人に諮ったのに控訴人が希望しなかったのでハラスメントはないという被控訴人東洋大学の主張を立証しようとしている。このように東洋大学に加担することで、東郷裁判官は公正中立、独立、そして良心に従うことを放棄することによって、憲法第76条第3項に反したことになり、明白な憲法違反を犯したことになる。

(5)本件行為4についての質問3

「この開講方針に従ったら、教養演習を平成23年度に担当できたということは間違いないですか。」

ア 法令違反1

この質問は控訴人が陳述書の下線部を引いた個所に全く対応しない。したがってこれは大須賀裁判長が主尋問個所につき控訴人を欺き控訴人を不利益に陥らせることによる憲法第76条第3項に違反する違法である。

イ 法令違反2

この質問は誘導尋問であり、主尋問では誘導尋問は禁じられていることから、民事訴訟規則第115条に反する法令違反である。

ウ 法令違反3

 この質問は、争いのある事項を事実として前提している点で誤導尋問であり、誤導尋問は誘導尋問に含められることから、民事訴訟規則第115条に反する法令違反である。「教養演習を平成23年度に担当できた」というのは事実ではなく、3つの準備書面すべてにおいて教養演習担当希望を私に諮ったが回答がなかったとする被控訴人東洋大学の主張である。ここで裁判官は私の陳述書どころか被控訴人東洋大学の準備書面を踏まえ、そこから質問を引き出している。控訴人の主張は逆に開講方針が控訴人の教養演習開講を妨げることを目的とした不正な文書であるということである。(準備書面4、陳述書)

エ 法令違反4

 開講方針が控訴人の教養演習開講を妨げることを目的とした不正な文書であるということは証拠である陳述書に書かれていることであり、この質問は証拠に現れている内容と矛盾する事項を前提とした質問である点においても誤導尋問である。

オ 法令違反5

 開講方針はその後10年以上にわたってこれに従わない開講例が続出していることから、無効で不正な文書であることが控訴人の提出した証拠によって証明されている。したがって、この質問は開講方針を有効で正当なものであると前提している点において既に出された証拠に矛盾する事項を前提した質問であり法令違反の誤導尋問である。

カ 法令違反6

 この質問は「教養演習を平成23年度に担当できた」という東洋大学の主張を控訴人に立証させようとしている。被控訴人の主張は控訴人本人尋問の主尋問で立証すべき事項ではないので、この質問は民事訴訟規則第114条に反する法令違反である。  この質問は、控訴人本人尋問の主尋問で被控訴人の主張を控訴人に立証させるべく、控訴人に「この開講方針に従ったら、教養演習を平成23年度に担当できた」ということを言わせて、これが控訴人本人尋問の主尋問である以上、被控訴人東洋大学の主張を控訴人の主張として調書に書くことを目的とする非常に悪質なものである。控訴人がこの誘導尋問に「はい」と言ったら、控訴人は控訴人本人尋問の主尋問で、つまり控訴人が東洋大学のパワハラ及び不法行為があったという自分の主張をする場で、パワハラ及び不法行為はなかったという被控訴人東洋大学の主張をすることになりそれが本人調書に書かれることになったのである。

キ 法令違反7

この質問は仮定された事項を前提したものであり、控訴人が直接経験しなかった事実についての陳述を求める質問であり、民事訴訟規則第115条に反する法令違反である。

ク 法令違反8

この質問は、仮定の話で事実に関わらない以上、意見の陳述を求める質問であり、民事訴訟規則第115条に反する法令違反である。

ケ 法令違反9

 仮定の質問に仮に控訴人が「はい」と答えても、それで東洋大学が教養演習を控訴人に担当させないというパワハラと不法行為を犯していないということが全く帰結しないし証明もされないので、この質問は争点に関係のない質問であり、民事訴訟規則第115条に反する法令違反である。また、無効で不正な開講方針に従ったら担当できたかどうかということが、東洋大学によるパワハラ及び不法行為があったかどうかという争点になり得ないことは明白である。教養演習開講問題についての争点をなす控訴人の主張は、控訴人以外の大半の語学教員が10年以上に渡って開講方針を守らずに教養演習を担当しているという事実、東洋大学自ら開講方針の中心の一つであるコマ数につき開講方針と矛盾する行為と言述をしている事実から東洋大学の悪意あるパワハラが帰結するというものである。矛盾する行為というのは、語学授業最低6コマ担当を課する開講方針と異なり2023年度東洋大学は控訴人に4コマしか授業をやらせていないということであり、矛盾する言述というのは、裁判準備書面で東洋大学は開講方針に反して授業担当は5コマでよいと主張していることである。

(6)本件行為4についての質問4

「この開講方針に納得できなかったということなんですけれど、このメールに返信等をするような形でその方針に抗議するとか、とういうことはされなかったんですか」

ア 法令違反1

この質問は控訴人が陳述書の下線部を引いた個所に全く対応しない。したがってこれは大須賀裁判長が主尋問個所につき控訴人を欺き控訴人を不利益に陥らせることによる憲法第76条第3項に違反する違法である。

イ 法令違反2
 この質問は誘導尋問であり、主尋問では誘導尋問は禁じられていることから、民事訴訟規則第115条に反する法令違反となる。

ウ 法令違反3

 この質問は、開講方針に納得しなかったのなら抗議するのが当然だという事柄を事実として前提した質問である。しかるに、控訴人は陳述書で私が仲間外しを被り孤立し味方のいない状態であることを再三強調している。仲間外しされ孤立していれば抗議した場合報復的ハラスメントを被ることは当然あり得、その場合はたとえ納得していなくても抗議できないことは自明である。したがってこの質問は、証拠である陳述書の内容と矛盾する事項を事実として前提した誤導尋問であり、民事訴訟規則第115条に反する法令違反である。

エ 法令違反4

 またこの質問は、抗議できないということを当然の結果として含む仲間外しされた孤立状態を強調する控訴人の主張と矛盾対立するため、争いのある事項を事実として前提したという意味でも誤導尋問であり、民事訴訟規則第115条に反する法令違反となる。

オ 法令違反5

 この質問は、抗議しなかったのだからパワハラ、不法行為、損害はなかったということを結論付け東洋大学有利の調書を作ることを明白に狙っている。このように東洋大学に加担することで、東郷裁判官は公正中立、独立、そして良心に従うことを放棄することによって、憲法第76条第3項に反したことになり、明白な憲法違反を犯したことになる。

(7)本件行為6についての質問

「あなたがこの非常勤講師採用審査の主査となった経緯は、どのような経緯でなられたのですか」「あなたが主査を御担当されたことは間違いないですね」

ア 法令違反1

これらの質問は控訴人が陳述書の下線部を引いた個所に全く対応しない。したがってこれは大須賀裁判長が主尋問個所につき控訴人を欺き控訴人を不利益に陥らせることによる憲法第76条第3項に違反する違法である。

イ 法令違反2

 控訴人が主査を務めたと主張するのは被告東洋大学であるから(第3準備書面)、東郷裁判官はこの質問で被控訴人東洋大学の主張を控訴人に立証させようと試みていることになる。被控訴人の主張は控訴人本人尋問の主尋問で立証すべき事項ではないので、これらの質問は民事訴訟規則第114条に反する法令違反である。

ウ 法令違反3

 控訴人を主査にしたことからパワハラ及び不法行為がなかったことが全く帰結し得ない以上、これらの質問は争点と全く関係がない。争点に関わる控訴人の主張は、控訴人を形式的に主査にしておきながら副査の見解を重視し控訴人の見解は全く無視したということにある。これらの質問は争点に関係のない質問であり、民事訴訟規則第115条に反する法令違反である。

エ 法令違反4

 これらの質問が、控訴人が主査になれたから私へのパワハラはなかったと結論付けようとしていることは明白である。このように東洋大学に加担することで、東郷裁判官は公正中立、独立、そして良心に従うことを放棄することによって、憲法第76条第3項に反したことになり、明白な憲法違反を犯したことになる。

(8)本件行為7についての質問

ア 法令違反1

この質問は控訴人が陳述書の下線部を引いた個所に全く対応しない。したがってこれは大須賀裁判長が主尋問個所につき控訴人を欺き控訴人を不利益に陥らせることによる憲法第76条第3項に違反する違法である。

イ 法令違反2
 

この質問は誘導尋問であり、主尋問では誘導尋問は禁じられていることから、民事訴訟規則第115条に反する法令違反となる。

ウ 法令違反3

 この質問は、控訴人に面接する機会が与えられていたのでパワハラはなかったという被控訴人東洋大学の主張を控訴人に立証させようとしている。被控訴人の主張は控訴人本人尋問の主尋問で立証すべき事項ではないので、この質問は民事訴訟規則第114条に反する法令違反である。

エ 法令違反4

 控訴人に10年に1度だけ面接する機会が与えられていたということから控訴人へのパワハラ及び不法行為がなかったことは全く帰結し得ないので、この質問は争点と全く関係がない。この質問は争点に関係のない質問であり、民事訴訟規則第115条に反する法令違反である。争点に関する私の主張は、10年間にわたって東洋大学で私一人日本人なら誰でもできる留学生日本語試験の採点を強要されたというものである。

オ 法令違反5

 この質問が、控訴人に面接する機会が与えられていたのでパワハラはなかったという被控訴人東洋大学の主張を控訴人に立証させ、東洋大学有利の本人調書を作成することを目的としていることは明らかである。このように東洋大学に加担することで、東郷裁判官は公正中立、独立、そして良心に従うことを放棄することによって、憲法第76条第3項に反したことになり、明白な憲法違反を犯したことになる。

(9)本件行為8についての質問1

「では、最終的に研究計画書が、あなたの作成した原稿から変更されたということはなかったということですか」

ア 法令違反1

この質問は控訴人が陳述書の下線部を引いた個所に全く対応しない。したがってこれは大須賀裁判長が主尋問個所につき控訴人を欺き控訴人を不利益に陥らせることによる憲法第76条第3項に違反する違法である。

イ 法令違反2
 

この質問は誘導尋問であり、主尋問では誘導尋問は禁じられていることから、民事訴訟規則第115条に反する法令違反となる。

ウ 法令違反3

 この質問は、最終的に研究計画書が原稿通りになったのでパワハラはなかったという被控訴人東洋大学の主張を控訴人に立証させようとしている。被控訴人の主張は控訴人本人尋問の主尋問で立証すべき事項ではないので、この質問は民事訴訟規則第114条に反する法令違反である。

エ 法令違反4

 控訴人が注意を促したためにいったん改竄された研究計画書が原稿通りになったことからパワハラ及び不法行為がなかったことは帰結し得ない。したがって、この質問は争点に関係のない質問であり、民事訴訟規則第115条に反する法令違反である。争点に関する控訴人の主張は、何ら専門的見識のない職員が教員の研究計画書に勝手に手を入れるということは業務上必要かつ相当な範囲を超えており、学内で仲間外しされ孤立した控訴人に対してしかなされ得ない悪意あるパワハラであるということである。

オ 法令違反5

 この質問は、最終的に研究計画書が原稿通りになったのでパワハラはなかったということを控訴人に立証させることを目的としている。このように東洋大学に加担することで、東郷裁判官は公正中立、独立、そして良心に従うことを放棄することによって、憲法第76条第3項に反したことになり、明白な憲法違反を犯したことになる。

(10)本件行為8についての質問2

「そのときにこの教務課のかたに何か質問をしたりとか、抗議したりっていうことはされなかったんですか」

ア 法令違反1

この質問は控訴人が陳述書の下線部を引いた個所に全く対応しない。したがってこれは大須賀裁判長が主尋問個所につき控訴人を欺き控訴人を不利益に陥らせることによる憲法第76条第3項に違反する違法である。

イ 法令違反2

 この質問は誘導尋問であり、主尋問では誘導尋問は禁じられていることから、民事訴訟規則第115条に反する法令違反となる。

ウ 法令違反3

 この質問は、改竄されたテクストを見たなら抗議するのが当然だという事柄を事実として前提した質問である。しかるに、控訴人は陳述書で控訴人が仲間外しを被り孤立し味方のいない状態であることを再三強調している。仲間外しされ孤立していれば抗議した場合報復的ハラスメントを被ることは当然あり得ることであり、その場合はたとえ納得していなくても抗議できないことは自明である。したがってこの質問は、証拠である陳述書の内容と矛盾する事項を事実として前提した誤導尋問であり、民事訴訟規則第115条に反する法令違反である。

エ 法令違反4

 この質問は、抗議できないということを当然の結果として含む仲間外しされた孤立状態を強調する控訴人の主張と矛盾対立するため、争いのある事項を事実として前提したという意味でも誤導尋問であり、民事訴訟規則第115条に反する法令違反であることは疑い得ない。

オ 法令違反5

 この質問は、抗議しなかったのだからパワハラ、不法行為、損害はなかったといいことを結論付け東洋大学有利の調書を作ることを狙っている。このように東洋大学に加担することで、東郷裁判官は公正中立、独立、そして良心に従うことを放棄することによって、憲法第76条第3項に反したことになり、明白な憲法違反を犯したことになる。

(11)本件行為9についての質問

「フランス語の予算について、配分を受けるために何か行動をとったことはありましたか」

ア 法令違反1

この質問は控訴人が陳述書の下線部を引いた個所に全く対応しない。したがってこれは大須賀裁判長が主尋問個所につき控訴人を欺き控訴人を不利益に陥らせることによる憲法第76条第3項に違反する違法である。

イ 法令違反2

 この質問は誘導尋問であり、主尋問では誘導尋問は禁じられていることから、民事訴訟規則第115条に反する法令違反となる。

ウ 法令違反3

 この質問は私が予算配分を受けるために行動を取っていないためパワハラはないという被控訴人東洋大学の主張を控訴人に立証させようとしている。被控訴人の主張は控訴人本人尋問の主尋問で立証すべき事項ではないので、この質問は民事訴訟規則第114条に反する法令違反である。

エ 法令違反4

 たとえ私が予算配分を受けるために行動を取っていなかったとしても、そのことからパワハラ及び不法行為がなかったということは帰結し得ない。したがって、この質問は争点に関係のない質問であり、民事訴訟規則第115条に反する法令違反である。争点に関する控訴人の主張は以下の2点に要約される。1.最大200万円にも及ぶフランス語と他言語との予算格差が10年間維持されていることは業務上必要かつ相当な範囲を超えており東洋大学法学部の法学部の悪意なくしては考えられないということ、2.そして控訴人が予算格差をなくすよう要求したにもかかわらず、被控訴人東洋大学は、それに全く対応しなかったのみならず、逆に私から事実上予算を奪った事実があること。

オ 法令違反5

 この質問は控訴人が予算配分を受けるために行動を取っていないためパワハラはないという被控訴人東洋大学の主張を控訴人に立証させようとしている。このように東洋大学に加担することで、東郷裁判官は公正中立、独立、そして良心に従うことを放棄することによって、憲法第76条第3項に反したことになり、明白な憲法違反を犯したことになる。

第4 裁判官が判決で争点を変更した違法行為

1 裁判官による争点変更の事実

 第一審裁判官は、判決文において、争点の一部を変更して記載した。

 令和5年9月28日弁論準備手続終結に当たって、東郷将也裁判官が争点を読み上げた。(第4回弁論準備手続調書)争点は次の通りである。1.東洋大学の教職員によるハラスメントがあったか。2.それが違法な不法行為と評価できるか。3.控訴人の損害について。(甲82)令和5年11月27日第2回口頭弁論冒頭に東郷裁判官は、争点を1.ハラスメント1~9の存在、2.違法性、3.控訴人が被った被害、として提示した。(甲83)しかるに、第一審判決にあっては、以下の通り争点が変更されている。(1)原告に対するパワハラに該当する行為の有無及びそれらが不法行為を構成するか(争点1)、(2)被告の安全配慮義務違反の有無(争点2)、(3)原告の損害(争点3)。

 上記の事実は、弁論終結後の判決作成時点で裁判官が勝手に争点を変更したことを明白に意味している。

2 第一審裁判官による争点変更の違法性

 まず、弁論終結後の判決作成時点で第一審裁判官が勝手に争点を変更すること自体が訴訟手続き上の重大な不正であり、法令違反を構成することは明らかである。なぜなら、判決作成時点で裁判官が勝手に争点を変えるということは、裁判官が判決作成時に、弁論及び証拠集めの全過程とその結果を不当に無視して、当事者間に争いのある事実、つまり権利の発生、障害、消滅といった法律効果の発生に必要な主要事実を恣意的に変更し、自身に都合の良い判決を書くことを意味するからである。かような行為が裁判官の犯し得る最悪の違法行為の一つであることは言を俟たない。

第一審判決にあっては、争点1として東洋大学によるパワハラ(第4回弁論準備手続と第2回口頭弁論の時点では「ハラスメント」とされていた)の有無とされていたところが、判決作成時に「原告に対するパワハラに該当する行為の有無及びそれらが不法行為を構成するか」と裁判官により勝手に変更されたことによって、判決作成以前にはパワハラの有無が独立した争点であったものがそうでなくなるという結果が生じた。それにより、裁判官が、第一審判決において、パワハラの有無自体を検討し審理判断することを回避することが容易になると不当に判断したことが推認される。実際、第一審判決判決文は、東洋大学による控訴人に対するパワハラの有無につき全く審理判断していない。例えば、小括冒頭の次の判示においても、不法行為は言及されているが、パワハラの有無については全く言及されていない。「以上によれば、原告の主張する本件各行為については、いずれも、当該各行為があったと認められないか、行為があったと認められるものについても、不法行為の主張としては主張自体失当である」。パワハラの有無について全く判断せず全く言及もせずに控訴人の請求を排斥するこのような判示は、パワハラの有無が独立した争点をなしていないからこそ可能であって、あるいは可能であると第一審裁判官には思われたのであって、判決作成以前にそうであったように、パワハラの有無が独立した争点をなしていたら、不可能であるか、少なくとも困難であったはずである。したがって、小括冒頭の当該部分におけるようにパワハラの有無には触れず不法行為の有無についてだけ審理判断するということは、裁判官が判決作成時点に至って違法に争点を変更したからこそ容易であり不合理に正当化しやすいものとなったのである。このように判決直前まで争点1が東洋大学の控訴人に対するパワハラ行為の有無であったものを判決作成時点でパワハラ及び不法行為の有無と争点を変えたことによって、第一審判決において、裁判官が、判決においてパワハラの有無につき審理判断せずこれに言及しないことが容易になった。つまり、第一審裁判官は、パワハラの有無について全く判断しないことを不当に正当化するために、判決作成時点に至って争点を勝手に変更したのである。

ここに第一審裁判官による二点の違法行為を指摘することができる。一点目としては、上述したように、判決作成時点に至って争点を勝手に変更する行為自体が違法であるということが挙げられる。二点目としては、裁判官が、上述のごとく、弁論終結時点で明確にパワハラの有無を独立した争点としておきながら、故意に不正行為を犯してまでパワハラの有無を審理判断しないという審理態度が不合理で違法であることが挙げられる。

3 原判決の違法性

上記二点の違法行為から、原判決の違法が帰結する。パワハラの有無が不当な変更後の判決作成時点においてすら争点として明記されていることを考慮すると、争点として明記されている項目につき審理判断しないという審理態度は全く不合理であり、またパワハラの有無についての検討がなされた場合、パワハラ行為があったと結論される可能性が排除されないことから、原判決が判決の結論に影響を及ぼすおそれのある判断遺脱、審理不尽、理由不備の違法を犯していることは明白であり、原判決は破棄を免れない。

第5 小括

大須賀裁判官らが、第一審が本人訴訟であることをいいことに、被控訴人東洋大学に加担し、尋問個所につき控訴人を欺いた行為、違法な控訴人本人尋問主尋問を組織した行為、判決作成時点に至って一方的に争点を変更した行為は、第一審訴訟手続上の法令違反を構成するものである。これら複数の法例違反のみをもってしても原判決が破棄を免れないことは明らかである。

第2章 原判決の違法性

第1 原判決におけるパワハラ判断基準の欠如

1 パワハラ3要件の無視

 原判決は、労働施策総合推進法30条の2第1項及び厚生労働省による「職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた提言取りまとめ」に明記されたパワハラ3要件を全く参照していない。しかし、パワハラ3要件は、原審弁論において本件各行為がパワハラ行為であるか否かを判断するために控訴人及び被控訴人双方が依拠している基準であるので(控訴人準備書面5、被控訴人第3準備書面)、これを全く考慮に入れぬまま本件各行為につき審理判断する原判決は、弁論の全趣旨につき検討し審理判断したとはとても言えず、原判決には自由心証主義違反の違法がある。

 とりわけ、控訴人にあっては、パワハラ3要件及び6類型に基づき、本件各行為のすべて及び「付随的ハラスメント」のすべてがパワハラであることを主張していることを鑑みれば、原判決が、争点をなすパワハラ行為の違法性の判断基準であるパワハラ3要件及び6類型を全く考慮することなく、控訴人の主張を排斥し、請求を棄却することには、判断遺脱、審理不尽、理由不備の違法があると言うべきである。

2 パワハラ判断基準の欠如

 複数のパワハラ裁判判決において、パワハラ3要件を直接援用しないまでも、それに多かれ少なかれ類似する判断基準を採用するか、あるいは、少なくともパワハラについての何らかの判断基準を設定した上で、パワハラの違法性につき審理判断するというのが通例となっている。

 原俊之は、論文「パワーハラスメントの概念と不法行為の成否」において、以下の判例を挙げている。しばしば援用される「ザ・ウィンザー・ホテルズインターナショナル事件」原審判決には次のようにある。「パワーハラスメントを行った者とされた者の人間関係、当該行為の動機・目的、 時間・場所、態様等を総合考慮の上、「企業組織もしくは職務上の指揮命令関係にある上司等が、職務を遂行する過程において、部下に対して、職務上の地位・権限を逸脱・濫用し、社会通念に照らし客観的な見地からみて、通常人が許容し得る範囲を著しく超えるような有形・無形の圧力を加える行為」をしたと評価される場合に限り、被害者の人格権を侵害するものとして民法709条所定の不法行為を構成するものと解するのが相当である」。(東京地判平24・3・9労判1050号68頁)また、「損保ジャパン調査サービス事件」判決には、パワーハラスメントにつき次のようにある。「組織・上司が職務権限を使って、職務とは関係のない事項あるいは職務上であっても適正な範囲を超えて、部下に対し、有形無形に継続的な圧力を加え、受ける側がそれを精神的負担と感じたときに成立するものをいう」。(東京地判平20・10・21労経速2029号11頁)

原判決は、パワハラ3要件を全く考慮に入れないのみならず、上記判例のごとく、パワハラ行為の違法性に関する判断基準を全く設定することなく、恣意的な判断に終始している点においても不当なものであると言わざるを得ない。

3 通常の業務範囲逸脱という判断基準の無視

 上記二つの判例の提出するパワハラ行為に関する3点からなる判断基準は、かなりの程度において共通している。とりわけ判断基準2点目についてはそれぞれ「社会通念に照らし客観的な見地からみて、通常人が許容し得る範囲を著しく超えるような」「職務とは関係のない事項あるいは職務上であっても適正な範囲を超えて」とあるが、これは「業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより」とあるパワハラ3要件の第2の要件と類似するものであって、控訴人が原審弁論において本件各行為すべての違法性を判断するにあたって依拠した基準である。(準備書面5)そもそもこの基準を全く考慮に入れず本件各行為におけるパワハラ及び不法行為の有無につき判断することは全く不合理である上に、この基準とそれに関する控訴人の主張を全く無視して本件各行為につき審理判断する原判決には、判断遺脱、審理不尽、理由不備の違法があると言うほかない。

第2 控訴人によってなされた主張の遺脱

1 遺脱された主張

 原判決(別紙)「パワーハラスメント行為一覧表」本件行為1~9(原告の主張)欄に、誤り及び弁論の全過程ならびに陳述書において控訴人によってなされた主張の遺脱が確認されるので、以下に指摘する。

(1)本件行為1

 原判決の説示は、**のメールを「原告に対する嫌がらせである」としているが、控訴人がそのような主張をした事実はないので、これは誤りである。

 これに加えて、原判決の説示には、判決に影響を及ぼすことが明らかである控訴人によってなされた次の5点の重要な主張の遺脱がある。

ア 遺脱された主張1

 控訴人は、「平成27年度第1回語学委員会書面会議について」に「語学委員会の答申(案)」として、「現況に鑑み、選択者数の多い中国語とドイツ語でそれぞれ契約制講師を採用する」とある事実から、語学委員会で検討する以前に、原告に全く無断で中国語・ドイツ語の契約制講師採用が事実上決定されていることを確認した上で、フランス語履修者数増が全くない時にフランス語教員を採用した事実があることから、履修者数の多寡は中国語及びドイツ語契約制講師採用の正当な理由とはなり得ず、この決定が原告へのハラスメント目的のものであることを主張した。(準備書面5、7頁)

イ 遺脱された主張2

控訴人は、大学全体の収容定員に応じ定める教員数の配分を事実上変更することが大学設置基準第13条に違反する法令違反である事実をまず確認し、法令違反である決定あるいは「裁量」がいかなる合理性をも欠いた「業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」であることが明白であることから、フランス語教員枠の政治学教員枠への転用が「業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」であることを主張した。(準備書面5、4頁~5頁)

ウ 遺脱された主張3

まず被控訴人東洋大学が、2008~9年に一人であったフランス語専任教員を*****を雇うことによって二人にし、***を重んずることによって控訴人を法学部フランス語運営から排除し、次いで2015~6年に二人いたフランス語専任教員を控訴人一人にすることによってフランス語劣遇措置がそのまま控訴人へのハラスメントになるような状況を作り、最後に2022~3年に法学部フランス語非常勤講師を3人増員することによって控訴人から授業を奪ったという事実がある。この過程を通して、法学部フランス語教員の増減はフランス語履修者数の増減と一切相関関係はない。つまり、被控訴人は、ある時は法学部フランス語教員枠二人を尊重しフランス語教員を雇い、ある時はフランス語教員枠を事実上減らしフランス語教員を採用しないようにしており、フランス語教員枠の被控訴人による扱いは全く首尾一貫していない。首尾一貫しているのは、フランス語教員を増やす時も増やさない時も控訴人を貶める悪意(故意あるいは過失)のみである。同様に被控訴人は、フランス語教員枠の政治学教員枠への転用に際してフランス語履修者減を理由とするが、他方でフランス語履修者の増減に関係なくフランス語教員を増やしている。そして、いずれの場合にも控訴人を無視し仲間外しし控訴人の尊厳を傷つける故意過失のみが一貫して確認される。(準備書面5、6頁~7頁、陳述書、6頁~7頁)

エ 遺脱された主張4

フランス語教員枠の政治学教員枠への転用は、控訴人の意見を全く聞くことなく転用を決めた無視と仲間外しによって控訴人に精神的苦痛を与えると同時に、法学部フランス語専任教員だけを控訴人一人にすることによって、既に法学部内で仲間外しに遭っていた控訴人をさらに孤立させ、控訴人の発言力を奪いその立場を弱く不利なものとすると同時に、フランス語劣遇措置を容易にすることによってフランス語劣遇が法学部唯一のフランス語専任教員である控訴人へのハラスメントになることを目的とした悪意によるハラスメントである。(準備書面5、3頁、5頁、陳述書、6頁)

オ 遺脱された主張5

 控訴人は、準備書面5において、パワハラ6類型、パワハラ3要件、「学校法人東洋大学ハラスメントの防止等に関する規程」に定める「パワー・ハラスメント」定義を援用しながら、本件行為1がパワハラであることを主張し(5頁~6頁)、また本件行為1が悪意による不法行為であることを主張している。(7頁)

(2)本件行為2

ア 遺脱された主張1

原稿に問題があれば、その原稿を無視するのでなく作成者に連絡するのが常識であるところ、これを無視する行為は、それが人に原稿を頼む際の常識に反し、合理性を欠いた判断に基づく業務上の必要性がなく業務遂行上の手段として不適当な行為であることから業務上必要かつ相当な範囲を超えたものである。(準備書面5、10頁~11頁)

イ 遺脱された主張2

**学部長らは、原稿作成者の原稿を無視するという他の教職員に対しては絶対にしない通常の業務を逸脱した対応を、人間関係から切り離され孤立した状態にある控訴人に対して、控訴人に連絡する、字数を増やす等、可能ないくつかの選択肢のなかから控訴人を苦しめようという悪意をもって選択した。(準備書面5、10頁、陳述書、7頁)

ウ 遺脱された主張3

控訴人に何らの相談もせず控訴人の原稿を採用しなかったことにより控訴人の授業計画が学生に正確に伝達されないと同時に、控訴人は伝達されたと勘違いして授業することになるため、控訴人の授業についての双方の理解の間に齟齬が生じ、原告の授業運営がスムーズに行かなくなる。したがって、被控訴人の行為は控訴人の授業を妨害することであり、控訴人の就労における不利益を与え、就労環境に悪影響を及ぼすものである。(準備書面5、10頁~11頁)

エ 遺脱された主張4

控訴人の場合は、**教授の画策により徹底的に誹謗中傷され、法学部の中でほぼ人間関係から切り離された、味方のいない状態でいるので、原稿を無視するというような常識に反した失礼な対応も許される存在になっていた。(陳述書、7頁)

オ 遺脱された主張5

控訴人は、準備書面5において、パワハラ6類型、パワハラ3要件、「学校法人東洋大学ハラスメントの防止等に関する規程」に定める「パワー・ハラスメント」定義を援用しながら、本件行為2がパワハラであることを主張し(11頁)、また本件行為2が悪意による不法行為であることを主張している。(10頁)

(3)本件行為3

ア 遺脱された主張1

履修者数の点でフランス語と競合するドイツ語の宣伝だけを法学部HPに載せたことについて、そのような語学宣伝の場があることを法学部が私に教えなかったこと、フランス語とドイツ語間のこの不平等状態が2016年からほぼ5年間続いていた期間法学部の誰も私にそのような場があることを私に教えなかったことは、孤立し味方のいない弱い立場に立たされた私だけになされたことであり、業務上の必要性がなく、それが業務遂行上の手段として不適当な行為であり、しかも不平等状態の続いた期間が社会通念に照らして許容される範囲を超えるものであることから業務上必要かつ相当な範囲を超えたものであり、私に対する悪意なくしては考えられない。(準備書面5、12頁、陳述書、7頁)

イ 遺脱された主張2

**教授が法学部を始め学内に控訴人について誹謗中傷をし、控訴人が孤立し法学部内で徹底した仲間外しに遭っている状況で、しかも**教授の悪意のもと他に複数の悪意あるフランス語劣遇措置がとられている中、このハラスメントだけが悪意ない偶然のものであったとは考えられない。

ウ 遺脱された主張3

控訴人は、準備書面5において、パワハラ6類型、パワハラ3要件、「学校法人東洋大学ハラスメントの防止等に関する規程」に定める「パワー・ハラスメント」定義を援用しながら、本件行為3がパワハラであることを主張し(12頁)、また準備書面2において本件行為3が悪意による不法行為であることを主張している。(6頁)

(4)本件行為4

ア 遺脱された主張1

法学部の大半の語学教員が教養演習を開講している中で控訴人だけが開講していないという異常な事態が10年間以上も誰にも批判もされずに放置され維持されているという状況自体が孤立し味方のいない私以外の教員には起こり得ない、通常の大学業務の範囲を超えるものである。このような状況は、偶然には維持され得ず、完全に排除され一人前の教員扱いしなくてもよいとされた私を通常の業務範囲を逸脱してでも苦しめようとする法学部教職員らの悪意によるものである。(準備書面5、15頁、陳述書、3頁)

イ 遺脱された主張2

2011年の「教養演習開講方針」には、教養演習開講の必要条件として履修者10名以上語学科目6コマ+教養演習1コマ計7コマが定められているが、2011年以後10年以上にもわたって控訴人以外のほぼすべての語学教員らによる数多くの教養演習やセミナーがこの条件を満たさないまま開講されている。このような状況は、**法学部長らが、控訴人以外の語学教員には「教養演習開講方針」に従わなくていいことを伝え、それによって控訴人だけがこれに従うようにし向けたということがなければ起こり得ない。したがって、「教養演習開講方針」が控訴人の教養演習開講を妨げようという悪意によって作成されたものであり、上述の状況は、控訴人を差別し、控訴人だけを不利益に陥れようという悪意によって実現されたものである。(準備書面4、9頁~10頁、陳述書、3頁~4頁)

ウ 遺脱された主張3

被控訴人が第3準備書面で2023年度の控訴人の担当コマ数を4コマにしたことを不当に正当化するために5コマでよいと主張している事実から、被控訴人が控訴人に対して悪意をもってハラスメントを犯すために、控訴人を不利益に貶めたり苦しめたりする限りにおいて、ある時は6コマ必要と主張し、ある時は5コマでよいと主張しているだけであることが帰結する。(準備書面4、8頁、陳述書、4頁)

エ 遺脱された主張4

「教養演習開講方針」を記載した「教養演習開講について」という学部長文書は、語学科目5コマ+教養演習1コマ計6コマで控訴人が担当していた教養演習をつぶすという2007年のハラスメントをそのための口実を明文化して正当化すると同時に、控訴人が二年間担当した教養演習より厳しい条件を原告に課すことによって、2007年以来開講されていなかった教養演習を復活させるにあたって、原告に教養演習を再開講することをあきらめさせ、これを妨げることを目的としたものである。(準備書面4、10頁、控訴人本人調書、18頁)

オ 遺脱された主張5

控訴人は、準備書面5において、パワハラ6類型、パワハラ3要件、「学校法人東洋大学ハラスメントの防止等に関する規程」に定める「パワー・ハラスメント」定義を援用しながら、本件行為4がパワハラであることを主張し(15頁)、また本件行為4が悪意による不法行為であることを主張している。(16頁)

(5)本件行為5

ア 遺脱された主張1

法学部のほとんどすべての専任教員が「長」のつく何らかの役職を経験している中、控訴人にだけ20年以上も何らの役職にもつかせないということは、通常の大学業務の範囲内では起こり得ないものであり、控訴人のみに対するそのような劣遇に何ら業務上の必要性がなく、それが業務遂行上の手段として不適当な行為であり、しかも当該行為の継続期間が社会通念に照らして許容される範囲を超えるものであることから業務上必要かつ相当な範囲を超えたものである。(準備書面5、17頁、陳述書、9頁)

イ 遺脱された主張2

 ほとんどの法学部教員が何らかの役職を与えられるなか原告にのみ20年以上の間何らの役職をも与えなかった行為は、これを偶然のものであると考えることはできず、被控訴人の悪意によるものと考えるほかはない。(準備書面5、17頁~18頁、陳述書、9頁)

ウ 遺脱された主張3

長年の間役職を与えないことは、控訴人に対して何らの正当な根拠もなく役職に値しないという評価を与え、控訴人を不当に貶めることであり、その低評価を法学部の他の構成員に知らせることでもある。これにより、控訴人は精神的苦痛を感じ、法学部内での評価と立場が悪くなるのであるから、控訴人の就業環境が悪化することは明白である。(準備書面5、16頁)

エ 遺脱された主張4

徹底した誹謗中傷と仲間外しの結果、**教授やその支配下にある歴代学部長を中心とする法学部教職員たちの間に控訴人が役職に就くに値しない人間であるという共通認識が出来上がっており、それを前提にして法学部が悪意をもって控訴人を何らの役職にもつかせないようにした。(陳述書、9頁)

オ 遺脱された主張5

控訴人は、準備書面5において、パワハラ6類型、パワハラ3要件、「学校法人東洋大学ハラスメントの防止等に関する規程」に定める「パワー・ハラスメント」定義を援用しながら、本件行為5がパワハラであることを主張し(16頁)、また本件行為5が悪意による不法行為であることを主張している。(17頁~18頁)

(6)本件行為6

ア 遺脱された主張1

非常勤講師採用審査にあたって、控訴人を主査にしたのであれば、主査に主要役割を副査に副次的役割を負わせ、副査の見解を審査結果報告書に反映させ掲載したのであれば、主査についてはより多く反映・掲載するのが通常の大学業務で行われることである。したがって、主査である控訴人の所見を副査のそれより下位に置いたり、審査結果報告書に全く掲載もせず反映もさせないことには、何ら業務上の必要性はなく、それが業務遂行上の手段として不適当な行為であることから、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものである。(準備書面5、24頁、陳述書、8頁)

イ 遺脱された主張2

****学部長らは、副査の見解は踏まえながら主査である控訴人の見解は審査結果報告書に全く反映させないという控訴人以外の他の教員には決してなされない通常の業務を逸脱したことをした。これは、徹底した仲間外しによって法学部内にあるいは大学全体に孤立し味方のいない控訴人にだけは何をやっても大丈夫という共通の了解が出来上がっており、その共通の了解を前提として通常の業務範囲を超えてでも私の精神を傷つけるようとしてなされたことであり、明白に悪意によるものである。(準備書面5、23頁、陳述書、8頁)

ウ 遺脱された主張3

控訴人は、準備書面5において、パワハラ6類型、パワハラ3要件、「学校法人東洋大学ハラスメントの防止等に関する規程」に定める「パワー・ハラスメント」定義を援用しながら、本件行為6がパワハラであることを主張し(23頁~24頁)、また本件行為6が悪意による不法行為であることを主張している。(23頁)

(7)本件行為7

ア 遺脱された主張1

ほぼ10年連続で留学生日本語試験採点の仕事を東洋大学で控訴人のみに強要することに何ら業務上の必要性がなく、それが業務遂行上の手段として不適当な行為であり、10年連続という期間が社会通念に照らして許容される範囲を超えるものであることから、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものである。

イ 遺脱された主張2

東洋大学でただ一人控訴人のみに、ほぼ10年連続で他の入試業務をほとんどさせず日本人であれば誰でもできる留学生日本語試験採点を強要する行為は、偶然にはなされ得ず、控訴人への悪意によるものであると考えるほかはない。

ウ 遺脱された主張3

2007年から少なくとも2014年まで(あるいは2015年まで)の8年間(あるいは9年間)にわたって、被控訴人東洋大学法学部は、教授会資料に載る10月・11月推薦入試出向教員一覧の一番上に他から切り離した形でしかも他の教員の氏名より大きな活字で控訴人の氏名を印刷した。ちなみに控訴人の氏名は一覧表などに載る時はいつも一番下や最後に書かれるので、一番上に書かれたのはこの時だけである。

 留学生日本語試験採点の日は法学部での試験監督出向は控訴人だけであり、被控訴人東洋大学法学部がこれを10年間にわたってさせたのは明らかに法学部内での控訴人の人間関係からの切り離しを狙ったものである。そして、控訴人が法学部内で人間関係から隔離され仲間外しされていることを新任教員も含めた法学部教員たちに象徴的に示すために、そして控訴人に対しても自身が仲間外しされていることをはっきり示し、これによって控訴人に精神的苦痛を与え原告の精神をさいなむために、教授会資料に挿入される、出向日ごとに入試業務担当教員を分類・区分した10月・11月推薦入試出向教員一覧表において、例えば10月19日であれば、一番上に置かれた10月19日の欄に一人だけ書かれた控訴人の氏名をことさら大きな活字で印刷し、その下の別の日にち欄に印刷された多数の法学部教員の氏名との対照を際立たせることによって、一覧表の上でも控訴人が隔離され差別されているということを示したのである。

エ 遺脱された主張4

控訴人は、準備書面5において、パワハラ6類型、パワハラ3要件、「学校法人東洋大学ハラスメントの防止等に関する規程」に定める「パワー・ハラスメント」定義を援用しながら、本件行為7がパワハラであることを主張し(25頁~26頁)、また本件行為7が悪意による不法行為であることを主張している。(27頁)

(8)本件行為8

ア 遺脱された主張1

被控訴人法学部教務課職員が、控訴人に何ら相談もなく控訴人の原稿を修正した行為、及び、目の前にいる控訴人にわざわざ朱の入った原稿を見えるようにしておきながら、控訴人に全く相談することなく控訴人の原稿の修正点についての検討を続行しようとした行為は、いずれも控訴人も交えて検討するのが常識であり、大学業務において通常のことであることから、社会通念からして極めて異常であり、原告を無視して原告の研究計画書に手を入れ、それについての検討を原告を交えずにすることに何ら業務上の必要性がなく、それが業務遂行上の手段として不適当な行為であることから業務上必要かつ相当な範囲を超えたものである。(準備書面5、27頁~28頁、陳述書、8頁)

イ 遺脱された主張2

被控訴人法学部教務課職員が、控訴人に何ら相談もなく控訴人の原稿を修正した行為及び目の前にいる控訴人に全く相談することなく控訴人の原稿の修正点についての検討を続行しようとした行為のいずれにおいても、控訴人に相談するというごく自然な選択肢を被控訴人法学部教務課職員が敢えて採らなかったという事実に控訴人を仲間外ししようという悪意が認められる。同時に、控訴人を仲間外しすることが法学部内で常態化していたことも確認される。(準備書面5、27頁、陳述書、8頁)

ウ 遺脱された主張3

教員の専門的学問につき何らの見識をも有さない大学職員が教員の研究計画書に教員に無断で朱を入れた上、それにつき当該教員の意見を聞くことなしに検討を続けるなどということが起こったということは、控訴人に対する徹底した組織的な誹謗中傷と仲間外しの結果、大学職員の職分を超えしたがって通常の大学業務の範囲を逸脱したそのような非常識な行為が味方のいない控訴人に対してだけは許されるという共通認識が醸成されており、末端の教務課職員までがその共通認識を前提として自らの職分を超え通常の業務範囲を逸脱してでも控訴人の人格を傷つけようという悪意をもってハラスメント行為に及んだことを意味する。(陳述書、8頁、控訴人本人調書、23頁)

エ 遺脱された主張4

法学部教務課では、**と****が対応した。****の態度は控訴人に対し極めて敵対的かつ傲慢なもので、通常であれば「~して頂けますか?」というところを「~してもらえますか?」と言い放つという、若い職員の年配の教授に対する態度としては普通は考えられぬものである。このような態度は、被控訴人及び東洋大学法学部が常日頃から控訴人を一方的に自分らより下位に位置づけ、控訴人をさげすんでいることの証左である。打ち合わせの最後に当時の法学部教務課長である****が挨拶に来た。その際、**は変ににやにやしながら、控訴人をまじまじと見つめるという控訴人を小馬鹿にした態度を取った。法学部教務課の控訴人に敵対的な雰囲気は、当の改竄が悪意あるハラスメントであることを証すものである。(準備書面4,12頁)

オ 遺脱された主張5

控訴人は、準備書面5において、パワハラ6類型、パワハラ3要件、「学校法人東洋大学ハラスメントの防止等に関する規程」に定める「パワー・ハラスメント」定義を援用しながら、本件行為8がパワハラであることを主張し(28頁)、また本件行為8が悪意による不法行為であることを主張している。(27頁)

(9)本件行為9

ア 遺脱された主張1

フランス語予算と他言語予算との間に数10万から100万、200万に至る莫大な格差が10年間も維持されている場合、通常の大学業務の範囲内であれば、10年間の間にこの極端な不平等状態を是正しようという試みが法学部の方からなされているはずである。そのような試みが全くなされないままこれだけ大きな予算格差が10年間も維持された事実は、通常の大学業務の範囲を超えたものであり、10年以上もの間フランス語のみに予算をつけず、フランス語と他言語との間の予算格差を維持することに何ら業務上の必要性がなく、それが業務遂行上の手段として不適当な行為であり、10年以上という期間が社会通念に照らして許容される範囲を超えるものであることから、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものである。(準備書面5、29頁~30頁、陳述書、5頁)

イ 遺脱された主張2

被控訴人は、10年以上も続く予算格差を是正する試みを全くせず、そればかりか、海外研修に専任教員の付き添いを急遽義務付けてフランス語海外研修実現を困難にしたり、予算格差を是正するためにフランス語予算を増やして欲しいという控訴人の度重なる訴えを拒否あるいは無視し、「2022年度法学部予算執行要領」によって教材費によるDVD購入を禁じるなど、悪意をもって予算格差を維持あるいは拡大することを図った。したがって、明らかにハラスメントが存在する。(準備書面5、29頁、陳述書、5頁)

ウ 遺脱された主張3

10年以上も事実上フランス語予算ゼロが続いている時に、被控訴人が控訴人に計画の立案や予算要求書の提出を経て海外研修予算をつけることが可能であることを控訴人に全く教えることもせず、立案や予算要求書提出を勧めることもしなかったのは極めて異常であり、控訴人に対する悪意あるハラスメントがあり、差別待遇、劣後措置があると言うほかはない。(準備書面4、13頁)

エ 遺脱された主張4

これだけ大きな予算格差が10年間も維持された事実は、**教授らによる徹底した誹謗中傷と仲間外しにより、人間関係から切り離され味方がいないために何をしてもよい存在であるという共通の了解が形作られた控訴人をこの了解に基づいて通常の業務範囲を逸脱してでも貶め、不利益に陥らせようとする悪意なくしては考えられない。(陳述書、5頁)

オ 遺脱された主張5

控訴人は、準備書面5において、パワハラ6類型、パワハラ3要件、「学校法人東洋大学ハラスメントの防止等に関する規程」に定める「パワー・ハラスメント」定義を援用しながら、本件行為9がパワハラであることを主張し(29頁~30頁)、また本件行為9が悪意による不法行為であることを主張している。(29頁)

(10)「付随的ハラスメント」に関わる控訴人のすべての主張

 原判決は、原審弁論過程において控訴人によって「組織的ハラスメントの背景事情として」(「第3回弁論手続調書」)主張され(準備書面5、30頁~49頁)、陳述書においても主張された(陳述書、9頁~12頁)「付随的ハラスメント」につき、全く審理判断しておらず、原判決は、控訴人準備書面5及び陳述書において提出された「付随的ハラスメント」に関わる控訴人のすべての主張を遺脱している。

(11)パワハラの長期にわたる継続性と大規模な組織性に関わる控訴人のすべての主張

 原判決は、控訴人によって訴状(3頁、16~17頁)、陳述書、控訴人本人調書(とりわけ12~13頁)において主張された、被控訴人東洋大学によるパワハラの長期にわたる継続性と大規模な組織性に関わる控訴人のすべての主張につき全く審理判断せず、これを遺脱している。

2 主張の遺脱の違法性

(1)本件行為1~9に関する主張の遺脱の違法性

判決の結論に影響を及ぼすおそれのある控訴人の上記1(1)~(9)に明示された主張につき全く審理判断せずなされた原判決には、判断遺脱、審理不尽、理由不備の違法があると言わざるを得ない。

(2)「付随的ハラスメント」に関する主張の遺脱の違法性

原判決は、「小括」において次のように判示する。「原告は、本件各行為のほかにも、法学部においては、原告に対するさまざまな嫌がらせ(ハラスメント)が行われており、これらの行為及び本件各行為は、原告にハラスメントを行う法学部を大学全体が支援する形で行われている旨主張し、陳述書(甲80)において、本件各行為は個々の例を個別に見ると、独立した個人が勝手にやっているように見えるが、実はそうではなく、被告のありとあらゆる部署の構成員が一致団結して、まるでそれが組織の目的であるかのように原告を排除迫害しようとしている旨を述べる。しかしながら、本件全証拠を検討しても原告の上記陳述を裏付ける証拠は見当たらないし、本件各行為を総体としてみても、原告に対する何らかの権利侵害を観念することは無理である」。

判決に影響を及ぼす控訴人の「付随的ハラスメント」に関する主張につき全く審理判断せずなされた上記判示は、虚言とも言える極めて不正なものであり、原判決は、判断遺脱、審理不尽、理由不備の違法を犯していると言わざるを得ない。

(3)

パワハラの長期にわたる継続性と大規模な組織性に関わる主張の遺脱の違法性

 被控訴人東洋大学による控訴人へのパワハラは、本件行為1~9に限定されるものではなく、時期的には、平成14年に始まり、平成20年に激化したものであり、規模の観点からすると、法学部のみならず東洋大学全学の関わるものである。判決の結論に影響を及ぼすおそれのある控訴人の上記主張につき全く審理判断せずなされた原判決には、判断遺脱、審理不尽、理由不備の違法があると言わざるを得ない。

第3 認定事実の遺脱

1 前提事実の誤り及び遺脱

(1)「ハラスメントの防止に関する定め」に関する事実の遺脱

ア パワハラ3要件及び6類型の遺脱

 原判決は、「ハラスメントの防止に関する定め等」として「学校法人東洋大学ハラスメントの防止等に関する規程」は挙げられているが、労働施策総合推進法30条の2第1項及び厚生労働省による「職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた提言取りまとめ」に明記されたパワハラ3要件、厚生労働省「職場の「いじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ報告」に明記された6類型が前提事実として摘示されていない。「学校法人東洋大学ハラスメントの防止等に関する規程」には、パワハラ3要件に明記されている如く、また前記第2章第1、2に明示された参照判例にあるように、「業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」という項目がなく、甚だ不完全なものであり、これのみを前提事実とするのでは、適正な事実認定や法令の解釈適用が困難になると言わざるを得ない。

イ 「学校法人東洋大学ハラスメントの防止等に関する規程」第18条7項の遺脱

 原判決原判決第2、2、(3)エ(エ)は、「学校法人東洋大学ハラスメントの防止等に関する規程」第18条7項を遺脱している。当該条項は、調査・苦情処理委員会の独立と公正を定めたものであるため(「調査・苦情処理委員会の活動は、独立が保障され公正、適正かつ迅速に行わなければならない」(甲84)、後述の通り、被控訴人が令和3年4月に当時法学部長であった****をハラスメント防止対策委員とし、しかも同年9月に被控訴人側の弁護士****が調査・苦情処理委員会がハラスメント防止対策委員から独立していないことを明言したことにつき検討し正当に審理判断するために、当該条項を前提事実とすることが不可欠である。

(2)「本件訴訟に至る経緯」に関する事実の遺脱

原判決第2、2,(4)「本件訴訟に至る経緯」には、判決の結果に影響を及ぼす以下の3点の事実の遺脱がある。

ア 遺脱された事実1

令和3年4月の人事異動で、控訴人にハラスメントを繰り返している加害者である当時法学部長の****教授がハラスメント防止委員となる。(甲85、甲86、甲87の1、2)

イ 遺脱された事実2

令和3年9月のハラスメント調査・苦情処理委員会第一回事情聴取で、****弁護士が、「学校法人東洋大学ハラスメントの防止等に関する規定」第18条第7項によれば独立が保証されなくてはならないはずのハラスメント調査・苦情処理委員会が当時法学部長であった****が委員となっているハラスメント防止委員会に「紐付け」であることを明かす。(甲88)

ウ 遺脱された事実3

令和3年10月、****が ハラスメント調査苦情処理委員会に関わっている状態でハラスメント調査苦情処理委員会の公正な運営が不可能であることは明らかであるという理由により、控訴人が、これ以上ヒアリングの日程は決めないでけっこうであると**人事部長に告げる。(甲89の1,2)

(3)控訴人の経歴の遺脱

 控訴人は、難関のフランス政府給費試験に合格し、パリ大学で博士号を取り、詩人としても現代詩手帖賞と歴程賞を受賞し、三田文学編集長をも務めたという顕著な経歴を有している。本件行為1~9のすべてが控訴人のフランス文学者及びフランス語教員としての名誉を傷つける行為と目されることを鑑みるに、控訴人の顕著な経歴とそれを得るための長年の努力や研鑽の存在を前提としてこそ、本件行為1~9が、控訴人の経歴やそれを得るための長年の努力や研鑽を役に立たない無駄なものであるかの如くになすことによって、控訴人に屈辱感を感じさせ精神的苦痛を与えるという不当な動機によるものであることを推認することが可能になることから、控訴人の顕著な経歴を前提事実とせずに、本件行為1~9の不法行為性につき適正な事実認定や法令の解釈適用が行われ得ないことは明白である。(訴状)

 被控訴人は、第1準備書面で控訴人の経歴につき不知とするが、控訴人は証拠を提出しており、控訴人の経歴は争いのある事実ではあり得ない。(甲32~40)

(4)控訴人のくも膜下出血既往症の遺脱

 訴状に記載された控訴人のくも膜下出血の既往症を原判決は前提事実として取り上げていないが、当該事実は、控訴人が弁論において「付随的ハラスメント」のうちの「不要な診断書を要求したハラスメント(2022年)」として主張したハラスメント(準備書面5)につき判断するために検討する必要がある。(訴状)現に、原判決は、これにつき審理判断していないために、本件行為1~9の組織的性格について全く不当な結論を出している(原判決「小括」)。

 被控訴人は第1準備書面で控訴人の病気につき不知とするが、控訴人は診断書等を提出しており控訴人の病気は争いのある事実ではあり得ない。(甲44~48)

2 本件行為1~9及びパワハラの長期にわたる継続性と大規模な組織性に関する認定事実の誤りと遺脱

(1)本件行為1

ア 認定事実の誤り1

(ア)原判決は次のように説示する。「同メールには、同年9月22日に実施された第5回教授会において、再来年度の教員採用につき1名の専任枠で契約制2名の語学関係の教員を採用することが決まったことから」(8頁)。

(イ)控訴人は、弁論の過程において、被控訴人法学部の教員の言うことが人によって異なるため教授会決定の事実が見いだせないと主張し、教授会決定がないまま、後から原告が欠席した日を選んでその日を教授会決定の日とした可能性は排除されないと主張している。(準備書面4、3頁)(甲8)

(ウ)控訴人が弁論の全過程において指摘するように、被控訴人の主張にある看過し難い複数の虚言が存することを鑑みるに、加えて、新たに署名押印して偽の議事録を作成することが容易であることをも考慮するに、乙第7号証にある議事録につき原判決が判示するごとく(9頁~10頁)書名押印の痕跡があることのみによって信頼に値するものとする判断には無理があり、原判決が、被控訴人の不誠実な陳述態度を適切に認定判断しているとは言い難く、言論の全趣旨を斟酌しているとは言えないことから、原判決には自由心証主義違反の違法があると言うほかはない。また、乙第7号証の提出には、時機に後れた攻撃防御方法に該当する疑いのあることも否定できない。

(エ)上記(イ)(ウ)から、(ア)に提示した原判決の説示における事実認定には、採証法則違反ないし経験則違反の違法がある。したがって、当該事項を認定事実とすべきでないことは疑い得ない。

イ 認定事実の誤り2

(ア)原判決は、次のように事実摘示する。「原告は、***教員が退職した平27年当時から、教授会を欠席することがあった。」(9頁)

(イ)平成27年当時、控訴人はやむ得ない事情のある時のみに法学部教授会を欠席していたのみであり、欠席回数が少なかったという事実から(控訴人本人)、また、教授会に欠席することがあるという現象は法学部教員の誰にでも起こり得るものであることは社会通念上相当なものであることから、原判決が(ア)に提示された事項を認定事実として説示することには何ら正当な理由はないと言うべきであり、当該説示には、採証法則に反する違法がある。

ウ 認定事実の誤り3

(ア)原判決は、次のように事実摘示する。「原告は、本件訴訟を提起した後1年以上、教授会に出席しておらず、欠席にあたって委任状も提出しなかった。」(9頁)

(イ)当該事項は、本件行為1に関して、本来何ら判決の結果に影響を及ぼすべきものではないので、原判決がこれを認定事実として事実適示したことには、採証法則に反する違法がある。

エ 大学設置基準第13条に関する事実の遺脱

(ア)遺脱された事実1

 被控訴人東洋大学法学部が***フランス語教員枠を政治学教員枠に転用したという事実は、言い換えると、大学設置基準第13条に定める別表第二枠で事実上別表第一枠の専任教員を雇ったということである。

(イ)遺脱された事実2

大学設置基準第13条に定める別表第二枠と別表第一枠それぞれに属する教員数の配分を変えることは法令違反である。 

(ウ)遺脱された事実3

転用された政治学教員枠で2017年度に採用された政治学専門教員****は、2017年度以来現在に至るまで、大学全体の学生向けの基盤教育科目である政治学を担当すると同時に、法学部企業法学科の専門科目である政治学原論をも担当している。しかも、2023年度からはこれに加えて専門演習をも担当している。この事実は、**が、形式上は大学全体の教養教育のための別表第二枠として位置づけられながらも、事実上は法学部向け専門教員である別表第一枠として機能していることを意味している。(甲61)

オ 2009年の*****就任に関する事実の遺脱

(ア)遺脱された事実1

控訴人が法学部専任教員となった2000年から2008年まで法学部フランス語専任教員は控訴人一人であった。2009年に控訴人に加え*****もフランス語専任教員となった。その採用審査への控訴人の参加は一切許されなかった。***を採用した理由は、法学部にフランス語教員枠が二つあるからというものであり、学生数の目立った増加は一切なかった。

(イ)遺脱された事実2

フランス語履修者増のない状況で***を採用したため、二人のフランス語専任教員の担当コマ数が法学部のみでは少なくなってしまったので、2009年と10年の二年間は、二人のフランス語専任教員各自につき社会学部の授業を1コマ担当し、合計で各自6コマとしていた。2011年には、****氏が社会学部フランス語専任教員に就任したため、控訴人と***が社会学部のフランス語授業を担当しなくなり、一時的に各自5コマ担当となった。控訴人の授業が2011年に5コマとなった事実は、法学部フランス語専任教員の採用が、履修者数の増減とは関係ないという事実の証拠として機能する。(被控訴人第3準備書面、5頁、控訴人準備書面5、14頁)

(ウ)遺脱された事実3

***就任直後の2009年4月の語学会議で、各語学の「核となる人物」というものが法学部によって一方的に定められ***が任命された。また各語学の代表者が参加するカリキュラム会議にも何らの議論もないままカリキュラム委員に任命された***が参加することとされた。基本的に3,4年生向けの一番レベルが高いフランス語Ⅲの授業も何らの議論もないまま***が担当することになった。

カ 2002年以降の法学部フランス語教員採用に関する事実の遺脱

(ア)遺脱された事実1

2022年度春学期のフランス語履修者数130名であり、ドイツ語履修者数117名を上回っているにもかかわらず、ドイツ語や中国語と同様にフランス語契約制外人講師を採用する議論は全くなかった。(甲60)

(イ)遺脱された事実2

被控訴人東洋大学法学部は、2023年度の法学部フランス語履修者数は例年と変わらないにもかかわらず新たにフランス語担当非常勤講師3名を採用した。これにより、控訴人の2023年度の担当授業コマ数は4コマに減らされた。(甲64の1~5)

(2)本件行為2

ア 認定事実の誤り1

(ア)原判決は次のように事実適示する。「実際に作成された「語学選択のしおり」に使用された従来版のフランス語の紹介部分は、原告が以前に作成し、採用されたものであり、原告の写真やエッフェル塔のイラストが記載されたものであった(乙5、原告本人)」。

(イ)「従来版のフランス語の紹介部分」は「原告の写真やエッフェル塔のイラストが記載されたもの」では全くない。原判決で「従来版」とされたものは平成29年度に使用されたものであり、「原告の写真やエッフェル塔のイラストが記載されたもの」は令和4年度に使用されたものである。上記認定事実は、5年の隔たりを置いて生起した二件の事実を一つの事実となすという極めて不合理な過ちを犯しており、「原告の写真やエッフェル塔のイラストが記載された」原稿を被控訴人東洋大学法学部が本件行為2発生以前に採用したと不当にすることにより、東洋大学法学部が本件行為2の発生した平成30年の時点で控訴人の破格と言ってよい原稿を受け入れる態勢をもっていたという事実を捏造し、この事実捏造によって東洋大学に加担し、控訴人の主張を排斥することを不当に目的としているものであると言わざるを得ない。また、「原告本人」という記述があるが、本人調書には、控訴人が上記認定事実を認めた事実は記載されておらず、当該記述は虚言であると言うほかはない。(甲90)

(ウ)上記理由により、原審の審理態度は極めて不合理かつ不正なものであり、原判決の当該事実摘示は、公正中立を損ない、国民の裁判官及び裁判所への信頼を著しく損傷するものであり、憲法違反であり、裁判所法第49条に違反する違法行為である。

イ 認定事実の誤り2

(ア)原判決は、**のメールを長々と引用する。(11頁~12頁)

(イ)原判決11頁「その上で、今年度の説明文についてですが、」から12頁の「どうぞよろしくお願いします」までの引用は、争点とも関係なく、判決に影響を与えるべき重要事実とは言えず、当該事実摘示には、採証法則に反する違法がある。

(3)本件行為3

ア 遺脱された事実1

 法学部ウェブサイトに語学宣伝の場があることが、教授会や語学会議等で周知されることもなかったし、それを法学部教職員が控訴人に個人的に教えることもなかった。

イ 遺脱された事実2

フランス語とドイツ語間の不平等状態が平成28年からほぼ5年間続いていた期間、法学部ウェブサイトにおける語学宣伝の場の存在につき、教授会や語学会議等で周知されることも、法学部教職員が控訴人に個人的に知らせることもなかった。

ウ 遺脱された事実3

 控訴人は、東洋大学法学部においてずっと何年も仲間外しされ、いじめられているので、法学部教職員に何らかの抗議をすると、仕返しされてかえって面倒なことになるので、抗議等しないようにしていた。したがって、本件行為3についても、当該行為を知ってからも抗議や提案等をしなかった。(控訴人本人調書、17頁)

(4)本件行為4

ア 遺脱された事実1

法学部の大半の語学教員が教養演習を開講している中で控訴人だけが開講していないという異常な事態が10年間以上の間、法学部教授会にあっても、あるいは他のあらゆる場にあって、法学部の誰にも批判もされずに放置され、維持されている。

イ 遺脱された事実2

(ア)2011年の「教養演習開講方針」には、教養演習開講の必要条件として履修者10名以上語学科目6コマ+教養演習1コマ計7コマが定められているが、2011年以後10年以上にもわたって控訴人以外のほぼすべての語学教員らによる数多くの教養演習やセミナーがこの条件を満たさないまま開講されている。(甲28、甲91の1~19、甲92)

(表2)教養演習開講方針に違反した、教養演習及びセミナー等含め合計6コマでの開講

担当コマ数は全て週あたり。なお、「セミナー」は選択演習科目である。

コマ数

担当語学・

教員名

年度

語学科目

講義科目

教養演習

セミナー

セミナー 兼

教養演習

参加者0海外研修

合計

英語

**

2018

 4

 1

 1

6

2021

 4

 1

1

6

2022

 4

 1

1

6

英語

****

2018

3

2

6

2021

3

2

6

2022

3

1

2

6

英語

****

2018

4

1

1

(実質0)

実質6

2020

4

1

1

(実質0)

実質6

2021

3

1

5

2022

4

1

6

中国語

**

2021

 5

6

(イ)控訴人準備書面2、第2、4(2)⑦(9頁)の主張を以下に補足する。

2018年度、2020年度、2021年度、2022年度の4年分の法学部各教員の担当科目一覧を見てみると履修者10名未満の演習科目が多数あることがわかる。

 2018年度については、教養演習・セミナーは、英語教員**のセミナーが2名、ドイツ語教員****の教養演習が3名、専門演習は、**5名、**9名、***8名となっている。2020年度については、****の担当する2つのセミナー兼教養演習が7名と8名、ドイツ語教員****の教養演習が0名、****の教養演習が0名、***の教養演習が0名、専門演習は、**7名、**6名、**2名、**4名、****7名、**3名、***4名、**3名、**0名となっている。2021年度については、中国語教員**の教養演習が1名、****の担当する2つのセミナー兼教養演習のうち一つが6名(もう一つは13名)、****の教養演習0名、**のセミナーが3名、専門演習は、****9名、**2名、**2名、**3名、**6名、***、**0名、**5名、**6名となっている。2022年度については、****の2つのセミナー兼教養演習が7名と8名、****のセミナーが2名、****の教養演習が0名、**のセミナーが1名、専門演習は、**2名、**1名、**6名、**3名、**9名、***6名、**8名となっている。

 被控訴人は第1準備書面7頁において「2006年については、現時点において記録上明らかではない」と書いているので、2007年度控訴人の教養演習が1年だけ履修者10名未満であっただけでも、履修者10名未満であるために翌年以降控訴人の教養演習が開講されなくなったことは正当であるとの見解を取っていることになる。しかし、2018年度、2020年度、2021年度、2022年度の4年分の法学部各教員の担当科目一覧からすると、2020年度中国語教員**の教養演習が1名であった翌年2021年度に**の教養演習が開講されていないことを除いて、教養演習、専門演習を含めたほぼすべての10名未満の演習科目が翌年以降も開講されている。

 とりわけ、****の教養演習は、2018年度3名、2020年度0名、2021年度0名、2022年度0名となっているにもかかわらず、2023年度も開講予定である。また、****の担当する2つのセミナー兼教養演習に関しては、2020年度7名と8名、2021年度6名と13名、2022年度7名と8名となっており、2021年度の13名を除くとすべて10名未満であるのに3年間存続して来た。**のセミナーは、2018年度2名、2021年度3名、2022年度1名となっている。

 専門演習に関しては、**の専門演習が2018年度5名、2020年度2名、2021年度3名、2022年度6名となっている。**の専門演習は2018年度9名、2020年度0名、2021年度5名となっている。***専門演習は、2018年度8名、2020年度4名、2021年度4名、2022年度6名であるにもかかわらず、2023年度も開講予定である。**の専門演習は、2020年度3名、2021年度2名、2022年度1名であるにもかかわらず、2023年度も開講予定である。**の専門演習は、2020年度4名、2021年度5名、2022年度8名であるにもかかわらず、2023年度も開講予定である。(甲28,甲91の1~19、甲92)

(表3)教養演習開講方針に違反しての履修者10名未満の演習科目

語学教員・教養教員・専門教員の区別

語学教員の担当語学及び教養・専門教員の担当科目

教員名

担当演習科目名

年度

2018

2020

2021

2022

数字は履修者10名未満の年の受講者人数。空白セルは開講

語学教員

英語

**

セミナー

 2

 3

 1

****

セミナー

 2

****

セミナー兼

教養演習

 7

 6

 7

セミナー兼

教養演習

 8

 8

ドイツ語

****

教養演習

 0

****

教養演習

 3

 0

 0

 0

中国語

**

教養演習

 1

教養教員

地理学

***

教養演習

 0

専門科目教員

専門科目

**

専門演習

 5

 2

 3

 6

**

 9

 0

 0

***

 8

 4

 4

 6

**

 7

 2

**

 6

 6

**

 4

 5

 8

****

 7

 9

**

 3

 2

**

 3

 2

 1

**

 6

**

 3

**

 9

ウ 遺脱された事実3

被控訴人は、2023年度の控訴人の担当授業コマ数を、学内規則に違反して4コマとした。(甲65)

エ 遺脱された事実4

被控訴人は、原審の弁論において、2023年度の控訴人の担当コマ数を4コマにしたことを不当に正当化するために5コマでよいと主張している。(被控訴人第3準備書面)

オ 遺脱された事実5

控訴人は、東洋大学法学部からの報復的ハラスメントを恐れたという理由により、「教養演習開講方針」に抗議しなかった。(控訴人本人調書、5頁、19頁)

(5)本件行為5における遺脱された事実

被控訴人東洋大学法学部は、法学部のほとんどすべての専任教員が「長」のつく何らかの役職を経験している中、何らの説明も釈明もないまま、控訴人にだけ20年以上も「長」のつくいかなる役職をも与えていない。

(6)本件行為6における遺脱された事実

主査であり法学部教授である原告が副査である***文学部教授の担当した「教育業績評価」、「研究業績評価」を担当し、逆に副査である***教授が「主要業績の査読結果」を担当するのが本来あるべき役割配分であったところ、被控訴人東洋大学法学部は、事実上の役割配分において、副査の***教授の仕事より一段し位置付けられる下働き的と言ってもよい「主要業績の査読結果」という仕事を控訴人に課している。しかも、「東洋大学 非常勤講師候補者の審査結果報告書」には控訴人の所見は全く掲載されず、そもそも原告の担当した「主要業績の査読結果」欄さえ全く設けられていない。さらに、***文学部教授担当の「教育業績評価」、「研究業績評価」にも、****法学部長担当の「資格審査委員会所見」にも、控訴人の所見は全く反映されていない。(甲16)

(7)本件行為7

ア 遺脱された事実1

被控訴人東洋大学は、東洋大学でただ一人控訴人のみに、ほぼ10年連続で他の入試業務をほとんどさせず、日本人であれば誰でもできる留学生日本語試験採点を強要した。ほぼ10年連続で当該業務を担当したのは東洋大学で控訴人ただ一人であり、平成19年以降、現在に至るまで、法学部で当該業務を担当したのは、控訴人ただ一人である。言い換えれば、法学部で控訴人以外に当該業務を担当した教員は一人もいない。(控訴人本人調書、7~8頁、甲53)

イ 遺脱された事実2

ほぼ10年間にわたって、控訴人の担当した留学生日本語試験採点の日の法学部での試験監督出向は控訴人だけであり、法学部の他のほとんどすべての教員は別の日の面接試験担当となっていた。(控訴人準備書面5,25頁、甲53、控訴人本人調書、8頁)

ウ 遺脱された事実3

2007年から少なくとも2014年まで(あるいは2015年まで)の8年間(あるいは9年間)にわたって、被控訴人東洋大学法学部は、教授会資料に載る10月・11月推薦入試出向教員一覧の一番上に他から切り離した形でしかも他の教員の氏名より大きな活字で控訴人の氏名を印刷した。ちなみに控訴人の氏名は一覧表などに載る時はいつも一番下や最後に書かれるので、一番上に書かれたのはこの時だけであった。教授会資料に挿入される、出向日ごとに入試業務担当教員を分類・区分した10月・11月推薦入試出向教員一覧表において、例えば10月19日であれば、一番上に置かれた10月19日の欄に一人だけ書かれた控訴人の氏名がことさら大きな活字で印刷され、その下の別の日にち欄に印刷された多数の法学部教員の氏名との対照が際立つようにされていた。(控訴人準備書面5,25頁、甲53、控訴人本人調書、8頁)

エ 遺脱された事実4

 平成28年に控訴人がほぼ10年間に1度だけ面接試験を担当したことにつき、試験当日、試験会場に控訴人が赴いた折、受付の職員が意外そうな顔をし、試験の直前には説明に来た当時法学部教務課職員の**と**が控訴人が面接担当であることにつき控訴人を小馬鹿にした態度を取っていた。(控訴人本人調書、7頁)

(8)本件行為8

ア 遺脱された事実1

(ア)原判決は、認定事実として、令和元年5月15日の**の控訴人へのメールを引用しているが、このメールへの同日の控訴人の以下の返信を遺脱している。「朱を入れていないというお話ですが、実際に、朱を入れたものを私が見ております。「マルクスの欲望」というタイトルに「について」という文言が朱で加筆されており「マルクスの欲望について」となるようにされていました。また、段落分けされていなかった本文が三つの段落に分かれるように朱が入っていました。朱を入れられては困るので、「タイトルは私の書いた通りにしてください」とメールでお願いしております。段落分けについては、朱で訂正された後の方でも良いと思ったのでその方向でお願いしました。その時のメールも残っております。一度目はお返事がなかったので、二度メールを書いております。その時のメールのやりとりも残っております」。また、令和元年5月1日の**のメールも遺脱されている。「法学部教務課の**です。メールの記録についてはこちらも確認させていただきました。タイトルの赤字につきましては、既に資料は残っておりませんので確認はできませんが、恐らく、教授会や学長室に提出の際はこのような形の方がいいのではとの確認をしていた際にメモをしていたのではないかと思います。しかし、担当から先生に確認をしなかったということは、この点については先生が作成されたとおりのまま、修正はしないで提出をするということで準備をしていたかと思います。赤字部分について打合せ時に誤解を招いていたことについては申し訳ありません。今後は先生方に誤解をされないような形で確認を行うようにいたします。」(甲17)

(イ)上記遺脱に認められる原審の審理態度は、被控訴人東洋大学に有利な事実だけを摘示するもので、甚だ公正さを欠く不合理なものである。

イ 遺脱された事実2

 平成30年6月25日の打合せの際、法学部教務課職員は、控訴人に何らの相談もなく赤字修正した原稿につき、目の前にいる控訴人にわざわざ原稿を見えるようにしておきながら、控訴人に全く相談することなく、目の前にいる控訴人抜きで、原稿の修正点についての検討を続行しようとしていた。

(被控訴人第2準備書面、7頁)

ウ 遺脱された事実3

平成30年6月25日の打合せの際、法学部教務課では、**と****が対応した。****の態度は控訴人に対し極めて敵対的かつ傲慢なもので、通常であれば「~して頂けますか?」というところを「~してもらえますか?」と言い放つという、若い職員の年配の教授に対する態度としては普通は考えられぬものであった。打ち合わせの最後に当時の法学部教務課長である****が挨拶に来た。その際、**は変ににやにやしながら、控訴人をまじまじと見つめるという控訴人を小馬鹿にした態度を取った。このように、法学部教務課職員は、控訴人に対して敵対的な態度を取った。(準備書面4,12頁)

エ 遺脱された事実4

 平成30年6月25日の打合せの際、控訴人は、常日頃から人間関係からの切り離しを被り、法学部教務課職員からの報復的ハラスメントを恐れたという理由により、その場で教務課職員に質問したり抗議したりしなかった。本件行為8に限らず、控訴人から意見や抗議等すると必ず仕返しが来るので、法学部教職員にはなるべく感じよくし、文句を言うとかクレームをつけることはしないようにしていた。(控訴人本人調書、9頁)

(9)本件行為9

ア 認定事実の誤り

 原判決26頁(イ)に認定事実として引用されたメールは、争点と関係ないと言うほかなく、当該認定判断には、採証法則に反する違法がある。

イ 遺脱された事実1

2015年あるいは16年に、控訴人は、優秀な二人の学生に確認したところ、海外研修制度があればぜひ行きたいということがあったので、法学部ドイツ語担当教員****に口頭で問い合わせたことがあった。**氏によれば、海外研修は教員の付き添いがなくでもできるということであった。しかしその直後、海外研修は教員が付き添わなくてはならないという規則が法学部内で作られた。

そして、2017年には、ドイツ語契約制外人講師****と中国語契約制外人講師*****が専任教員として就任した。ドイツ語については、****が里帰りついでに付き添えるのである。フランス語については原告が行かなくてはならず体力的に無理なので、あきらめた経緯があった。(控訴人準備書面3、6頁)

ウ 遺脱された事実2

東洋大学法学部は、授業用図書等教材購入費を獲得するためには、前年度に翌年度に購入する教材の品目を書いた文書を提出することを2017年度から義務化し、それによって授業用図書等教材購入費獲得の手続きを煩瑣にした。2016年度まではそのような手続きは全く必要でなかった。(控訴人準備書面3、9頁)

エ 遺脱された事実3

東洋大学法学部は2022年4月に、授業用図書等教材購入費でDVDを購入することができないよう規則を定めた。2022年4月法学部定例教授会にて「2022年度法学部予算執行要領」が可決された。この要領の8頁(教授会資料37頁)に「授業・講座等運営費は、授業で使用する図書購入のみが対象です」と書かれている。(甲56)

オ 遺脱された事実4

東洋大学法学部から原告に対して、語学予算の不公平を軽減するために、フランス語海外研修の創設を提案する、あるいは海外研修以外に例えば中国語に毎年つけられている検定対策費をフランス語にもつける等の解決策を原告に提示することは一切なかった。(控訴人準備書面3、7頁)

カ 遺脱された事実5

被控訴人東洋大学法学部は、10年以上も事実上フランス語予算ゼロが続いている時に、計画の立案や予算要求書の提出を経て海外研修予算をつけることが可能であることを控訴人に全く教えることをせず、立案や予算要求書提出を勧めることもしなかった。(控訴人準備書面4、13頁)

キ 遺脱された事実6

フランス語予算と他言語予算との間に数10万から100万、200万に至る莫大な格差が10年間も維持されているにもかかわらず、法学部の方から10年間の間にこの極端な不平等状態を是正しようという試みは一切なされなかった。(控訴人準備書面5、29頁、陳述書、5頁)

(表4)

ク 遺脱された事実7

 控訴人は、10年以上も続く語学予算格差につき、これをハラスメントと考えていたために、ハラスメントについて何か言うと復讐されるので、実際に控訴人がした要求以上には何も要求せず、おとなしくしていた。(控訴人本人調書、25頁)

(10)本件パワハラの長期にわたる継続性と大規模な組織性

ア 遺脱された事実1

被控訴人東洋大学による控訴人へのパワハラは、平成14年に始まり、平成20年に激化し、現在まで持続している。(訴状、3頁、16~17頁、陳述書、控訴人本人調書、12~13頁)

イ 遺脱された事実2

被控訴人東洋大学による控訴人へのパワハラは、法学部のみならず**学長始め東洋大学全学の関わる極めて大規模なものである。(陳述書、控訴人本人調書、12~13頁、甲64の1~6、甲66の5、甲71の2、4、8、10、甲74の1、3、甲75、甲76の1~4、甲79の1、2)

ウ 遺脱された事実3

 平成14年、平成16年、平成27年に東洋大学法学部教授による控訴人に対する極めて侮辱的なセクシャルハラスメント発言があった。(訴状、16~17頁)

(11)本件パワハラの長期にわたる継続性と大規模な組織性に関する認定事実の遺脱の違法性

判決の結論に影響を及ぼすおそれのある控訴人の上記事実の遺脱のすべてにつき全く審理判断せずなされた原判決には、判断遺脱、審理不尽、理由不備の違法があると言わざるを得ない。

第4 事実認定及び法令解釈適用の違法

以下に、判決第3、1(1)~(9)イ「検討」欄、(10)「小括」、2「争点2」各欄における判示を挙げ、当該判示の違法性を指摘する。

1.本件行為1

(1)控訴人の主張について

ア 原判決の判示

「原告は、フランス語を担当していた***教員が定年退職した後、フランス語教員枠が、教授会の審議を経ずに政治学教員枠に転用されたことは、原告のフランス語教員としての人格権を侵害するパワハラであると主張する」。

イ 判示の違法性

 控訴人は、「教授会の審議を経ずに政治学教員枠に転用されたこと」が「原告のフランス語教員としての人格権を侵害するパワハラである」とは全く主張していない。逆に、教授会における審議決定の有無は、弁論の全過程のうちで、その重要性を失い、争点と関係のない二次的な問題となっており、控訴人もその事実を確認している。(準備書面4、第1、1(2)⑦、7頁、)控訴人の主張は、前記第2、1,(1)に記述した通りであり、これら遺脱された主張のすべてを考慮した上でないと再構成され得ない。以上より、当該判示には、自由心証主義違反の違法及び判断遺脱、審理不備の違法があると言わざるを得ない。

(2)教授会決定の有無について

ア 原判決の判示

「しかし、***教員の退職後のフランス語教員枠の扱いについて原告も出席して開催された教授会の審議を経て決定されたことは前記ア認定説示のとおりであり、教授会の審議を経ていないとする原告の主張は事実と異なる内容を含むものであり、採用することができない」。

イ 判示の違法性

「***教員の退職後のフランス語教員枠の扱いについて原告も出席して開催された教授会の審議を経て決定された」というのは事実ではない。上記判示で問題となり得るのは、フランス語教員枠の政治学教員枠への転用の教授会審議決定の有無のみであるから、原判決「前記ア認定説示」のうち平成27年7月26日の教授会に関する説示を次に引用する。「同年7月26日に開催された教授会において、学部長から、被告の人事構想 将来構想委員会の審議結果の説明がされ、専任教員の採用に関し、***教員の後任枠について政治学分野とすること、担当科目のう テキスト ボックス: 5 ち過半数を基盤教育科目とすることとの方針の説明がされた」。当該教授会については、あくまで「7月19日開催の人事構想・将来構想委員会および7月26日開催の教員資格審査委員会における審議結果について、資料に基づき説明がなされた」(乙7)までであって、フランス語教員枠の政治学教員枠への転用が教授会審議決定された事実がないことは明白である。したがって、上記判示は、全くの誤りであり、採証法則に反する違法を犯しているとしか言いようがない。

(3)大学設置基準第13条について

ア 原判決の判示

「なお、原告は、教授会の決定が仮にあったとしても、大学設置基準13条に違反するものであり、許されない旨主張するが、大学設置基準は、大学に置く教員数の基準を定めたにすぎず、ある教員が退任した後にその教員分の枠についてどのように配分するかは、基準に反しない限り大学の合理的裁量により定められるものであると解されるから、原告の上記主張はそもそも失当であるし、大学設置基準に違反する教員の採用がされたからといって原告の権利、利益が害されるともいえないのであるから、結局のところ原告の上記主張は主張自体失当といわざるを得ない」。

イ 判示の違法性

(ア)上記判示は、控訴人が弁論の過程において既に論駁した被控訴人の主張を(準備書面5,5頁)、弁論における当該議論につき何ら審理判断せず採用し、控訴人の主張を排斥したものであり、審理不備、理由不尽、判断遺脱の違法及び自由心証主義違反の違法を犯していると言うほかはない。

(イ)「大学設置基準は、大学に置く教員数の基準を定めたにすぎず」という表現が極めて不正確である上に、「ある教員が退任した後にその教員分の枠についてどのように配分するかは、基準に反しない限り大学の合理的裁量により定められるものである」という判示は、「ある教員が退任した後にその教員分の枠について」の配分の仕方が本件行為1にあって基準に反することは、第3,2,(1)エ(ア)、(イ)に前述した通り、大学設置基準第13条に定める別表第二枠と別表第一枠それぞれに属する教員数の配分を変えることが法令違反であることから、明白であるから、不合理であると言うほかはなく、審理不備、理由不尽、判断遺脱の違法を犯している。

(ウ)原審は「ある教員が退任した後にその教員分の枠についてどのように配分するかは、基準に反しない限り大学の合理的裁量により定められる」と判示するが、本件行為1が大学設置基準第13条に反する法令違反を犯している以上、本件行為に関して「合理的裁量」が存在しないことは疑い得ない。

(4)本件行為1結論部分の判示の違法性

ア 原判決の判示

「大学設置基準に違反する教員の採用がされたからといって原告の権利、利益が害されるともいえないのであるから、結局のところ原告の上記主張は主張自体失当といわざるを得ない。

したがって、教授会の判断によって、被告が、フランス語教員枠を政治学教員枠に転用したことが、原告のフランス語教員としての人格権を侵害するものとは認められないため、原告の上記主張には理由がない」。

イ 判示の違法性

(ア)控訴人は、法令違反である決定が明白に業務上のいかなる必要性をももたない「業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」であることを主張している。本件行為1が大学設置基準第13条違反である事実がそれ自体直接に控訴人の権利や利益を害するものであるとは主張していない。

(イ)本件行為1が大学設置基準第13条違反である事実がそれ自体直接に控訴人の権利や利益を害するものではないという前提から、「被告が、フランス語教員枠を政治学教員枠に転用したことが、原告のフランス語教員としての人格権を侵害するものとは認められない」という結論は全く帰結し得ず、このように推認する判断が、誤った経験則を採用している上に、控訴人の人格権侵害の他のあらゆる可能な原因を無視し排除している点において論理的に失当であることから、控訴人の主張を排斥する当該判示の審理判断には、経験則違反及び論理則違反の違法がある。

(5)本件行為1の不法行為性

ア 原判決の判示

「したがって、教授会の判断によって、被告が、フランス語教員枠を政治学教員枠に転用したことが、原告のフランス語教員としての人格権を侵害するものとは認められないため、原告の上記主張には理由がない」。

イ 判示の違法性

(ア)原審は、前記控訴人の3点の主張、第2、1(1)ウ、エ、オを不当に無視し、これについて全く検討していない。したがって、判決に影響を及ぼすことが明らかな上記3点の主張を全く検討せずに、教授会の判断によるものであることのみを根拠として、本件行為1が控訴人の人格権侵害に当たらないとして、控訴人の主張を排斥する当該判示の審理判断には、判断遺脱、審理不尽、理由不備の違法があると言わざるを得ない。

(イ)平成21年の*****の法学部フランス語専任教員としての採用、平成27年の***枠の政治学教員枠への転用、令和5年のフランス語担当非常勤講師の新規採用、そして令和6年の*****のフランス語担当専任教員(助教)としての採用(甲101,甲102)のすべてのフランス語教員人事を通して、フランス語教員の増減はフランス語履修者数の増減と全く相関関係のないことから、本件行為1がフランス語履修者の減少によるものではないこと、したがって、本件行為1に業務上の合理性及び必要性が全くないことは明白である。

(ウ)本件行為1に業務上の合理性及び必要性がなく、通常の業務範囲内の合理的な動機・目的が全く見当たらないことから、本件行為1は、法学部で唯一のフランス語専任教員でありフランス語について、及びフランス語教員人事についてそれ相応の見識を有する控訴人に、職務上の地位・権限を逸脱・濫用し、フランス教員にとっての重大問題であるフランス語教員人事につき全く相談しないことにより、控訴人を無視し、控訴人の見識を不当に否定することを通して、控訴人の名誉感情及び個人的な尊厳を侵害すると同時に、他の語学担当専任教員が複数であるところ、フランス語担当専任教員だけを控訴人一人にして控訴人を差別し孤立させ無力化し、フランス語劣遇に対する抵抗力をなくさしむることにより、フランス語劣遇を通して控訴人に圧力をかけることを容易にし、ただでさえ法学部内で孤立し精神的に隔離された状況にある控訴人に有形無形の圧力を加え、精神的負担を与えること自体に主眼をおく不当な目的によるものであると考えるほかはない。

(エ)法学部で唯一のフランス語担当専任教員である控訴人に全く相談せず、全く無視して、フランス語教員枠を転用するというごときフランス語教員にとって重大な決定をするという行為は、通常業務の範囲内で起こることではなく、したがって何ら業務上の合理性及び必要性を有するものではなく、社会通念に照らしても、組織運営の常識からして、控訴人の人格及び名誉を尊重する通常の組織内で起こるべき事態ではないことから、社会通念上の許容範囲を大きく超えるものであり、社会相当性を欠いたものである。

(オ)本件行為1は、大学設置基準第13条に違反する法令違反でもあり、その意味でも、通常業務の範囲を超えており、何ら業務上の合理性及び必要性を有するものではなく、社会通念に照らしても、通常人の許容し得る範囲を大きく超えた社会相当性を欠いたものである。

(カ)本件パワハラの総体は、平成14年に始まり、平成20年の****法学部教授の法学部長就任とともに激化し、現在まで継続されているものである。平成14年、平成16年、平成27年に東洋大学法学部教授による控訴人に対する極めて侮辱的なセクシャルハラスメント発言があったことから(訴状、16~17頁)、また令和3年以降の控訴人が「付随的ハラスメント」とした複数のパワハラ行為があったことから(準備書書面5,陳述書)、被控訴人法学部において控訴人の人格及び名誉の侵害が極めて長期間にわたって継続していた事実が容易に推認される。フランス語教員人事に限っても、控訴人の人格及び名誉感情の侵害は、平成20年以来現在に至るまで継続されているものであり、法学部唯一のフランス語専任教員である期間の長い控訴人を継続的な精神的圧力による負担を感じざるを得ない状態に長期間にわたって置き続けるものであり、社会的通念に照らして許容し得る範囲を超えているとしか言いようがない。本件行為1もまた、これを孤立させて考えるのではなく、東洋大学法学部によるフランス語教員人事を口実とした控訴人の個人的尊厳及び名誉感情を侵害することを目的とする長期間にわたる過程の一契機として目されるべきものであり、法学部内で長期間にわたって継続的な精神的圧力を感じざるを得ない状況に置かれ続けている控訴人にさらなる精神的苦痛を感じさせることを目的としたものと考えるべきである。

(キ)上記(イ)~(カ)から、本件行為1は、職務上の地位・権限を逸脱・濫用し、業務上の合理性及び必要性の全くないままに、また社会通念に照らして許容される範囲を超えて、法学部内で控訴人を、フランス語教員枠の転用という控訴人に関わる重要問題に関して、無視することにより、控訴人の人格及び名誉感情を侵害することに主眼をおいた不当な目的を有するものであり、控訴人を標的とし、フランス語教員人事を口実とした、平成21年以来15年の長きにわたるフランス語教員増減過程の一契機を成すという意味でも控訴人に甚だしい継続的精神的圧力を加え、大きな精神的負担を感じさせるものであり、当該背景事情の継続性からしても、社会相当性を全く欠いており、不法行為を構成するというほかはない。

(ク)上記(キ)から、控訴人への人格権侵害を認めないとして、控訴人の主張を排斥した当該判示の審理判断には、判断遺脱、審理不尽、理由不備の違法に加えて、法令の解釈・適用の違法がある。

2.本件行為2

(1)控訴人の原稿の性質について

ア 原判決の判示

「前記ア認定の事実によれば、「語学選択のしおり」に原告が提出した原稿が掲載されなかったのは、表現が砕けすぎであると判断されたためであると認められるところ、そのような理由で不採用にするのであれば、実際に講義を担当する原告に検討結果を伝えた上で、再考を求めるなどの配慮がされることが望ましいとはいえるが、そのような手順を踏まなかったからといって、法学部の執った措置が原告との関係で違法の評価を受けるものではないというべきである」。

イ 判示の違法性

 「表現が砕けすぎである」という判断は、**のメールに書かれたものであり、これが事実である保証は全くなく、他の可能な理由もあり得るのであるから、他の可能な理由について何らの検討もせず、**の言述内容を事実とした当該事実適示は誤っている。本件行為1で、被控訴人東洋大学法学部が、***枠転用の理由をフランス語履修者が少ないことに帰していた事実、本件行為2以後の令和3年にカラー写真やイラスト付きのドイツ語紹介文が掲載された事実から、**及び**が、学生にとって親しみやすい原稿によってフランス語履修者数が増えることを恐れ、控訴人の原稿を採用しないと判断した事実、及びドイツ語担当教員が、控訴人の原稿に刺激され、これを模倣してイラスト入りの学生にとって親しみやすい紹介文で履修者の増加を狙ったという事実も推認され得る。したがって、十分可能なこれらの事実につき全く検討することなくこれら事実を排除し、**の言述内容を事実として採用し、控訴人の主張を排斥した原審の当該判示の認定判断には、判断遺脱、審理不尽の違法及び採証法則に反する違法がある。

(2)法学部当該教職員の悪意について

ア 原判決の判示

「また、本件全証拠によっても、法学部教務課の担当者が、原告に対する敵意ないし悪意をもって原告の提出した原稿を採用しなかったとは認められない」。

イ 判示の違法性

(ア)原審は、第2、1(2)ア及びイにおける控訴人の主張を不当に無視し、これについて全く検討していない。したがって、判決に影響を及ぼすことが明らかな上記2点の主張を全く検討せずに控訴人の主張を排斥する当該判示の審理判断には、判断遺脱、審理不尽、理由不備の違法があると言わざるを得ない。

(イ)原稿に問題がある場合、原稿作成者にその旨連絡するというのが、社会通念に照らして、組織運営の常識として、唯一妥当な対応である。

(ウ)原稿に問題がある場合に、原稿作成者に全く連絡せず別のテクストを掲載するという行為は、通常、組織内で相手を一人前の人間ないし組織の構成員として認め、相手の人格を尊重している場合には発生し得ない。このような行為は、本件行為2の場合、控訴人を一定の見識を備えた一人前の大学教員として認めず、控訴人の人格的尊厳や名誉感情を尊重していないから、起こる行為である。したがって、当該行為は、控訴人を一定の見識を備えた一人前の大学教員として認めず、控訴人の人格的尊厳や名誉感情を侵害するものであり、社会通念上容認されるべきではない、社会相当性を欠いた行為である。

(エ)原稿に問題がある場合に、原稿作成者に全く連絡せず別のテクストを掲載するという行為は、通常業務の範囲内で起こることではなく、業務上何らの合理性も必要性も有さないものである。

(オ)**と**は、原稿作成者の原稿を無視し原稿作成者に全く連絡せず別のテクストを掲載するという、通常の業務を逸脱しており、社会通念上も許容し得る範囲を超えた行為を、控訴人に対して、控訴人に連絡する、字数を増やす等、可能ないくつかの選択肢のなかから選択した。

(カ)選択は常に意図的なものであり、上記行為は、控訴人の人格的尊厳や名誉感情を侵害するものであるから、**と**が原稿作成者である控訴人に全く連絡しないまま別のテクストを掲載するという選択肢を他の複数の選択肢の中から敢えて選択した行為は、控訴人の人格的尊厳や名誉感情を侵害しようという不当な動機に駆り立てられた悪意あるものというべきである。

(キ)したがって、判決に影響を及ぼすことが明らかな、弁論における控訴人の主張を全く検討せずに控訴人の主張を排斥する当該判示の審理判断には、判断遺脱、審理不尽、理由不備の違法に加え、経験則違反の違法があると言わざるを得ない。

(3)フランス語紹介文とドイツ語紹介文の不当な比較について

ア 原判決の判示

「なお、原告は、令和3年度及び令和4年度における語学選択のしおりのドイツ語紹介文については、カラー写真入り、教師を漫画化したイラストに吹き出しが付いている等、明らかに他の言語の紹介よりも情報量が膨大であり不均衡である旨主張する。しかし、ドイツ語の紹介文(甲27)と原告が作成し実際に掲載されたフランス語の紹介文(乙5)を比較した際に、写真の掲載数等の違いは存在するものの、語学選択に必要な情報量に大きな差があるとは認められないし、ドイツ語の紹介が充実していることが原告の権利利益を損なうものとも考え難いところであるから、原告の上記主張は意味のあるものではない)。

イ 判示の違法性

(ア)ドイツ語紹介文については、令和3年の時点で、情報量と体裁の点で他言語と比較して明らかに不均衡なものであった。控訴人は、弁論において、紙幅のなさや内容等の不均衡を本件行為2の理由した被控訴人への反論として、令和3年の時点で明らかに他言語と比較して不均衡なドイツ語紹介文に言及したものであり、控訴人の当該主張が正当なものであることは疑い得ない。

(イ)控訴人の当該主張が令和3年時点での話であるにもかかわらず、控訴人の当該主張を排斥するために、令和3年と令和4年の差を不当に無視して、ドイツ語紹介文とフランス語紹介文とを同一平面上において比較するのは失当であり、存在しない事実を捏造することでもあって、当該判示は、経験則違反の違法及び、弁論の全趣旨を考慮に入れていない点で、自由心証主義違反の違法を犯すと同時に、公正中立を損ない、国民の裁判官及び裁判所への信頼を著しく損傷するものであることから、憲法違反であり、裁判所法第49条に違反する違法行為を犯すものである。

(4)被控訴人における裁量の逸脱・濫用

ア 原判決の判示

「そこで検討するに、前記アに認定説示した事実によれば、「語学選択のしおり」は、法学部の新入生が外国語科目を選択するための判断材料の一助として提供される参考資料であると認められるところ、学生の履修選択に関する情報提供は、学生の教育について責任を負う被告の業務として行われるものであるから、その要否及び内容は、被告(法学部)が組織として対応を検討し、決定すべき事項である。したがって、担当教員が、教務課の担当職員からの依頼に応じて原稿を提出したとしても、被告がその内容のとおりに「語学選択のしおり」の紙面を作成すべき法的義務を負うものとは認められない」。

イ 判示の違法性

(ア)上記判示は、控訴人が弁論の過程において既に論駁した被控訴人の主張を(準備書面4,4頁)、弁論における当該議論につき何ら審理判断せず採用し、控訴人の主張を排斥したものであり、審理不備、理由不尽、判断遺脱の違法及び自由心証主義違反の違法を犯していると言うほかはない。

(イ)本件行為2が、「被告の業務として行われるものである」としても、前記(2)イから明らかであるように、本件行為2は、何らの業務上の合理性及び必要性をも有することなく、社会相当性をも欠いたものであるから、裁量の濫用・逸脱に当たるものといえ、上記判示の認定判断は失当である。このことは、次の判例からも明らかである。「もっとも、このような裁量も無制限ではなく、大学の自治に配慮しつつも、権利濫用法理に服し、合理的な理由と社会相当性が求められると解すべきである。当該措置が権利濫用に当たるか否かは、当該措置をするための大学の教務上の必要性と、それによる構成員の不利益の程度とを比較考量して決すべきである。」(東京地裁 平成20年(ヨ)第21005号 2008・10・15判決)、「もっとも、・・・裁量権の範囲を逸脱し、教員らの権利を不当に制約するものと認められる場合には、権利の濫用に当た」る(東京高裁平成30・4・25判決)。したがって、控訴人の主張する上記事情等につき一切考慮することなく、控訴人の主張を排斥した上記判示の認定判断には、経験則違反の違法、判断遺脱、審理不尽、理由不備の違法及び法令の解釈・適用の違法がある。

(5)

本件行為2の不法行為性

前記(2)イに明記された諸事情を鑑みるに、本件行為2は、職務上の地位・権限を逸脱・濫用し、業務上の何らの合理性及び必要性をも欠き、社会通念に照らして許容される範囲を超え、控訴人の個人的尊厳及び名誉感情を侵害することにより、控訴人に一定の見識を備えた一人前の法学部教員として認められていないという屈辱感を感じさせることを通して控訴人に精神的圧力を加えることを主眼とするという不当な目的によるものであり、人格権侵害の不法行為を構成すると言うべきである。

(6)本件行為2結論部分の判示の違法性

ア 原判決の判示

「以上より、**及び**が、原告に何の相談や報告もなく、原告が送った「語学選択のしおり」の修正版を採用せず従来版を使用したことは、フランス語に対する劣遇や原告に対する悪意に基づくものであるとはいえず、原告のフランス語教員としての人格権を侵害するものとは認められないため、原告の上記主張には理由がない」。

イ 判示の違法性

上記(5)から、判決に影響を及ぼすことが明らかな、弁論における控訴人の主張を全く検討せずに、本件行為2が控訴人の人格権を侵害するものではないとして、控訴人の主張を排斥する当該判示の審理判断には、判断遺脱、審理不尽、理由不備の違法に加え、経験則違反の違法及び法令の解釈・適用の違法があると言わざるを得ない。

3.本件行為3

(1)本件行為3の不法行為性

ア 原判決の判示

「以上より、平成28年から令和2年まで、法学部のウェブサイトにフランス語の記事が掲載されなかったことは、原告の人格権を侵害するものとは認められないため、原告の上記主張には理由がない」。

イ 判示の違法性

(ア)原審は、前記第2、1(3)アに明記された控訴人の主張及び前記第3、2(3)ア、イに明記された諸事実を不当に無視し、これらを検討することなく、上記のごとく判示している。したがって、判決に影響を及ぼすことが明らかな上記主張及び上記2点の事実を全く検討せずに控訴人の主張を排斥する当該判示の審理判断には、判断遺脱、審理不尽、理由不備の違法があると言わざるを得ない。

(イ)法学部ウェブサイトに語学宣伝の場を作るのであれば、教授会や語学会議等で周知すること、あるいは少なくとも、そのような場があることを法学部教職員が控訴人に個人的に教えることが、社会通念に照らして、組織運営の常識として、当然あるべき事態である。

(ウ)フランス語とドイツ語間の不平等状態が平成28年からほぼ5年間も続いていたのであるから、その間に、法学部ウェブサイトにおける語学宣伝の場の存在につき、教授会や語学会議等で周知したり、法学部教職員が控訴人に個人的に知らせることは、社会通念に照らして、組織運営の常識として、当然発生すべき事態である。

(エ)上記(イ)(ウ)のごとき事態は一切発生しなかった。法学部ウェブサイトにおける語学宣伝の場立ち上げの際も、その後の5年間にも、会議の場であれ、個人的にであれ、法学部ウェブサイトにおける語学宣伝の場の存在につき、法学部教職員が控訴人に情報を与えることは、一切なかった。この事実から、通常、語学教員であれば知っているべきであるところ、控訴人に関してだけは、法学部教職員全員が、控訴人が語学宣伝の場の存在につき知らないままでいる事態に平気でいる、つまり、知らないことが当然であると考えている、という事実が推認される。この新たに推認された事実からまた、法学部語学教員で控訴人だけが語学宣伝の場の存在につき知る権利が当然にない、と考えているという事実が推認される。さらに、この事実から、そして上記(イ)(ウ)からして、法学部教職員の誰もがもっているべきである、自身の専門分野や担当科目についての社会通念からして当然与えられるべき情報を与えられる権利を控訴人がもっていないと法学部教職員全員が考えているという事実が推認される。最後に、この事実から、法学部教職員が、法学部教職員が当然もっているべき権利を控訴人にだけは認めていないのであるから、控訴人の人格と名誉を尊重していないという事実、すなわち、法学部教職員が、控訴人の個人的尊厳と名誉感情を侵害しているという事実が推認されるのである。また、ここに法学部教職員による控訴人への仲間外しによる人間関係からの切り離しも容易に結論付けられる。

(オ)法学部ウェブサイトにおける語学宣伝の場立ち上げの際も、その後の5年間にも、会議の場であれ、個人的にであれ、法学部ウェブサイトにおける語学宣伝の場の存在につき、法学部教職員が控訴人に情報を与えることが、通常業務の範囲内で起こることであることから、本件行為3は、業務上の何らの合理性も必要性も有さないものである。

(カ)**始め法学部教職員が、敢えて社会通念を無視し、通常の業務を逸脱してまで、業務上の何らの合理性も必要性も有さない本件行為3を選択したのは、控訴人の個人的尊厳と名誉感情を損傷することによって控訴人に精神的圧迫を加えると同時に、フランス語履修者に比してドイツ語履修者のみを増やして控訴人を不利益に貶めようという不当な目的によるものと考えるほかはない。

(キ)上記(ア)~(カ)より、本件行為3は、職務上の地位・権限を逸脱・濫用し、社会通念に照らして許容される範囲を超え、業務上の何らの合理性及び必要性をも欠き、仲間外しされていない状態であれば控訴人が法学部専任教員として当然享受してよいはずの情報を控訴人に与えず、控訴人を大学専任教員として通常に尊重しないことにより、控訴人の人格ないし個人的尊厳及び名誉感情を侵害し、控訴人に精神的圧力を加えるという不当な目的によるものであり、人格権侵害の不法行為を構成すると言うべきである。

(ク)上記(ア)~(キ)より、控訴人の主張を排斥する当該判示の審理判断には、判断遺脱、審理不尽、理由不備の違法に加え、法令の解釈・適用の違法がある。

(2)控訴人がフランス語紹介記事の掲載を要請しなかったことについて

ア 原判決の判示

「加えて、原告が、法学部のウェブサイトにフランス語の紹介記事を掲載するよう**等の法学部教務課職員に要請したこともなかったというのであるから(原告本人)、同ウェブサイトにフランス語の記事の掲載がなかったことが、原告との関係で何らかの義務違反に当たる余地はおよそないというべきである」。

イ 判示の違法性

(ア)上記判示は、控訴人が弁論の過程において既に論駁した被控訴人の主張を(準備書面2,5~6頁)、弁論における当該議論につき何ら審理判断せず採用し、控訴人の主張を排斥したものであり、審理不備、理由不尽、判断遺脱の違法及び自由心証主義違反の違法を犯していると言うほかはない。

(イ)原審は、前記第3、2(3)ウに明記された事実を不当に無視し、検討することなく、上記のごとく判示している。したがって、判決に影響を及ぼすことが明らかな上記主張及び上記3点の事実を全く検討せずに、控訴人からのウェブサイト掲載要請がなかったことのみを根拠に、控訴人の主張を排斥する当該判示の審理判断には、判断遺脱、審理不尽、理由不備の違法があると言わざるを得ない。

(ウ)控訴人は、東洋大学法学部においてずっと何年も仲間外しされ、いじめられているので、法学部教職員に何らかの抗議をすると、仕返しされてかえって面倒なことになるので、抗議等しないようにしていた。したがって、本件行為3についても、当該行為を知ってからも抗議や提案等をしなかった。(控訴人本人調書、17頁)

(エ)上記(ウ)から、当該判示の審理判断は、経験則の特段の事情を全く考慮せずに控訴人の主張を排斥しているのであるから、判断遺脱、審理不尽、理由不備の違法に加え、経験則違反の違法を犯しているというほかはない。

(3)被控訴人における裁量の逸脱・濫用

ア 原判決の判示

「しかし、そもそも、法学部のウェブサイトにどのような内容を掲載するかについては、法学部が広報の観点から組織全体として判断し、決定すべき事項であり、同ウェブサイトの記事の内容等について、被告が原告に対して個別に何らかの義務を負っているものとは認められない」。

イ 判示の違法性

本件行為3は、前記(1)から明らかなように、何らの業務上の合理性及び必要性をも有することなく、社会相当性をも欠いたものであるから、裁量の濫用・逸脱に当たるものといえ、上記判示の認定判断は失当である。したがって、控訴人の主張する前記事情等につき一切考慮することなく、控訴人の主張を排斥した上記判示の認定判断には、経験則違反の違法、判断遺脱、審理不尽、理由不備の違法及び法令の解釈・適用の違法があり、経験則の特段の事情を無視している点において、経験則違反の違法がある。

4 本件行為4

(1)平成19年の件について

ア 原判決の判示

「この点、原告は、平成1 9年に**及び**が原告の教養演習を「つぶしてやる」との発言を行ったこと、これを受け、当時カリキュラム委員長だった**が、原告に対し、「教養演習をやめた方がいい」ということを伝えたという経緯があり、それにより原告の教養演習の開講ができない状態になった旨主張する。しかし、原告は、本人尋問において、教養演習開講方針の条件について納得することができなかったため、教養演習の開講を希望しなかった旨の供述をしているのであって、他の教職員からの圧力によって教養演習が開講できない状態になった旨の原告の上記主張は自らの供述とも違う事実を主張するものであり、採用することができない」。

イ 判示の違法性

(ア)上記判示は、控訴人の本人尋問における供述を弁論における控訴人の主張に優先させて採用しているが、弁論によって得られた訴訟資料を証拠資料より優先させる弁論主義の原則からして、弁論主義違反の違法を犯していることは明らかである。

(イ)**及び**が控訴人の教養演習を「つぶしてやる」と言い、**がそれに同調したのは平成19年であり、控訴人が納得できないと思ったのは、平成23年の教養演習開講方針を見た折のことであるのは、本人尋問における控訴人の供述から明白であるから、当該判示は、4年の時間的懸隔を間に置く二つの事実を不当に平成19年時点に置くという事実捏造をし、この捏造された事実に基づいて控訴人の主張を排斥するものであるから、当該判示の認定判断には、採証法則に反する違法及び論理則に反する違法があり、被控訴人東洋大学に加担して事実捏造まですることが明らかに公正中立に反することから、憲法違反及び裁判所法49条違反の違法がある。

(2)教養演習開講方針及び控訴人が開講の申し出をしなかったことについて

ア 原判決の判示

「しかし、前記ア認定説示にかかる事実によれば、平成23年に教養演習開講方針が定められた後は、教養演習は、開講を希望する教員において、法学部の定めた開講方針に沿って申し出を行い、かかる申し出を踏まえて開講される科目とされていたところ、原告は、教養演習の開講希望に関する照会について回答せず、それ以降も開講を希望する旨の申し出を行っていないことが認められる」。「以上によれば、原告が法学部において教養演習を担当していないのは、原告が法学部の執行部に対し、開講の希望を申し出ていないことから開講の検討がされていないというにすぎないのであって、原告が教養演習の担当をしていないことが、原告に対する嫌がらせであるとか、原告に対する差別であるということはできない」。

イ 判示の違法性

(ア)原審は、前記第2、1(4)ア、イ、ウ、エに明記された控訴人の主張及び前記第3、2(4)ア、イ、ウ、エに明記された諸事実を不当に無視し、全く検討することなく、上記のごとく判示している。したがって、判決に影響を及ぼすことが明らかな上記主張及び上記3点の事実を全く検討せずに、不正な教養演習開講方針を正当なものであると不当に想定した上で、控訴人が教養演習開講方針に応じて開講を希望しなかったことのみをもって、控訴人の主張を排斥する当該判示の審理判断には、判断遺脱、審理不尽、理由不備の違法及び採証法則に反する違法があると言わざるを得ない。

(イ)上記(ア)から、当該判示の「法学部の定めた開講方針に沿って申し出を行い、かかる申し出を踏まえて開講される科目とされていた」という判断は、事実と全く異なり、虚言とも言えるものであり、裁判官の公正中立に反する憲法違反であり、裁判所法49条違反であると言うほかはない。

(ウ)もし法学部が控訴人を仲間外ししていない通常の健全な組織であり、法学部の成員としての控訴人の人格と名誉を普通に尊重しているのであれば、たとえ控訴人から開講の申し出がなかったとしても、12年間にわたり語学教員のなかで控訴人だけが教養演習を一度も開講していないという異常な事態に目をつぶることはできず、教授会その他の会議、あるいは個人的にでも控訴人に対して、教養演習は開講方針を遵守しなくても開講できる旨を伝え、控訴人に開講を促す等の配慮をすることが社会通念からして相当であったところ、法学部教職員から控訴人へのそのような情報伝達および働きかけは一切なかった。12年の長きにわたり、控訴人に教養演習開講に関する情報を与えず、控訴人だけが教養演習を開講していない状況を維持し続ける行為は、明らかに社会通念の許容範囲を超えており、業務上の何らの合理性も必要性も有さぬものであり、法学部成員に対して当然認められるべき権利を控訴人にだけ拒むことにより、組織の成員としての控訴人の人格と名誉を侵害し、控訴人に対して継続的な圧力を加えることを主眼とした不当な目的によるものであることから、不法行為を構成するというべきである。

(エ)上記(ウ)から、「原告が法学部において教養演習を担当していないのは、原告が法学部の執行部に対し、開講の希望を申し出ていないことから開講の検討がされていないというにすぎないのであって、原告が教養演習の担当をしていないことが、原告に対する嫌がらせであるとか、原告に対する差別であるということはできない」という判示の審理判断には、判断遺脱、審理不尽、理由不備の違法及び採証法則に反する違法に加えて、経験則違反の違法がある。

(3)本件行為4の不法行為性

ア 原判決の判示

「以上より、原告が平成20年以降教養演習を担当しなかったことについて、被告による原告に対する悪意に基づく人格権侵害であるとは認められないため、原告の主張には理由がない」。

イ 判示の違法性

(ア)平成23年の「教養演習開講方針」には、教養演習開講の必要条件として履修者10名以上語学科目6コマ+教養演習1コマ計7コマが定められているが、平成23年以後10年以上にもわたって控訴人以外のほぼすべての語学教員らによる数多くの教養演習やセミナーがこの条件を満たさないまま開講されている。(甲28,甲91の1~19、甲92)上記の事実から、また語学教員らが勝手に法学部で定められた開講方針を破って教養演習を開講することは考えられず、またそうしようと思っても開講が許されるはずもないことは自明であることから、**法学部長ら法学部の実力者が、控訴人以外の語学教員には「教養演習開講方針」に従わなくてよいことを伝え、それによって控訴人だけがこれに従うようにし向けたという事実が推認される。この事実から、また、被控訴人が弁論において(第3準備書面)令和5年度の控訴人の担当コマ数を4コマにしたことを不当に正当化するために5コマでよいと主張している事実から、6コマという開講条件そのものが虚偽であり不正なものであるという事実が推認されることをも鑑みて、「教養演習開講方針」が控訴人の教養演習開講を妨げようという不当な目的によって作成された不正な文書であるという事実が推認されるとともに、法学部の実力者に大半の語学教員が同調した仲間外しが存在する事実も推認されるのである。

(イ)教養演習開講にあたって、控訴人が平成18年及び平成19年に開講していた時より厳しい条件を課す虚偽の開講方針を作ることにより、控訴人が再び教養演習を開講することをあきらめるように仕向け、控訴人以外の語学教員には開講方針が虚偽のものであることを伝えて、開講を促す行為は、組織の一成員だけを仲間外しし、差別することであるから、社会通念に照らし、通常人が許容し得る範囲を超えており、何らの業務上の合理性及び必要性をも有さないものであることは明白である上、職務上の地位・権限を逸脱・濫用し、法学部専任教員として本来享受することのできるはずの権利を控訴人にだけは策略をもって拒否することによって、差別された控訴人の人格と名誉を侵害することを通して、控訴人に精神的圧力をかけることを主眼とした不当な目的によるものであることから、不法行為上も違法であるというべきである。

(ウ)上記(ア)(イ)から、平成19年に、履修者10名以上語学科目6コマ+教養演習1コマ計7コマという条件を守っていないことを理由として、控訴人の教養演習を潰した**、**、**らの行為は(被控訴人第1準備書面、8~9頁)、何ら業務上の合理性及び必要性を有しておらず、控訴人の人格及び名誉を侵害し、控訴人に精神的圧力を加えることによって、控訴人に精神的苦しみを与えることを主眼とした不当な目的によるものであると言うべきであり、社会相当性を欠いたものであることから、不法行為を構成する。

(エ)上記(2)イ(ウ)及び(3)イ(イ)(ウ)から、本件行為4が不法行為を構成することは明白である。

(オ)上記(エ)から、判決に影響を及ぼすことが明らかな控訴人の主張につき全く検討せずに、控訴人の主張を排斥した当該判示の審理判断には、判断遺脱、審理不尽、理由不備の違法及び法令の解釈・適用の違法がある。

5 本件行為5

(1)本件行為5の問題点

ア 原判決の判示

「本件についてみると、原告は法学部における各種委員会の長に選任されていないことが不当であり、被告ないし法学部教職員による仲間外しである旨主張し、これが不法行為又は安全配慮義務違反に当たる旨主張するのであるが、各種委員会の長の選任過程にいかなる問題があり、それにより原告のいかなる権利利益が侵害されたのかを具体的に主張しない」。

イ 判示の違法性

 前記第2、1(5)ア、イ、ウ、エ、オに明示された主張及び本人尋問における控訴人の供述(本人調書、20頁)につき全く検討することなく、「各種委員会の長の選任過程にいかなる問題があり、それにより原告のいかなる権利利益が侵害されたのかを具体的に主張しない」とする上記判示の認定判断には、判断遺脱、審理不尽、理由不備の違法がある。

(2)大学の自治について

ア 原判決の判示

「大学における学問の自由(憲法23条)を保障するために、伝統的に大学の自治が認められており、この自治は、特に大学の教授その他の研究者の人事に関して認められ、大学の学長をはじめとする役職者は大学の自主的判断に基づいて選任されるべきものと解される。したがって、大学における役職者の選任の当否のごとき問題は、それが一般市民社会の法秩序と直接の関係を有するものであることを是認するに足りる特段の事情のない限り、純然たる大学内部の問題として大学の自主的、自律的な判断に委ねられるべきものであって、裁判所の司法審査の対象にならないものと解するのが相当である(最高裁判所昭和31年(あ)第2973号同38年5月22日大法廷判決 刑集17巻4号370頁、同裁判所昭和46年(行ツ)第53号同52年3月15日第三小法廷判決 民集31巻2号280頁各参照)」。「そうすると、原告の上記主張は、基本的に裁判所の司法審査の対象とならない大学内部の問題についての不満を述べるものにすぎず、原告が各種委員会の長に選任されないことが一般市民社会の法秩序と直接の関係を有するものであることを是認するに足りる特段の事情があるとも認められないから、原告の上記主張は、主張自体失当であるといわざるを得ない」。

イ 判示の違法性

(ア)上記判示は、最高裁判所昭和31年(あ)第2973号同38年5月22日大法廷判決刑集17巻4号370頁を援用するが、当該判例は、実社会の政治的社会的活動と認められる学生の集会は大学の自治を享受しないものであり、警察の大学キャンパス内への立入りを違法とみなすことはできない、という判断を示すものであり、当該判例で扱われた特殊事案を「一般市民社会の法秩序と直接の関係を有するもの」と余りに曖昧に一般化し拡大解釈すること自体が極めて不正確なものである上、「一般市民社会の法秩序と直接の関係を有するもの」以外のものとなれば、実社会の政治的社会的活動以外の大学におけるすべての活動がそこに包摂されてしまうことになることから、上記判示による当該判例の援用は、結局何も言わないに等しい無意味かつ不合理であると同時に全く不必要なものであり、失当であると言うほかない。

(イ)「一般市民社会の法秩序と直接の関係を有するもの」以外の「大学内部の問題」は「裁判所の司法審査の対象にならない」という判示の判断は、事実に全く反する不合理かつ無意味な判断であり、虚言に等しいものであるとしか言いようがない。当該判示は、「大学における役職者の選任」に関するハラスメントは一切「裁判所の司法審査の対象にならない」と裁判官が宣言しているに等しく、被控訴人東洋大学に加担してのこのような虚言は、公立中性を踏みにじり、国民の裁判官と裁判所への信頼を根本的に損ねるものであり、当該判示には、憲法違反及び裁判所法49条違反があると言わざるを得ない。

(ウ)前記第4、2(4)イに明示したように、たとえ大学の自治を認めるとしても、大学における役職者の選任が何らの合理的な理由と社会相当性を有さぬものであれば、裁量の逸脱・濫用があるとみなすべきであり、その場合、当該選任行為が裁判所の司法審査の対象となるべきであることは明白である。したがって、憲法第23条を援用し、裁量の逸脱・濫用という特段の事情につき全く考慮しないまま、大学における役職者の選任が裁判所の司法審査の対象とならないと判断し、控訴人の主張を排斥した当該判示の審理判断には、経験則違反の違法及び法令の解釈・適用の違法がある。

(3)本件行為5の不法行為性

ア 原判決の判示

「そうすると、原告の上記主張は、基本的に裁判所の司法審査の対象とならない大学内部の問題についての不満を述べるものにすぎず、原告が各種委員会の長に選任されないことが一般市民社会の法秩序と直接の関係を有するものであることを是認するに足りる特段の事情があるとも認められないから、原告の上記主張は、主張自体失当であるといわざるを得ない」。

イ 判示の違法性

(ア)法学部のほとんどすべての専任教員が「長」のつく何らかの役職を経験している中、職務上の地位・権限を逸脱・濫用し、控訴人にだけ20年以上も何らの役職にもつかせないという行為は、社会通念に照らし、組織のあり方に関する通常人の常識からすれば、合理性を欠き、控訴人に対する仲間外しや差別を結論せざるを得ないものであり、許容される範囲を大きく超えるものであると言うべきであり、社会通念上許されない社会的相当性を欠いたものであるというほかない。

(イ)当該行為は、通常業務の範囲内では起こり得ないものであり、何ら業務上の合理性及び必要性を有さないものである。しかも当該行為の継続期間が社会通念に照らして許容される範囲を超えるものであり、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものであることは明白である。

(ウ)当該行為は、その継続期間の長さからしても偶然のものとはみなされ得ず、控訴人の人格及び名誉感情を傷つけると同時に、控訴人を法学部内において軽視されるべき位置に20年以上の長きにわたって置き続けることによって控訴人の孤立状態を激化させ、継続的な圧力を長期間にわたり控訴人に加え続けることにより、控訴人に精神的負担及び精神的苦痛を与え続けることを主眼とした不当な目的によるものである。

(エ)上記(ア)(イ)(ウ)により、本件行為5が不法行為を構成することは明白である。

(オ)上記(ア)(イ)(ウ)(エ)により、判決に影響を及ぼすことが明らかな控訴人の主張につき全く審理判断することなく、控訴人の主張を排斥した原審の当該判示の判断には、判断遺脱、審理不尽、理由不備の違法及び法令の解釈・適用の違法がある。

6 本件行為6

(1)審査結果報告書における控訴人の見解の扱い

ア 原判決の判示

「原告は、自らの所見が反映されてない旨主張するが、原告もフランス語担当の非常勤講師として***が適任であるとの意見を有していたことは認めているところ、本件報告書には、同人の研究についての業績評価や、資格審査委員会の所見として同人が法学部のフランス語非常勤講師として十分な見識と能力を持った人物であると評価できること等の原告の意見に沿った内容も記載されているのであって、法学部長が、原告の査読結果やフランス文学者としての見識等をことさら反映させなかったと認めるに足りる証拠もない。

イ 判示の違法性

(ア)判決に影響を及ぼすことが明らかな、前記第2、1(6)ア、イ、ウに明示された主張、第3、2(6)に明示された事実及び本人尋問における控訴人の供述(本人調書、21頁)につき全く検討することなく、控訴人が「フランス語担当の非常勤講師として***が適任であるとの意見を有していたこと」のみをして、控訴人の主張を排斥する上記判示の審理判断には、判断遺脱、審理不尽、理由不備の違法がある。

(イ)非常勤講師採用審査にあたって、控訴人を主査にしたのであれば、主査に主要役割を副査に副次的役割を負わせ、副査の見解を審査結果報告書に反映させ掲載したのであれば、主査についてはより多く反映・掲載するのが、社会通念に照らして組織で通常起こるべきことであり、また、通常業務の範囲内で起こることである。

(ウ)上記(イ)からして、職務上の地位・権限を逸脱・濫用し、主査である控訴人の所見を副査のそれより下位に置いたり、審査結果報告書に全く掲載もせず反映もさせないという行為は、明らかに社会通念に反しており、また、何ら業務上の合理性も必要性も有さず、控訴人に対して、わざわざそのような社会通念に反し、通常業務を逸脱した行為を選択する以上、控訴人のフランス文学者としての経歴と名誉を無視し、控訴人の人格及び名誉を侵害することを通して、控訴人に精神的圧力を加えることを主眼とした不当な目的による行為であると言わざるを得ない。

(エ)当該判示は、控訴人が「フランス語担当の非常勤講師として***が適任であるとの意見を有していた」という事実のみを考慮しているが、たとえそうであっても、それとは別に、審査結果報告書の具体的様態及び内容によって控訴人の人格や名誉感情を傷つけ、精神的苦しみを与えることは可能であるし、上記(ウ)にある通り、それが現に起こったことであるから、当該判示の審理判断は失当であるというほかはない。

(オ)当該判示は、控訴人が「フランス語担当の非常勤講師として***が適任であるとの意見を有していた」という事実のみを根拠として、審査結果報告書の具体的様態及び内容については無視し、これを全く検討することなく、上記(ウ)及び(エ)に明示した事情を全く考慮せずに、控訴人の主張を排斥したものであるから、当該判示の審理判断には、判断遺脱、審理不尽、理由不備の違法及び採証法則に反する違法がある。

(2)裁量の逸脱・濫用について

ア 原判決の判示

「しかしながら、本件報告書は、資格審査委員会委員長である法学部長において作成し、教授会の審議を経て被告(理事会)に報告されるものであるから、その報告書については法学部長の責任において取りまとめられるべきものである。」

イ 判示の違法性

 前記第4、2(4)イに明示したように、大学の自治及び教授会の自治に配慮すべきであるにしても、社会通念の範囲及び通常業務の範囲を超えて、控訴人に精神的圧力及び苦しみを与えるという不当な目的による本件行為6は、何らの合理的な理由も社会相当性も有さぬものであり、そこには明白に裁量の逸脱・濫用があるとみなすべきである。したがって、上記判示は全く失当であり、裁量の逸脱・濫用という特段の事情につき全く考慮しないまま、大学及び教授会の自治を主張する上記判示の判断には、経験則違反の違法及び法令の解釈・適用の違法がある。

(3)本件行為6の不法行為性

ア 原判決の判示

「以上より、被告におけるフランス語教員の資格審査に当たり、被告による原告に対する人格権侵害があったとは認められず、原告の主張には理由がない」。

イ 判示の違法性

(ア)前記(1)イ(ウ)から、本件行為6が不法行為を構成することは疑い得ない。

(イ)(1)イ及び(2)イに明示された諸事情につき一切審理判断することなく、人格権侵害の存在を否定し、控訴人の主張を排斥した当該判示の審理判断には、判断遺脱、審理不尽、理由不備の違法、採証法則に反する違法に加えて、法令の解釈・適用の違法がある。

7 本件行為7

(1)

本件行為7の不法行為性

ア 原判決の判示

「原告は、被告が、原告に面接を担当させず、日本語試験の採点を担当させたことが、過小な仕事をさせ、仲間外しをしていたものである旨主張するが、原告が担当していた留学生日本語試験の採点が過少な業務であると認めるに足りる証拠はないし、仲間外しの意図があったことをうかがわせる証拠もないのであって、原告の上記主張は前記認定を左右するものではない。

以上より、原告の主張には理由がない」。

イ 判示の違法性

(ア)上記判示は、控訴人の主張を「過小な仕事をさせ、仲間外しをしていた」ことに不当に限定しており、判決に影響を及ぼすことが明らかである、前記第2、1(7)ア、イ、ウ、エに明示された主張及び前記第3、2(7)ア、イ、ウ、エに明示された事実につき全く審理判断しないまま、控訴人の主張を排斥していることから、上記判示には、判断遺脱、審理不尽、理由不備の違法がある。

(イ)前記第3、2(7)ア、イ、ウに明示された状況で、職務上の地位・権限を逸脱・濫用し、ほぼ10年連続で留学生日本語試験採点の仕事を東洋大学で控訴人のみに強要する行為は、10年連続という期間が社会通念に照らして許容される範囲を超えるものであることに加え、何ら業務上の合理性及び必要性がなく、控訴人を人間関係から切り離しつつ控訴人を10年間という長きにわたって当該業務のみに縛り付けることによって、控訴人に屈辱感を味合わせ、控訴人の人格や名誉を侵害し、控訴人に継続的圧力を加え続けることによって、控訴人に大きな精神的苦痛を感じさせることを主眼とした不当な目的によるものと考えるほかはない。

(ウ)原判決は、「原告が担当していた留学生日本語試験の採点が過少な業務であると認めるに足りる証拠はない」と判示するが、控訴人が弁論において提示した、当該試験が日本語能力の不完全な外国人受験生によるひらがなの解答を採点する業務である事実から、当該試験業務が過少な労働である事実は容易に推認されるところであるから、当該判示は失当である。

(エ)原判決は「仲間外しの意図があったことをうかがわせる証拠もない」と判示するが、「仲間外しの意図があったこと」は、被控訴人が、東洋大学でただ一人控訴人のみに、ほぼ10年連続で他の入試業務をほとんどさせず日本人であれば誰でもできる留学生日本語試験採点を強要した事実、及び8、9年間にわたって教授会資料に載る10月・11月推薦入試出向教員一覧に控訴人の名前を差別する形に載せた事実から容易に推認されるものである上、控訴人を馬鹿にした職員の態度についての控訴人の供述が証拠としてある以上(控訴人本人調書、7頁)、当該判示は失当である。

(オ)上記(ウ)(エ)から、当該判示の審理判断には、判断遺脱、審理不尽、理由不備の違法に加うるに、経験則違反の違法及び採証法則に反する違法がある。

(カ)上記(イ)から、本件行為7が不法行為を構成することは明白である。

(2)裁量の逸脱・濫用について

ア 原判決の判示

「しかし、そもそも、10月入試の際に、どの教員が留学生日本語試験の採点を担当し、どの教員が面接を担当するかという点は、入試業務における教員間の職務分担の問題であって、各教員の希望を尊重するか、入試等の担当職員に一任して定めるかなどを含めて、職員に対する業務指示の権限を有する被告の裁量に委ねられていると解されるところ、10月入試における原告に対する被告の業務指示が裁量を逸脱するものであったことをうかがわせる事情は何ら認められない」。

イ 判示の違法性

 上記(1)イから、本件行為7が、何らの合理的な理由も社会相当性も有さぬものであることは明らかであり、そこには裁量の逸脱・濫用があるとみなすべきであるから、当該判示は全く失当であり、当該判示の審理判断には、経験則違反の違法及び法令の解釈・適用の違法がある。

8 本件行為8

(1)

本件行為8の不法行為性

ア 原判決の判示

「前記アの認定事実によれば、原告と**及び**との打合せの際に、**が手にしていた原告の研究計画書には赤字で加筆修正がされていたことが認められるが、**が手にしていたのは、原告との打合せ資料として法学部教務課の職員が手元で使用するために、原告の作成した研究 計画書に加筆修正をして準備したものにすぎないと認められる。その後、原告は、最終的に法学部教務課によって体裁が整えられた研究計画書に押印し、提出したのであるから、同研究計画書は原告の意図に合致する形で作成されたといえる」。

イ 判示の違法性

(ア)上記判示は、控訴人が弁論の過程において既に論駁した被控訴人の主張を(準備書面4、13頁)、弁論における当該議論につき何ら審理判断せず採用し、控訴人の主張を排斥したものであり、審理不備、理由不尽、判断遺脱の違法及び自由心証主義違反の違法を犯していると言うほかはない。

(イ)判決に影響を及ぼすことが明らかな、前記第2、1(8)ア、イ、ウ、エ、オに明示された主張につき全く検討することなく、控訴人が「最終的に法学部教務課によって体裁が整えられた研究計画書に押印し、提出した」ことのみをして、控訴人の主張を排斥する上記判示の審理判断には、判断遺脱、審理不尽、理由不備の違法及び経験則違反の違法がある。

(ウ)教員の専門的学問につき何らの見識をも有さない被控訴人法学部教務課職員が、職務上の地位・権限を逸脱・濫用し、フランス文学専門の研究者であり、教授の地位にある控訴人に何ら相談もなく控訴人の原稿を修正した行為、及び目の前にいる控訴人にわざわざ朱の入った原稿を見えるようにしておきながら、控訴人に全く相談することなく控訴人の原稿の修正点についての検討を続行しようとした行為は、いずれも控訴人も交えて検討するのが社会通念からして、組織運営の常識として、相当であることから、社会通念に照らして極めて異常であり、通常人の許容する範囲を超えている。

(エ)上記行為は、控訴人も交えて検討するのが大学業務において通常のことであることから、通常の業務範囲を超えており、何ら業務上の合理性及び必要性を有するものではない。

(オ)当該行為のいずれにおいても、控訴人に相談するという、社会通念からしても、通常業務のあり方からしても、相当である選択肢を被控訴人法学部教務課職員が敢えて採らず、わざわざ社会通念からしても通常業務のあり方からしても相当でない当該行為を選択したという事実から、当該行為が、控訴人を無視し、控訴人の教授としての名誉を踏みにじることで、控訴人が法学部内で長期にわたって仲間外しされた極めて弱い立場に置かれていることを強調することによって控訴人の人格と名誉感情を侵害し、控訴人に精神的圧力を加えることを通して、精神的苦痛を与えることを主眼とした不当な目的によるものである事実が推認される。また、法学部教務課職員が社会通念及び通常の業務範囲の許容し得る範囲を大きく超えて、当該行為に及ぶことが可能であり、当該行為を可能にする状況が法学部にあったという事実から、控訴人を仲間外しし、孤立化させ、控訴人に有形無形の継続的圧力を加えることが法学部内で常態化していたことも確認される。

(カ)上記(イ)(ウ)(エ)(オ)から、本件行為8は、明白に不法行為を構成するものである。

(キ)当該判示は、控訴人が「その後、原告は、最終的に法学部教務課によって体裁が整えられた研究計画書に押印し、提出した」という事実のみを考慮しているが、控訴人に精神的苦痛を与えることを目的とした本件行為8は、平成30年6月25日の打合せの時点で実行され、完了しているので、上記事実は、不法行為の存在を何ら否定し得るものではなく、当該判示の認定判断は失当であると言うほかはない。

(2)当該判示結論部分の違法性

ア 原判決の判示

「以上によれば、**が原告との打合せの際に、原告の作成した研究計画書に赤字で加筆修正が加えられたものを手にしていたことが、意図的な仲間外しのハラスメントであるとか、原告の研究活動を意図的に軽視し、原告の専門性を踏みにじるものであるなどということはできない。よって、原告の主張には理由がない」。

イ 判示の違法性

 上記(1)イ(オ)から、当該判示は全く失当であり、当該判示の審理判断には、法令の解釈・適用の違法がある。

9 本件行為9

(1)本件行為9の不法行為性

ア 原判決の判示

「しかし、法学部においては、授業 講座等運営予算や海外研修予算については、予算を要求する者が計画書や予算要求書、アンケート等を提出する扱いとされていたものであるところ、原告は、法学部語学委員会に対し予算についての要望書を提出したり、**や**に対し予算の要望についてのメールを送信したりはしていたものの、予算の配分に当たって必要とされる計画書や予算要求書、アンケート等の書類を提出しなかったことが認められる。そうすると、法学部の予算において、フランス語に関し、授業講座運営予算及び海外研修予算の措置がされなかったのは、原告が必要資料等を提出しなかったことが原因であるというべきである」。

イ 判示の違法性

(ア)判決に影響を及ぼすことが明らかな、前記第2、1(9)ア、イ、ウ、エ、オに明示された主張、第3、2(9)ア~クに明示された事実及び本人尋問における控訴人の供述(本人調書、21頁)につき全く検討することなく、控訴人が「予算の配分に当たって必要とされる計画書や予算要求書、アンケート等の書類を提出しなかったこと」のみをして、控訴人の主張を排斥する上記判示の審理判断には、判断遺脱、審理不尽、理由不備の違法及び経験則違反の違法がある。

(イ)職務上の地位・権限を逸脱・濫用し、フランス語予算と他言語予算との間に数10万から100万、200万に至る莫大な格差を10年間も維持するという行為は、社会通念からして、通常の組織であれば、たとえ控訴人が必要資料等を提出していなくても、教授会その他の会議において、あるいは個人的に、フランス語担当専任教員である控訴人に格差を是正する提案をすることが相当であるところ、そのような提案が10年間にわたって一切なかったのであるから、社会通念に照らして通常人の許容し得る範囲を大きく超えるものであり、社会相当性を欠いているというほかはない。

(ウ)当該行為は、明らかに通常業務の範囲を大きく超えており、何ら業務上の合理性及び必要性を有するものではない。

(エ)当該行為は、控訴人を同じ組織に属する法学部成員の一人として他の成員たちが認め、控訴人の法学部成員としての権利を認め、控訴人の人格と名誉を尊重しているのなら、発生し得ないものであることから、控訴人を法学部内で長期間にわたって仲間外しし、人間関係から切り離し、控訴人の人格と名誉を侵害し、控訴人に継続的な精神的圧力をかけることを主眼とした不当な目的によるものであると言うべきである。

(オ)「予算を要求する者が計画書や予算要求書、アンケート等を提出」すべきことが、教授会や語学会議その他の会議で周知されたこともなく、10年間の間にそれが控訴人に伝えられたことも一切なかったという事実は、仲間外しや差別等のパワハラがなく通常に機能している組織では起こり得ないことであることから、社会通念の許容する範囲及び通常の業務範囲を超えており、社会相当性を欠いたものである。

(カ)上記(イ)~(オ)から、本件行為9は、明白に不法行為を構成するものである。

(2)仲間外しの意図について

ア 原判決の判示

「本件全証拠によっても、フランス語専任教員である原告を仲間外しする意図をもって、フランス語に予算を配分しなかったと認めるに足りる証拠はない」。

イ 判示の違法性

(ア)前記(1)イ(イ)~(オ)から、フランス語予算と他言語予算との間に数10万から100万、200万に至る莫大な格差を10年間も維持するという行為から控訴人を仲間外しする意図が存在する事実は当然推認可能であるため、上記判示は全く失当であり、経験則違反の違法を犯していると言うほかはない。

(イ)被控訴人は、10年以上も続く予算格差を是正する試みを全くせず、そればかりか、海外研修に専任教員の付き添いを急遽義務付けてフランス語海外研修実現を困難にしたり、予算格差を是正するためにフランス語予算を増やして欲しいという控訴人の度重なる訴えを拒否あるいは無視し、「2022年度法学部予算執行要領」によって教材費によるDVD購入を禁じるなど、悪意をもって予算格差を維持あるいは拡大することを図った。(甲56)

(ウ)上記(ア)(イ)から、東洋大学法学部の控訴人に対する仲間外しの意図が、弁論において提示された諸事実によって推認され、また証拠によって確定されることから、当該判示は全く失当であり、当該判示には、経験則違反の違法に加え、採証法則に反する違法がある。

(3)当該判示結論部分の違法性

ア 原判決の判示

「以上によれば、法学部の予算配分が、フランス語に対する劣遇の意図や原告の人間関係を損なう目的をもってされたということはできないのであって、この点に関する原告の主張には理由がない」。

イ 判示の違法性

 前記(1)イ(カ)及び(2)から、上記判示は全く失当であり、法令の解釈・適用の違法を犯していると言うほかはない。

10 「小括」について

(1)本件各行為の不法行為性

ア 原判決の判示

「以上によれば、原告の主張する本件各行為については、いずれも、当該各行為があったと認められないか、行為があったと認められるものについても、不法行為の主張としては主張自体失当である、ないしは原告の人格権を違法に侵害するものとは認められないものであり、いずれにしろ、被告又は被告の教職員による原告に対する不法行為があったものとは認められない」。

イ 判示の違法性

 前記第2章第2、第3,第4、1~9から、本件各行為に関して、判決に影響を及ぼすことが明らかな控訴人の多数の主張及び事実につき全く審理判断しないまま、当該行為の存在及び不法行為ないし人格権侵害の存在を否定し、控訴人の主張を排斥する上記判示の判断には、判断遺脱、審理不尽、理由不備の違法及び法令の解釈・適用の違法があることは明白である。

(2)大規模な組織性と長期にわたる継続性

ア 原判決の判示

 「なお、原告は、本件各行為のほかにも、法学部においては、原告に対するさまざまな嫌がらせ(ハラスメント)が行われており、これらの行為及び本件各行為は、原告にハラスメントを行う法学部を大学全体が支援する形で行われている旨主張し、陳述書(甲80)において、本件各行為は個々の例を個別に見ると、独立した個人が勝手にやっているように見えるが、実はそうではなく、被告のありとあらゆる部署の構成員が一致団結して、まるでそれが組織の目的であるかのように原告を排除迫害しようとしている旨を述べる。しかしながら、本件全証拠を検討しても原告の上記陳述を裏付ける証拠は見当たらないし、本件各行為を総体としてみても、原告に対する何らかの権利侵害を観念することは無理である」。

イ 判示の違法性

(ア)上記判示は、前記第2、1(10)(11)に明示されたごとく、原審弁論において控訴人によって「組織的ハラスメントの背景事情として」(「第3回弁論手続調書」)主張され(準備書面5、30頁~49頁)、陳述書においても主張された(陳述書、9頁~12頁)「付随的ハラスメント」に関わる控訴人のすべての主張につき、及び控訴人によって訴状(3頁、16~17頁)、陳述書、控訴人本人調書(とりわけ12~13頁)において提出された、被控訴人東洋大学によるパワハラの長期にわたる継続性と大規模な組織性に関わる控訴人のすべての主張につき、全く審理判断しないまま、本件パワハラ総体が被控訴人東洋大学全学を挙げての大規模な組織的パワハラであることを否定し、控訴人の主張を排斥している。

(イ)上記判示は、前記第3、2(10)(11)に明示されたごとく、被控訴人東洋大学による控訴人へのパワハラが、法学部のみならず**学長始め東洋大学全学の関わる極めて大規模なものである事実についても、当該事実を裏付ける証拠についても全く審理判断することなく、本件パワハラ総体の大規模な組織性についての控訴人の陳述を裏付ける証拠は見当たらないとして、本件パワハラ総体が被控訴人東洋大学全学を挙げての大規模な組織的パワハラであることを否定し、控訴人の主張を排斥している。

(ウ)控訴人が原審弁論及び陳述書において「付随的ハラスメント」として主張した各行為について、法学部だけではなく、**学長、経理課、高等教育推進支援らに加えて、全学部の代表者を集める学部長会議もまた「付随的ハラスメント」とされた各行為に加担している事実から、また、原審弁論において、被控訴人東洋大学として、数多くの虚言を吐き、控訴人の経歴と既往症につき「不知」とするなど、被控訴人東洋大学が弁論において、明白に法学部に加担する陳述態度を示している事実から、総体としての本件パワハラが東洋大学全学が組織するものであるという事実が容易に推認されることから、及び上記(ア)(イ)から、総体としての本件パワハラの大規模な組織性についての控訴人の陳述を裏付ける証拠は見当たらないとして、総体としての本件パワハラが被控訴人東洋大学全学を挙げての大規模な組織的パワハラであることを否定し、控訴人の主張を排斥した当該判示の審理判断には、判断遺脱、審理不尽、理由不備の違法、採証法則に反する違法、経験則違反の違法、自由心証主義違反の違法、法令の解釈・適用の違法がある。

(3)損害賠償請求について

ア 原判決の判示

「以上より、原告の不法行為及び使用者責任に基づく損害賠償請求は、その余の点について判断するまでもなく理由がない」。

イ 判示の違法性

(ア)前記第2章第2、第3、第4、1~9から、本件各行為に関して、判決に影響を及ぼすことが明らかな控訴人の多数の主張及び事実につき全く審理判断しないまま、不法行為の存在を否定し、控訴人の損害賠償請求を排斥する上記判示の判断には、判断遺脱、審理不尽、理由不備の違法及び法令の解釈・適用の違法がある。

(イ)本件各行為の不法行為性についてはもとより、総体としての本件パワハラの、社会通念に照らして通常人の許容し得る範囲を大きく超え、常軌を逸しているとすら言える長期にわたる継続性と大規模な組織性は、控訴人の人格と名誉の侵害による極めて大きな精神的圧力を控訴人に20年以上の長きにわたって加え続けるものといえ、本件各行為による精神的不利益の程度が、総体としての本件パワハラの長期にわたる継続性と大規模な組織性によってさらに増幅されることから、損害額500万円が相当である。

11 安全配慮義務違反について

(1)安全配慮義務違反の存在

ア 原判決の判示

「原告は、本件各行為がそれ自体被告の安全配慮義務違反である旨主張するが、いずれも当該各行為があったと認められないか、行為があったと認められるものについても、不法行為の主張としては主張自体失当である、ないしは原告の人格権を違法に侵害するものとは認められないものであることは前記1認定説示のとおりである。そうであるとすれば、被告が、原告の雇用契約上の地位に基づいて原告の生命、身体等の安全に配慮する義務を負っているとしても、被告による義務違反の事実を認めることはできないというべきである」。

イ 判示の違法性

(ア)前記第2章第2、第3,第4、1~9から、本件各行為に関して、判決に影響を及ぼすことが明らかな控訴人の多数の主張及び事実につき全く審理判断しないまま、当該行為の存在及び不法行為ないし人格権侵害の存在が認められないとして、安全配慮義務違反の存在を否定し、控訴人の主張を排斥する上記判示の判断には、判断遺脱、審理不尽、理由不備の違法及び法令の解釈・適用の違法があることは明白である。

(イ)前記第2章第2、第3,第4、1~9から、被控訴人東洋大学による控訴人に対する安全義務違反が存在することは疑い得ない。

(2)被控訴人が「学校法人東洋大学ハラスメントの防止等に関する規程」を踏まえた対応を行っていなかったこと

ア 原判決の判示

「また、原告は、雇用主である被告は、原告に対するパワーハラスメントに適切に対処して就業しやすい環境を構築する安全配慮義務を負うにもかかわらず、これを怠った旨主張する。しかし、前記前提事実によれば、原告が本件訴えの提起前に外部機関にハラスメントの申告をしたところ、被告のハラスメント相談員が事情聴取を行い、その結果を踏まえ被告においてハラスメント調査苦情処理委員会における調査を開始するなど、被告においては本件規程を踏まえた対応を行っていたものと認められるところであり、原告の上記主張にも理由がない。

以上より、安全配慮義務違反を理由とする請求についても、その余の点について判断するまでもなく理由がない。」

イ 判示の違法性

(ア)前記第3、1(1)イ及び(2)に明示された諸事実につき全く検討することなく、被控訴人が「学校法人東洋大学ハラスメントの防止等に関する規程」を踏まえた対応を行っていたとし、被控訴人による安全配慮義務違反の存在を否定し、控訴人の主張を排斥する上記判示の認定判断には、判断遺脱、審理不尽、理由不備の違法がある。

(イ)令和3年4月の人事異動で、控訴人にハラスメントを繰り返している加害者である当時法学部長の****教授がハラスメント防止対策委員となり、しかも、令和3年9月のハラスメント調査・苦情処理委員会第一回事情聴取において、上記規定に反し、ハラスメント調査・苦情処理委員会が**が委員を務めるハラスメント防止対策委員から独立していない事実が判明したため、令和3年10月、****がハラスメント調査苦情処理委員会に関わっている状態でハラスメント調査苦情処理委員会の公正な運営が不可能であることは明らかであるという理由により、控訴人が、これ以上ヒアリングの日程は決めないでけっこうであると**人事部長に告げた、という事実がある。(甲85、甲86、甲87の1、2、甲88、甲89の1、2)

(ウ)上記事実から、被控訴人が「学校法人東洋大学ハラスメントの防止等に関する規程」を踏まえた対応を行っていなかったことは明白であり、被控訴人東洋大学の控訴人に対する安全配慮義務違反が存在することは疑い得ない。

結語

 上記第1章及び第2章から明白であるように、原審は、訴訟手続き上においても、判決においても、多数の法令違反、違法を犯しており、被控訴人東洋大学に加担したとしか考えられない法令違反も認められることから、原審は、裁判の公正中立を危機に瀕せしめ、国民の裁判官及び裁判所への信頼を大きく損なうものであり、原判決が破棄を免れないことは明白であり、事件の第一審への差し戻しが不可避であることは疑い得ない。

第3章 訴え変更申立書

頭書事件(前記1頁)について、控訴人は、下記の通り請求の原因を追加的に変更する。

第1 請求の原因の追加

控訴人は、以下7件の請求の原因を追加する。

1.第一審弁論において「付随的ハラスメント」とされた4件の行為

(1)研究費の一部の不払い

(2)不要な診断書の要求

(3)授業評価アンケート結果改竄

(4)令和5年に控訴人に授業を4コマしか担当させなかった行為

2.令和6年に控訴人に授業を全く担当させなかった行為他、合計3件の行為

(1)「2024年度の授業担当に関する御連絡」の作成とその教授会承認

(2)令和6年に控訴人に授業を全く担当させなかった行為

(3)*****の法学部フランス語専任教員としての雇用

第2 変更の理由

1.第一審弁論において「付随的ハラスメント」とされた4件の行為

 当該行為4件のすべてが、令和3年の控訴人による学内機関へのパワハラ訴え以後のものであり、行為の発生から時が経っていない現在進行形の最新の案件であり、うち2件は、提訴時には発生していなかったものであることから、当該行為4件は、提訴時に請求の原因とされていなかったものであるが、当該行為4件のすべてが、控訴人による学内機関へのパワハラ訴え以後のものであることにより、本件行為1~9より明確なパワハラ性を帯びていることを鑑みると同時に、当該行為4件のすべてが被控訴人東洋大学法学部を超えたより大規模なパワハラ行為と目されるものであることから、また非常に最近の行為であることにより、平成14年より継続する総体としての本件行為の社会通念の許容範囲を超えた長期にわたる継続性を証すものであることから、第一審の弁論の全過程及び判決において、総体としての本件行為の法学部に限定され得ない大規模な組織性及び長期にわたる継続性が無視できぬ重要性を帯びて来たことを鑑み、また、当該行為4件についての控訴人の主張は、第一審の弁論及び陳述書において、本件行為1~9と関わらせる形で、ほぼすべてなされていることから、当該行為4件と本件行為1~9との間に請求の基礎の同一性があり、訴訟手続きを遅延させる恐れもなく、被控訴人への何らの不利益をも発生させるものでないこと、及び別訴提起による審理の重複を避けることが合理的であることを考慮に入れ、当該行為4件を請求の原因として追加するものである。

(1)研究費の一部の不払い

 控訴人は、弁論(準備書面4、15頁、準備書面5、35~37頁)及び陳述書(9~10頁)において、当該行為がパワハラであり、人格権侵害の不法行為であることを主張している。

(2)不要な診断書の要求

控訴人は、弁論(準備書面5、37~40頁)及び陳述書(10~12頁)において、当該行為がパワハラであり、人格権侵害の不法行為であることを主張している。

(3)授業評価アンケート結果改竄

控訴人は、弁論(準備書面5、40~42頁)及び陳述書(12頁)において、当該行為がパワハラであり、人格権侵害の不法行為であることを主張している。

(4)令和5年に控訴人に授業を4コマしか担当させなかった行為

控訴人は、弁論(準備書面4、15頁、準備書面5、30~35頁)及び陳述書(12頁)において、当該行為がパワハラであり、人格権侵害の不法行為であることを主張している。

(5)加害者の不法行為性

 上記4件の行為のうち、(1)及び(2)については、各行為における加害者が控訴人の人格権を侵害した不法行為でもある。加害者は、(1)については、****法学部教務課長、(2)については、****学長及び****前法学部長である。

2.令和6年に控訴人に授業を全く担当させなかった行為等合計3件の行為

 当該行為は、令和6年3月に被控訴人東洋大学法学部教授会で決定されたものであり、当該行為が極めて明白なパワハラ的性格を有し、本件行為1~9の不法行為性を遡行的に判定するためにも有益であることから、また、当該行為と本件行為1~9及び上記1(4)の行為との間に類似性があり、当該行為がこれら行為の延長上に位置すると言えることから、当該行為と本件行為1~9との間に請求の基礎の同一性があり、訴訟手続きを遅延させる恐れもなく、被控訴人への何らの不利益をも発生させるものでないこと鑑み、別訴提起による審理の重複を避けることが合理的であることを考慮に入れ、当該行為及びそれに関わる行為、合計3件を請求の原因として追加するものである。

(1)当該行為3件の概略

 被控訴人東洋大学は、令和6年度の授業担当を全くさせないことを同年2月14日の教授会で、その理由を提出しつつ決定し、実際に控訴人に全く授業をさせていない。被控訴人東洋大学は、また、深田孝太朗を専任講師(助教)として雇用し、控訴人がかつてやっていた授業を担当させている。(甲101)

(2)「2024年度の授業担当に関する御連絡」の作成とその教授会承認

 被控訴人東洋大学は、令和6年2月14日付の「2024年度の授業担当に関する御連絡」と題された文書を控訴人に郵送した。この文書には、法学部教授会が2024年2月14日の教授会において、控訴人に「2024年度の授業担当を認めないことを決定しました」とあり、以下の3点の「理由」が付されている。理由1、「大学教員としての識見を欠く言動が見られること」、理由2、「不適切な授業運営が認められること」、理由3、「本学教授会に出席せず、教育課程編成作業に係る法学部教授会決定に従わなかったこと」。(甲93、甲94)

ア 当該理由1について

 上記(2)に引用された理由1は、以下の3点の主張から成っている。

(ア)当該理由1の主張1について

(ア) 被控訴人は、「貴殿が、SNS上(X)で、下記のとおり、本学学生、本学に対し、行き過ぎた誹謗中傷を行った」と主張し、控訴人のXへの3点の投稿を例として引用している。(甲94)

(イ) 引用された控訴人の3点の投稿は、被控訴人東洋大学のハラスメント及びハラスメントの隠蔽あるいはハラスメントへの加担についての批判であり、事実に基づき、また公益を有するものであり、何ら誹謗中傷には当たらないことから、被控訴人の主張は全く失当である。

(ウ) 「いやならさっさと辞めればいいじゃん」、「信憑性のない戯言並べてあーだこーだ言ってんじゃねえ」という引用部分については、東洋大学法学部学生と自称する者の控訴人に対するX上の暴言投稿を控訴人が自身の投稿中に引用したものであり、控訴人自身の文章ではない。

(エ) 「あああ」というアカウントを用いる自称学生のX上の投稿2点を以下に引用する。

引用1「元々あんたのフラ語の受講生だけど学生内で煙たがられてんのはあんただよ 信憑性のない戯言並べてあーだこーだ言ってんじゃねえ 嫌ならさっさと辞めりゃいいじゃん いい歳したおっさんが見るに堪えないことばっかしてんじゃねーよ」。(甲95)

引用2「福田さんの件大学の方に通う学生からして見るに堪えない投稿ばかりを日々繰り返し、看過されてることをいいことに大学の寛容さに甘え、大学の名誉を毀損するような教員は見るに堪えません。大学や他の教員に不満があるんだとしても大人な対応をしてください」。(甲96)

(オ) 上記(エ)の引用1は、明らかに控訴人を侮辱する暴言であり、誹謗中傷である。また、引用1と引用2との間の文体の差が甚だしく、引用2については、明らかに学生のSNS投稿の文体とは思われないことから、引用2に関しては、東洋大学法学部教職員の関与の可能性も排除されない。

(カ) 当該人物は、控訴人の「「福田教授以外気持ち悪いから教員辞めて」、「東洋大のまともな法学部教授は福田だけ」、東洋大学法学部学生の声です!」という投稿に反応して、「これが事実なのか虚言なのか俺が証明してやるよ」と投稿し、法学部学生対象としながら、実は誰でも回答できる公開アンケートを実施した。

(キ) 上記(カ)の行為は、明らかに控訴人の名誉を毀損する侮辱的行為である。

(ク) 上記(イ)に加えて、上記(エ)~(キ)により、被控訴人の主張は、「本学学生」と言いながら、それが実は学生かどうかも全く確定されていない上に、控訴人が当該人物により公開の形で誹謗中傷され侮辱されている事実を全く考慮せず、無視している点で、甚だ不合理なものであり、社会通念の許容範囲を超え、通常業務の範囲を逸脱するものと言えることから、被控訴人の主張こそが控訴人への誹謗中傷であると考えるべきであり、主張として失当である。

(イ)当該理由1の主張2について

(ア) 被控訴人は、「貴殿が、Twitter上で、大学の名誉を毀損する以下の投稿を行い、入学検討中の者らに不安を生じさせたこと」と主張し、控訴人のXへの2点の投稿を例として引用している。(甲94)

(イ) 引用された控訴人の2点の投稿は、被控訴人東洋大学のハラスメント及びハラスメントへの対応のなさについての全く正当な批判であり、事実に基づき、また公益を有するものであり、何ら大学の名誉を毀損するものではないことから、被控訴人の主張は全く失当である。

(ウ)当該理由1の主張3について

(ア) 被控訴人は、「貴殿は、文書・動画により、本学教職員、本法人・本学について、誹謗中傷をした」と主張している。(甲94)

(イ) 「文書」については、事実無根であり、意味不明である。動画については、被控訴人東洋大学のハラスメント及びハラスメント隠蔽についての全く正当な批判であり、事実に基づき、また公益を有するものであり、何ら誹謗中傷を構成するものではないことから、被控訴人の主張は全く失当である。

イ 当該理由2について

 上記(2)に引用された理由2は、以下の2点の主張から成っている。

(ア)当該理由2の主張1について

(ア) 被控訴人は、控訴人が1年不合格の学生につき2年次のフランス語を認めず、シラバス修正をしなかった結果、「履修が認められなかった学生を救済するために急遽新たに増コースが必要となった」と主張し、控訴人に不適切な授業運営があったとしている。

(イ) ****法学部長が、履修要覧の規定につき控訴人に知らせた3月2日のメールにおいて、控訴人が履修を認めなかった学生に別途開講する授業を履修させると伝えている事実から、規定につき知らせた事実と別途開講の授業を履修させる決定は同時であり、両者の間に因果関係はないため、上記(ア)の被控訴人の主張は虚言であると考えることが相当である。(甲97)

(ウ) そもそも、控訴人の要求が控訴人の勘違いにより規定に反していたのであれば、合理的な解決策は、控訴人を説得し、控訴人に当該学生たちの履修を認めさせることのみであることから、規定に反する控訴人の要求に従ったふりをして、控訴人が要求もしていない増コースを、控訴人に何ら相談することもなく決定するという解決策は、全く不合理なものであり、社会通念からしても通常ではなく、通常業務の範囲を逸脱し、何ら業務上の合理性及び必要性を有さぬものであり、全く社会相当性を欠いた不当なものである。そのような不当な解決策を選んだのは、全く多田法学部長始め法学部の責任であり、控訴人の授業運営にその責任を帰するのは責任転嫁というほかはなく、被控訴人の主張は全く失当である。(甲98)

(イ)当該理由2の主張2について

(ア) 被控訴人は、「2023年度春学期に貴殿の授業を履修登録した者から、貴殿の初回授業内で、授業とは関連のない内容を延々と話したことを理由として、履修変更の申出があった」と主張し、控訴人に不適切な授業運営があったとしている。

(イ) そもそも、上記(ア)の主張にあるような一件が発生したときには、控訴人に確認することが通常業務及び社会通念の許容するところであるところ、控訴人に情報の真偽の確認もせず、公式の授業評価アンケートを参照することもしないまま、授業担当を認めない理由として教授会で審議及び承認する行為は、通常業務及び社会通念の許容する範囲を超える不合理なものであり、告訴人の人格や名誉を侵害し、それによって告訴人の授業担当を認めないことを正当化するという不当な目的によるものである。

(ウ) 告訴人は、春学期最初の授業でオリエンテーションをした後にアルファべと挨拶会話の聞き取りと会話をする。「授業とは関連のない内容を延々と話」すことはあり得ない。そもそも1時間半の授業内で「延々と」という主観的な言葉で述べられる事態が具体的にどの程度の時間的長さを指示するものであるのかも不確定であり、出所もわからず、上記(ア)の主張が援用する感想は、誹謗中傷と言うほかはない。

(エ) 学生による授業評価アンケートは、学期末に実施するもので、当然ほぼすべての授業に出席した者が回答するものであることから、初回だけで出席をやめた学生の噂に属するに過ぎない意見と正式の授業評価アンケートに記載された意見とでは、後者の意見がより重視されるべきことが、通常業務及び社会通念からして相当であるところ、上記(ア)の主張は、1回しか授業に出なかった学生の意見のみを取り上げ、これを控訴人の授業担当を認めないことの理由としているのであるから、当該主張は、通常業務及び社会通念の許容する範囲を超えた不合理なものであり、告訴人の人格や名誉を侵害し、それによって告訴人の授業担当を認めないことを正当化するという不当な目的によるものである。

(オ) 被控訴人の上記(ア)の主張とは正反対に、控訴人の令和5年度の授業は、学生による評価の極めて高いものであった。(甲99の1~8、甲100の1~8)1年生クラスの春学期授業評価アンケート結果には、以下のような感想が書かれている。

「分かりやすく、魅力的な授業だったと思う。先生の話が為になる話が多かった」。「単に言語を学ぶだけでなく、フランスの文化や哲学の話も聞くことができ、興味深い講義でした」。「オンラインでこの授業をとってよかったと思います。少人数の授業は自分の中では教室でやるよりも効率が高いと思っています。ある程度自分はフランス語に適性があったと思っています。他の言語をやるよりもフランス語をとって良かったと思っています。先生がすごくわかりやすくてよかったです。また自分は先生のYouTube、Twitterをみさせて頂きました。秋学期もこの授業をとりたいと思います」。(甲99の1)「会話を通して文法事項以外にも日常会話で使えそうな表現を学べてよかった」。「フランス語が好きになりました。次学期もよろしくお願いします」。「わかりやすくて面白かったです」。「とてもわかりやすくて面白かったです。後期にまた千と千尋を見たいです」。(甲99の3)

 また、1年生クラスの秋学期授業評価アンケート結果には、以下のような感想が書かれている。

「先生の雑談が聞いていて楽しかった。自分にとってフランス語は難しかったが、勉強するのは楽しかったため、また来年も頑張りたい」。「学びがいのあるよい授業だった」。「とてもわかりやすかった。この1年この授業をとって正解だったと思います。なぜなら気づいたら他の人より自分の実力が高くなっていたからです。また、同時双方向は授業で緊張しなくていいため頭にサラサラ入ってきます」。(甲99の2)「わかりやすい授業でした」。「先生がとても熱心に生徒に対して授業を行なっていてとても魅力のある講義だと感じた。自分自身も新しい知識を身につけることができ、知識の幅が広がったと感じた」。「分かりやすくとても面白い授業でした。問題の解説の際、たくさんの例を出してくださり、旅行などでも使うような文を出してくださり、フランス語が身についたと実感することができる授業でした」。「一年間ありがとうございました。自分は語学授業における発音や会話があまり得意ではなかったのでオンデマンドの授業を通してフランス語を理解するだけでなく会話にすこしつなげられてよかったです」。(甲99の4)

(カ) 上記 (オ)のごとき学生の高評価は全く考慮に入れず、何らの根拠ももたない誹謗中傷に属する情報だけを取り上げて、控訴人に不適切な授業運営が認められるとする被控訴人の上記(ア)の主張は、上記(エ)にある通り、控訴人の人格と名誉を侵害し、控訴人に大きな精神的圧力を加えることを主眼とした不当な目的によるものであると言うほかはない。(甲99の1~8、甲100の1~8)

ウ 当該理由3について

(ア)控訴人は、3点目の理由として、「本学教授会に出席せず、教育課程編成作業に係る法学部教授会決定に従わなかったこと」を挙げ、「貴殿は、2022年度の全ての教授会、2023年度第1回から第13回までの教授会に、委任状を提出することなく欠席し、教育課程編成作業に関与しなかった」と主張している。

(イ)弁論及び陳述書において控訴人が主張しているように、控訴人が平成14年以来20年以上の長きにわたり、被控訴人東洋大学法学部において過酷な仲間外しに継続的にさらされていることから、同様の長きにわたり、法学部教授会において継続的な精神的圧力を加えられて来たことは疑い得ない。とりわけ、控訴人が弁論において主張した通り、「スポーツ」という語を多くの法学部教職員が教授会の場で連呼し、幼い頃深い精神的な傷を負った控訴人を苦しめるという行為が、10数年の間繰り返されていた事実、不平等な語学予算が毎年教授会決定されていた事実、控訴人が訴状及び弁論過程において主張している通り、くも膜下出血の既往症によってストレスにも弱いという事実等に加えて、控訴人の度重なる訴えにもかかわらず、被控訴人が職場環境の改善を全くしないという事実を鑑みれば、控訴人が令和4年以来、教授会に出席しないという行為は、控訴人が自身の命と健康を守るために当然の行為であり、何ら不正なものではない。

(ウ)上記(イ)に明示された諸事情を全く考慮することなく、職務上の地位・権限を逸脱・濫用し、控訴人に教授会出席を強要し、のみならず、控訴人の教授会欠席を非難し、控訴人の令和6年度授業担当を認めない理由とするという行為は、安全配慮義務違反であり、通常の業務範囲を逸脱し、何ら業務上の合理性及び必要性を有さぬものであると同時に、社会通念の許容するところを超えたものであることから、控訴人に継続的な精神的圧力を加えることにより控訴人を精神的に苦しめることを主眼においた不当な目的によるものであると考えるほかはない。

エ 「2024年度の授業担当に関する御連絡」と題された文書の作成及びその教授会承認の不法行為性

(ア)そもそも、控訴人に関して何らかの問題が生じた時に、控訴人に個人的に連絡し、情報を伝えることも、控訴人と話し合うことも全くせず、控訴人を法学部内の人間関係から完全に切り離した上で、いきなり控訴人の授業担当を認めないと通告するという形式的かつ非人間的な対応を選択すること自体が、控訴人を一人の法学部成員として尊重していない証左であり、社会通念に照らしても、組織における通常の常識的判断および対応からかけ離れたものであることから、通常人の許容範囲を大きく超えたものといえ、社会的相当性を欠いている。

(イ)法学部教授会の議題や資料等は、学内ホームページにアップしてあるので、教授会に出席しない控訴人も参照できる状況にある。しかるに、控訴人の授業担当を認めないことが決定された2月14日の教授会の当該議題である「2024年度以降の授業担当について」関連の資料に関しては、例外的に「会場配布」とされており、故意に控訴人が確認できないようにされている。(甲101)

(ウ)控訴人の授業担当と認めないという決定をするに際し、控訴人が教授会に出席できない状況であるのであれば、控訴人に個人的に連絡し、関連資料を参照させ、当該決定に至る経緯を説明するというのが、社会通念に照らして妥当な行為であり、また通常業務の範囲内の行為である。しかるに、上記(イ)からすれば、法学部は、逆に、控訴人が当該決定の経緯につき知ることができないように手を打ったのであるから、関連資料を「会場配布」とし、2月14日の教授会の時点で控訴人自身の授業担当の可否につき控訴人が全く知ることができないようにした行為は、明らかに社会通念の許容する範囲及び通常業務の範囲を大きく超え、何ら業務上の合理性及び必要性を有さぬまま、控訴人が知る権利のある情報を控訴人に拒絶し、控訴人の人格と名誉を侵害することによって控訴人に精神的圧力を加えると同時に、悪意を持って控訴人から授業を奪うことを主眼とした不当な目的によるものであると言える。

(エ)上記ア、イ、ウ、エ(ア)(イ)(ウ)より、「2024年度の授業担当に関する御連絡」と題された文書は、職務上の地位・権限を逸脱・濫用し、社会通念に照らして通常人の許容し得る範囲を超え、通常業務の範囲を超え、業務上の何らの合理性及び必要性をも有さぬまま、また何ら確たる根拠を有さぬまま、控訴人に「大学教員としての識見を欠く言動」、「不適切な授業運営」、教授会への欠席などの否定的評価を不当に帰し、控訴人の業務上の評価及び人格的評価を不当に貶めることによって、控訴人を侮辱し、控訴人の人格と名誉を侵害するとともに、控訴人の授業担当を認めないと結論することにより、控訴人が自身の学問の成果を教授する権利を完全に侵害し、大学教員としての仕事の主要部分を控訴人から奪うことによって、控訴人に精神的圧力を加え、控訴人を精神的に苦しめることを主眼とする不当な目的によって作成されたものであると言わねばならず、加えて、この文書の教授会承認によって、法学部専任教員全員が控訴人を不当に貶める行為に加担し、控訴人に対してさらなる精神的圧力を加えるのであるから、控訴人の精神的苦痛はさらに増大することになり、社会的相当性の範囲を大きく超えていることから、当該文書の作成及びその教授会承認は、不法行為であると言うほかはない。

オ 継続的仲間外しについて

 当該文書を法学部専任教員全員が承認した事実から、法学部専任教員全員が控訴人に敵意を抱き、控訴人を仲間はずししている事実が推認され、この事実から、本件行為1~9もまた、構成員の若干の変化はあるものの、法学部専任教員全員の継続的仲間外しによるものである事実が推認される。

(3)令和6年に控訴人に授業を全く担当させなかった行為の不法行為性

 当該行為は、職務上の地位・権限を逸脱・濫用し、何らの確たる根拠も理由もないまま、授業5コマ担当を原則とする学内規則に大きく違反し、控訴人からすべての授業担当を奪い、控訴人に大学教員としての仕事をさせないものであるから、社会通念上の許容範囲を大きく超え、通常業務の範囲を超え、何ら業務上の合理性及び必要性を有することなく、控訴人の大学教員としての当然の権利を奪い、控訴人の人格及び名誉を侵害し、控訴人に有形・無形の継続的圧力を加えることにより、控訴人に屈辱感を与え、精神的苦しみを与えることを主眼とした不当な目的によるものであり、社会的相当性を全く欠いたものであると言え、明白に不法行為を構成する。

(4)*****の法学部フランス語専任教員としての雇用

ア 当該行為の不法行為性

 当該行為は、法学内にフランス語専任として控訴人がいるにもかかわらず、職務上の地位・権限を大きく逸脱・濫用し、業務上の何らの合理性及び必要性もなく、博士号ももっておらず、控訴人より明らかに業績の劣るフランス語専任教員を新たに雇用し、これにフランス語授業を担当させるものであるから、明らかに通常業務の範囲を大きく逸脱しており、社会通念に照らしても通常人の許容し得る範囲を大きく超えており、控訴人に法学部のフランス語授業を担当させないことにより、控訴人から自身の学問の成果を学生に教授する権利を奪い、控訴人に継続的な精神的圧力を加え、大きな精神的苦しみを与えることを主眼とした不当な目的によるものであることから、社会的相当性を欠いたものであることは明白であり、不法行為を構成する。(甲102,甲103)

イ 当該行為と本件行為1との関連性

 上記アに明記された当該行為の不法行為性を斟酌するに、フランス語履修者減を理由とする本件行為1が、控訴人に精神的苦しみを与えるという不当な目的による不法行為であることが容易に推認される。


以上