東洋大学パワハラと不正裁判を糾弾する会

東洋大学パワハラ裁判訴状

訴 状

                       2022年6月28日

東京地方裁判所 民事部 御中

原告訴訟代理人

弁 護 士   笹   山   尚   人

弁 護 士    本   間   耕   三


   〒************************

原   告   福   田   拓   也


   〒************************

**法律事務所(送達場所)

上記原告訴訟代理人

弁 護 士    笹   山   尚   人

弁 護 士    本   間   耕   三

                電 話 ***********

                 FAX ***********


   〒********************

被   告    学校法人東洋大学

              上記代表者理事長  安  斎     隆


損害賠償請求事件

 訴額      金 円

 貼用印紙額   金 円

請 求 の 趣 旨

1 被告は原告に対し,金550万円及びこれに対する本訴状送達の日の翌日から支払い済みまで年3%の割合による金員を支払え

2 訴訟費用は,被告の負担とする

との判決並びに仮執行宣言を求める。


請 求 の 原 因

第1 事案の概要

本件は、2002年から現在に至るまでの長きにわたって、大学の社会の中で、原告が他の教員と比べて劣位な状況に置かれ、人格的冒涜を受け続けるというハラスメントを受けた原告が、ハラスメント通報によっても事態が改善しないため、法廷の場でハラスメントの違法性とその被害の救済を訴える事案である。

とくに、原告の場合、ハラスメントが持病との関係で、命と健康に関わる問題に発展しかねない状況であるだけに、問題として重大性をはらんでいる。

原告は、本件を通じ、被告の労働環境、安全衛生環境に関する規範意識の低さを告発するとともに、その是正を求め、本件を提起する次第である。

第2 当事者

 1 被告

 被告は,東京都文京区の白山キャンパスなどをもつ東洋大学を始めとする、私立学校を運営する学校法人である。東洋大学は、1887年に井上円了氏によって創設され、現在学生数31、039名、教員772名を要する私立大学である。被告はこのほか、東洋大学京北中学高等学校(東京都文京区)などの附属校を擁している。

 2 原告

 原告は、被告に勤務する専任職員である。

 東洋大学には1999年に文学部教養課程に専任講師として赴任したのが最初である。教養課程解体に伴い翌2000年から法学部所属となった。2013年には、教授に就任した。

第3 原告と被告の労働契約の内容

 1 業務内容

 法学部教授として、講義をはじめとする学生に対する教育活動、自らの研究に関する研究活動、大学教員として求められる事務作業といった内容が業務内容となる。

2021年度の場合、原告が担当している教育内容は以下のとおりであった。

月曜4限:フランス語ⅠA1(春)、フランス語ⅡA1(秋)

月曜5限:フランス語ⅠA2(春)、フランス語ⅡA2(秋)

水曜4限:フランス語ⅠA3(春)、フランス語ⅡA3(秋)

水曜5限:フランス語ⅠA4(春)、フランス語ⅡA4(秋)

金曜4限:フランス語ⅡBA(春)、フランス語ⅡBB(秋)

     フランス語ⅢA(春)、フランス語ⅢB(秋)

     フランス語ⅣA(春)、フランス語ⅣB(秋)

金曜5限:フランス語ⅡAA(春)、フランス語ⅡAB(秋)

*月4,月5,水4、水5は1年生対象、金4は2~4年生対象、金5は主に2年生対象、3・4年生も履修可。

 2 労働時間,休日

 労働時間は,平日は「担当授業、教授会、学生指導その他の教員として必要な事項に関する時間」。

 休日は,日曜、国民の祝日、隔週土曜日及び学院が設定する日である。

 3 賃金

賃金は、給与規程によるが(東洋大学教職員給与規定)、本俸、諸手当、夏季手当及び年末手当、及び退職金で構成される。

(1)本俸、諸手当

  原告の現在の本俸は******円である。

  給与の支給期間は、毎月1日から末日までの分を、当月25日に支給する(時間外勤務手当については翌月の支給とする。)。

(2)賞与

 賞与は、それぞれの基準日現在において教職員が受けるべき本俸、ライフプラン手当及び扶養家族手当の月額の合計額を基礎額とし、次の各号の支給対象期間における教職員の勤務状況に応じて算出した金額とする。

 毎年5月末日と11月末日に支給されている。

 2021年5月の実績では、******円である。

 2021年11月の実績で、******円である。

(3)退職金

退職金は、退職が発生した際、退職金規程によって支給される。

 4 ハラスメント関係

   被告の「東洋大学就業規則」においては、第6条に「教職員は、次の各号に関する行為をしてはならない」とあり、その中に「(7)ハラスメント行為」、と掲げられている。また、第48条には「教職員が、次の各号のいずれかに該当する場合は、別に定める懲戒委員会に諮ったうえ懲戒する」とあり、その中に、「(8)ハラスメント行為があった場合」、とある。

  これを受けた形で、「学校法人東洋大学ハラスメントの防止等に関する規程」が定められており、ハラスメントの定義や発生した場合の対応事項などが定められている。

すなわち、教職員がしてはならない行為として、「パワー・ハラスメント」ほか、のハラスメントの定義が定められ、「パワー・ハラスメント」としては、「本法人の構成員が、就労における権力又はその優越的な地位を利用して、他の構成員の意に反する不適切で不当な言動を行うことにより、就労における不利益又は不快感を与え、個人としての尊厳を不当に傷つけ、就労環境に悪影響を及ぼすこと」と定義されている。そして、被告においては、ハラスメント防止対策委員会とハラスメント相談室、ハラスメント相談員が置かれ、相談室がハラスメントの苦情申し立てがあった場合に防止委員会への報告や解決業務の支援を行うなどを行うこととなっている。また事案ごとにハラスメント調査・苦情処理委員会を創設することができることなども定められている。調査・苦情処理委員会は、事案の調査などを行い、理事長や学校長への報告を行うこととされており、その報告を受けた理事長らは、必要に応じ処分を行うことが出来る旨も定められている。

 5 その余の労働条件

 東洋大学就業規則等による。

第4 ハラスメントの前提事実

 1 法学部の語学講座の構成

 東洋大学法学部では、毎年履修する1年生は、年度によって相違はあるものの、平均して500名ほどである。

東洋大学法学部においては、1,2年生において語学は必修科目あるいは選択必修科目となっており、語学の内、第一外国語として英語、第二外国語として選択した外国語を履修することが必修となっている。

 1年次においては、8科目各1単位(必修科目である英語が春学期1単位、秋学期1単位、選択必修科目である英語が春学期1単位、秋学期1単位、選択必修科目である初修外国語、例えばフランス語が春学期2科目で2単位、秋学期2科目で2単位)、2年次においては2科目各1単位、を履修する。学生一人あたりからみれば、1年次において週に英語は1コマ、もう一つの外国語2コマを履修し、2年次には1年次履修語学のうち1か国語を週1コマ履修する。それで外国語としては合計8単位取得することになる。

 この第2外国語のなかには、履修の選択肢として、ドイツ語・フランス語・中国語がある。

 原告は、このフランス語を担当する教員である。

 教員は、履修する学生の数に応じて、担当する講義する数は変わってくるが、従来、履修コースは4,つまり週の中に4回同じ語学講座を担当するということが多かった。

 教員構成としては、2022年度の場合で、次のようになっている。

・英語科教員 専任8名 非常勤2名

・ドイツ語科教員 専任2名 非常勤0名

・フランス語科教員 専任1名 非常勤2名

・中国語科教員 専任3名 非常勤2名

フランス語コマ数の半分近くが非常勤によるものである。フランス語の非常勤依存度が突出していることがわかる。

 なお英語科の教員が多いのは、第1外国語として必修である以上、学生全員が受講することになるからである。第2外国語においては外国語間にとくに有利不利の内容はない。伝統的に東洋大学では特定の語学を履修する学生が多いとか、「○語を履修しておいたほうが就職先に強い」といった事情もない。

 フランス語専任教員が数において少ないのは、これもハラスメントの一つのあらわれとしてとらえることができるものである。

 2 原告に関する事情

(1)原告の経歴

1981年3月、神奈川県立大磯高等学校卒業

1982年4月、慶應義塾大学文学部入学

1986年3月、同大学文学部仏文科卒業

1986年4月、同大学大学院文学研究科修士課程仏文学専攻入学

1989年3月、同大学大学院文学研究科修士号取得

1989年4月、同大学大学院文学研究科後期博士課程仏文学専攻入学

1990年10月、フランス政府給費留学生として、新ソルボンヌ・パリ第3大学D.E.A課程入学

1991年10月、同大学D.E.A取得、同大学博士課程進学

1992年10月、パリ第8大学博士課程編入

1993年3月、慶應義塾大学大学院文学研究科後期博士課程仏文学専攻中退

1994年4月、第32回現代詩手帖賞受賞

1996年10月、パリ第8大学に博士論文(La Genèse de l’oeuvre poétique d’Eluard, du langage proverbial aux écritures surréalistes(1918 – 1926))提出

1996年12月、同大学新制博士号取得

1997年4月、慶應義塾大学文学部非常勤講師、いわき明星大学非常勤講師

1998年8月、詩集『砂地』(楢葉出版)、詩集『死亡者』(七月堂)刊行

1999年4月、東洋大学文学部教養課程専任講師

1999年11月、詩集『言語の子供たち』(七月堂)刊行

2000年4月、東洋大学法学部専任講師

2005年4月、詩集『砂の歌』(思潮社)刊行

2006年4月、東洋大学法学部助教授

2007年4月、東洋大学法学部准教授

2009年1月、くも膜下出血に倒れる

2013年4月、東洋大学法学部教授

2013年7月、『尾形亀之助の詩 大正的「解体」から昭和的「無」へ』(思潮社)刊行

2014年7月、詩集『まだ言葉のない朝』(思潮社)刊行

2015年4月、ストラスブール大学にて万葉集について発表。

2015年7月、『小林秀雄 骨と死骸の歌――ボードレールの詩を巡って』(水声社)刊行

2016年1月~12月、三田文学編集長

2017年3月、『「日本」の起源――アマテラスの誕生と日本語の生成』(水声社)刊行

2017年11月、詩集『倭人伝断片』(思潮社)刊行

2018年3月、詩集『惑星のハウスダスト』(水声社)刊行

2018年9月、第56回歴程賞受賞

2019年、H氏賞選考委員長

2020年~、歴程賞選考委員

2022年3月、詩集『DEATHか裸(ら)』(コトニ社)刊行

(2)原告の病気

原告は、2009年1月にくも膜下出血を煩った。

1月29日、自宅にて突然倒れ嘔吐した。救急車にて救急病院に運ばれ、CT検査でくも膜下出血との診断があり、集中治療室にそのまま入院した。二日後、手術前の血管造影検査を行なったが、出血箇所が特定できず、その後二回血管造影検査を行なったがやはり出血箇所の特定ができなかった。担当医師からはそのまま手術を勧められたが、出血箇所が自然に塞がる稀な例があると妻がネットで読み、そのケースではないかと考え、手術を断った。脳内に流れ出した血の影響で水頭症を発症しているとのことで滞留している血を溶かして体外に排出する治療を受けた。また頭を高い位置に固定していることから肺炎も発症し、治療を受けた。

原告には麻酔がかかっていたので、以上の事実は原告の妻の記憶と記録によるものである。

2月21日退院。3月末まで自宅で療養するようにという診断書が出された。医師からは、くも膜下出血は二度三度と繰り返す例が多く、最初の発作で助かっても、二度目や三度目の発作で亡くなる人が多いので健康管理に気を付けろという注意があった。後遺症は幸いなかった。

現在は回復して大学教員としての勤務に支障はない状態であるが、この病気のため、無理はきかない状態である。

具体的には、徹底的な禁酒、激しい運動をしないこと、一日数時間の気功(13年以上の間数日間を除いて例外なく毎日数時間やっている)、体重の維持(大病前75キロだった体重を62,3キロに維持している)などの徹底した摂生と健康管理。

また、原告には高脂血症の持病もある。

第5 ハラスメントの事実経緯

 以上の前提の事実のもとで、原告は、東洋大学の教員としての業務を行うにあたり、様々なハラスメントを受けている。

以下指摘する事実は、原告がハラスメントを受けている事実のすべてではない。原告にとっては、原告を不利益な状況に貶めたり、精神的にさいなむ内容のすべてがハラスメントである。

しかしそのすべてを取り上げることは困難であるので、以下の事実をハラスメントについての主要事実として指摘するものである。

1.主たる加害者:****元学部長

2016年に、原告と同じフランス語を担当していた*****職員が、定年退職をした。

通常であれば、フランス語の教員を補充するべきところである。仮にフランス語のニーズが少ないということであれば、少なくともフランス語教科の今後について原告に相談する必要があった。

しかし、このフランス語教員枠が教授会の審議を経ずに政治学教員枠に転用された。結果として法学部のフランス語専任教員は原告一人となった。

2016年10月23日、****教員から「第一回語学委員会書面会議」と称して、定年退職したフランス語教員*****の教員枠を二つに割ってドイツ語と中国語の契約制外人講師枠にすることがメールで報告された。このメールには****学部長の文書が添付されている。それによると、***のフランス語教員枠である「1名の専任枠で契約制2名の語学関係の教員を採用するということ」が教授会で決定されたとあった。

しかしこれは事実ではなく、教授会においてそのような内容が決定された事実はない。

この転用案は後に廃され、フランス語枠は政治学枠に転用されることになった。

2 主たる加害者:****前学部長、****教務課長

2019年度「語学選択のしおり」修正版を2018年8月30日に、原告は法学部教務課に送った。これは期限どおりに送ったものであった(期限は8月末日)。

にもかかわらず、**学部長と**教務課長は原告には何らの相談も報告もなく、修正版を採用せず従来通りの版を使用した。

こうした原稿について、修正の必要があるなら、その旨を確認することは容易に可能であるが、それは行われなかった。

3.【主たる被申立人:教務課職員***】

法学部教務課職員***氏作成担当の法学部HPでは2016年から2020年の時期まで、ドイツ語の記事だけを大々的に載せて宣伝した。

その後、ホームページ記事は改訂され、「法学部国際交流、国際教育プログラム」の「法学部海外短期研修プログラム」のところに「語学研修(イギリス)」、「語学研修(ドイツ)」、「平和学研修(ノルウェー)」とあり、フランス語については触れない形とされ、形を変えたフランス語差別が継続している。

このような形のホームページ掲載にするということについて、原告に相談がなされたこともない。

このように、被告のホームページでは、フランス語の記事は全く載せてきていない。フランス語の記事を載せたいと依頼をしてきたこともない。

明確にフランス語に対する劣遇措置である。

4 【主たる被申立人:教務課****、*****、****現学部長】

原告は、「教養演習」という講義を担当させてもらえない状態が、12年間続いている。

 「教養演習」とは、語学教員あるいは体育教員が例えば語学科目以外に、文学など自分の専門分野を教える科目である。

 この「教養演習」は、語学を担当する常勤職員であれば、担当することが多い講義である。2022年度については、専任語学教員14名のうち8名が教養演習あるいはセミナーを担当している。それにプラスして体育教員1名が教養演習を担当している。

語学教員について見ると、ドイツ語教員2名は2名とも教養演習を担当しているほか、****は、卒論を担当している。英語教員8名のうち5名がセミナー、教養演習、あるいはそれに類する科目(****は「組織内コーチング」という科目を担当している)を担当している。中国語教員3名のうち1名が教養演習を担当している。教養演習等を担当していない英語教師のうち2名は契約制の外国人講師で1名は准教授であることからも、教授である原告が教養演習を担当していないということは異様なことである。

原告は、2006年と2007年の2年間教養演習を担当した。

2007年10月5日に法学部教務課職員の****と*****が原告の教養演習を「つぶしてやる」と言っているということを、当時カリキュラム委員長だった多田英明氏が原告に伝え、「教養演習をやめた方がいい」と原告に伝え、それで原告が教養演習を担当させられなくなったという経緯である。

その後教養演習について、担当するかしないかについて被告から打診されたことはないし、原告としては担当がないまま今日に至っている。

5 被告

原告は、20年間、一切の役職を与えられていない。どんなに小さな委員会であっても「長」の名の付く役職は原告には一切与えられていない。

6. 被告

2019年の原告のサバティカルに備えて原告の代わりに一年間フランス語Ⅱを教える教員の確保が課題になった。その候補者として、***氏の資格審査をすることになったのだが、その審査にあたって、審査結果報告書に主査である原告の用意した所見は全く記載されず、副査の******文学部教授の所見のみが記載されていた。

原告を人事にでき得る限り関わらせないという法学部の方針がここで確認できる。

7.被告

2017年まで、10年近くにわたって、原告は、毎年連続して10月に留学生試験の採点を担当させられた。

他の教員の多くが10月入試でやる面接の仕事は原告に担当させなかった。

そもそも留学生の日本語試験は、誰にでもできる仕事という位置付けがある。それを専門と関係があるわけでもないのに同じ入試の採点を10年近くも同一教員に担当させたことになる。留学生試験の日は法学部での試験監督出向は原告だけであった。

8.主たる加害者:法学部教務課職員の****と***

2019年の国内研究のため、原告が作成した研究計画書を法学部教務課職員の****と***が原告に何のことわりもなく、題名を書き換え、同時に本文を勝手に段落分けした。

9.被告

フランス語予算の一方的な削減。

中国語には2011年から、ドイツ語と英語には2014年以来予算がつけられているが、フランス語には一貫して全く予算がつけられていない。

下記の「授業・講座運営」とは、ごく大雑把に授業に関わる予算である。教材については、別枠で希望があれば年2万円まで出ることになっている。「授業・講座運営」と言っても事実上、英語・ドイツ語は短期留学費用で中国語はeラーニング経費である。したがって、英語・ドイツ語予算は「海外研修」名目に変えられ、中国語予算は「課外講座運営経費」に変えられている。これら予算の枠組みは非常に形式的・恣意的なものである。

原告に判明する情報で、判明している2017年以降の予算額について掲示すると次のようになる。

2017年

中国語 20万5千円(「授業・講座等運営」)

英語 30万円(「授業・講座等運営」)

ドイツ語 30万円(「授業・講座等運営」)

2018年

中国語 22万1千円(「授業・講座等運営」)

英語 30万円(「授業・講座等運営」)+77万1千円(「海外研修」)

ドイツ語 30万円(「授業・講座等運営」)+119万3千円(「海外研修」)

トロムソ 52万5千円(「海外研修」)

2019年

中国語 21万9千円(「授業・講座等運営」)

英語 15万円(「授業・講座等運営」)+77万6千円(「海外研修」)

ドイツ語 15万円(「授業・講座等運営」)+162万2千円((「海外研修」)

トロムソ 93万円(「海外研修」)

2020年

中国語 ?円「課外講座運営経費」

英語 86万9千円(「海外研修」)

ドイツ語 128万1千円(「海外研修」)

トロムソ 87万8千円(「海外研修」)

2021年

中国語 ?円「課外講座運営経費」

英語 77万4千円(「海外研修」)

ドイツ語 178万2千円(「海外研修」)

トロムソ 94万4千円(「海外研修」)

2022年

中国語 ?円「課外講座運営経費」

英語 77万6千円(「海外研修」)

ドイツ語 196万5千円(「海外研修」)

トロムソ 112万2千円(「海外研修」)

この間フランス語には、原告の依頼により、2回ほどDVD予算5万円ほど付いたことがあるが、それを除くと、一切予算がついていない。DVD予算にしても1年で2万円を上限に他の語学教師誰もが申請すれば出してもらえるものである。したがって原告の場合は2回分合計しても6万円出してもらったにすぎない。

原告は、2016年8月23日に今井雅子予算委員長に予算の不公平を軽減するためにフランス語検定対策費として10万円つけてほしいという要望書を提出した。予算委員会で検討するとの返信はあったが、原告の要望は全く聞き入れられなかった。

2017年10月4日に****教務課長に、予算の不公平を解消してほしいということ、現行で検定3級以上検定料半額免除をフランス語だけ全学援助にしてほしいこと、英語、ドイツ語、中国語にはいる契約制外国人講師をフランス語にもほしいことの3点を法学部執行部に伝えプッシュしてほしいというメールを連絡した。しかし、**課長からの返信はなかった。

第6 ハラスメントの背景

1 以下の事実があった。

(1)****教授(当時)、****元学部長による次の行動

2002年4月の飲み会で主任になったばかりの佐藤俊一教授は、原告に対し、「ボードレールなんか読んでて、おめえはやってねえのか?」と発言した。

もう一度聞き直すと、「おめえはやってねえのか?」と繰り返される。ボードレールは放蕩生活で知られた19世紀フランスの詩人だから、お前はセックスや女遊びをやってねえのか、と言われたことになる。

原告は幼少時にとりわけ母親から性的なことも含めて虐待を受けたので、深く傷つく発言であった。1年ほど経った頃だろうか、当時学部長だった小林秀年に紙媒体で「これはセクハラではないか」という抗議文書を渡したが、これに対して**氏はなんらの対応もしなかった。

(2)****元学部長、***教授、***教授による次の行動

2015年6月初めに2号館講師控室に私が行くと少し離れたところにいた元学部長****が原告に向かって「くさ、くさ、くさ!( =臭!臭!臭! )」という言葉を発し、一緒にいた***と斎***それに合わせて嘲るような笑声を発した。ちょうど1年生の一部の学生たちにLINEでうんこ臭いというような誹謗中傷を原告に対して行っていた。この言動は、それに乗じたハラスメントであった。

(3)****教授による次の発言

2005年に****教授と会食した折に「あんたのモノ、小さいやろ。鼻見りゃわかる」と言われる。自分の男性器を侮辱され深く傷ついた。

2 これらの事実の評価

 上記1の事実は、原告が20年もの以前から、法学部において、ほかの教員からさげすみの対象となっており劣位に置かれていたこと、原告を侮辱する言動が横行していたことを示している。

 原告が、第6所掲のハラスメントを受ける背景には、こうした事情がある。

第7 ハラスメントの成立

 1 安全配慮義務とその違反

 被告は、原告と労働契約関係を締結している法的関係にあり、この関係から、原告に対して安全配慮義務を負う。

被告が負う安全配慮義務の具体的内容として、以下の裁判の判示が参考になる。

労働契約法第5条には、「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」とあるが、これは、「使用者は労働契約に伴い、…労務遂行に関連して労働者の人格的尊厳を侵しその労務提供に重大な支障を来す事由が発生することを防ぎ、又はこれに適切に対処して、職場が労働者にとって働きやすい環境を保つよう配慮する注意義務を負う。使用者がこの義務を怠り、その使用人においてほかの労働者の意思決定を不当に強要し、あるいはその人格権を違法に侵害する言動があった時は、使用者は債務不履行に基づき労働者に発生した損害を賠償する義務を負う」(東京地裁平成30年7月10日判決、判例集未登載)。

 2 パワーハラスメントとその6類型

 2019年6月、こうした安全配慮義務違反の類型として指摘されているいわゆる「パワーハラスメント」について、その法的規制を打ち出すため、改正労働施策総合推進法が成立した。

この改正法に新設された30条の2第1項は、

  「事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であつて、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。」

と定めた。

 また、同法の定めによって策定された厚生労働大臣の指針によれば、まず、パワーハラスメントの定義が次のように定められた。

 「職場におけるパワーハラスメントは、職場において行われる①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるものであり、①から③までの要素を全て満たすものをいう」。

そして、パワーハラスメントに該当する代表的な6類型が掲示され、それは次のものであった。

 ・身体的な攻撃(暴行・傷害)

 ・精神的な攻撃(脅迫・暴言等)

 ・人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)

 ・過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害)

 ・過小な要求(業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)

 ・個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)

  こうした法の整備にてらせば、パワーハラスメントの定義や類型に該当する行為は、それ自体、安全配慮義務違反の内容を伴う可能性が極めて高く、労働施策総合推進法のもとでは、こうしたことが発生しないような職場作りとして事業主に求められる責務を事業主が果たすのは当然である。また、安全配慮義務違反に対する責任を果たす観点からも、事業主には、ハラスメント撲滅、そして就労している労働者の就労環境確保改善の措置を執ることが求められる。

 この点は、本件の被告の場合にも妥当することである。そして、それは、改正労働施策総合推進法の施行以前であっても相違はない。同法は新たなことを創設したわけではなく、従来から労働契約法上問題になっている安全配慮義務とその違反の内容について、より具体的内容をわかりやすく解明したものであって、今まで合法であったものを違法にするという趣旨のものではないからである。

3 ハラスメント規程との関係

 被告における、「学校法人東洋大学ハラスメントの防止等に関する規程」も、この観点の具体化と理解することができる。

 この意味では、安全配慮義務によってパワーハラスメントを行わないこと、当該パワーハラスメントの存在に関しては、これについて適切に対処して原告が就労しやすい環境を作ることは、被告にとっては原告との契約上の義務である。

4 本件の場合、行為のハラスメント該当性

上記第6所掲の行為は、原告担当の教科について原告に確認することもなく一方的に教員数を減らし他講座に教員をまわす、原告の原稿を意図的に無視する、あるいは勝手に改ざんする、原告の担当講座をホームページ上で宣伝しないしそのことについて相談もしない、原告にほかの教員が担当する講座は担当させないが、原告にほかの教員はしない仕事を押し付ける、原告を役職につけない、原告の担当教科にだけ予算を付けない、といった行為である。

原告は、フランス語教員として専門性を有しており、またある種の学問について専門家としてのプライドを有している。大学においてそうした教員としての名誉を無視する形で、意図的に劣遇的な措置を執られることは、原告の精神をさいなむものであり、精神的な攻撃といえるものである。また、原告だけ他の教員と別異な取り扱いを受けることで、人間関係からの切り離しを受けるものでもあるし、原告のみがほかの誰もができる仕事を担当させられるという場面においては過小な要求を受けているということでもある。

これらは、まさに、「就労における権力又はその優越的な地位を利用して、他の構成員の意に反する不適切で不当な言動を行うことにより、就労における不利益又は不快感を与え、個人としての尊厳を不当に傷つけ、就労環境に悪影響を及ぼすこと」に該当する。

以上により、第5所掲の各行為は、原告に対する安全配慮義務違反の行為である。

第6で述べたような事情にも照らせば、原告は、法学部のなかで、長い期間仲間はずれにされてきたというべき状況でもあり、この状況は極めて悪質というべきである。

5 損害

 原告は、上記の安全配慮義務違反によって、著しい精神的苦痛を被った。

その精神的苦痛の被害は、金銭的に評価すれば、金500万円とみるのが相当である。

 原告は被告内のハラスメント申立によっても本件を解決できなかったため、弁護士に委任して解決を委ねるほかなかった。したがって、弁護士に委任する費用が発生したが、これは上記損害額の500万円の1割である50万円とするのが相当である。

第8 本件提訴に至る経緯

本件提訴以前に、原告は、被告のハラスメント相談室への相談を行い、被告の機構における自主的な解決を行えるよう尽力したが、それによって解決することはできなかった。

その件に関する事実経緯を記すと次のとおりである。

2021年2月5日 原告、ハラスメントを外部機関に相談

2月8日 外部機関から連絡を受けたハラスメント相談室からの最初の電話。

2月12日 ハラスメント・オンライン相談。

担当の人事課職員、**と**は、相談の場で、相談室が調整する方法(通知・調整)と、申し立てしてハラスメント調査・苦情処理委員会を設置し委員会で調査する方法(調査)と二通りあることも説明せず、いきなり、相談員による法学部教務課への聞き取りへの同意を求め、そのことにより通知・調整による解決へと原告を誘導しようとしてきた。

3月には、ハラスメント防止委員会に被申立人である法学部教授、****、元法学部教務課長である***に加え、元法学部教務課職員である***が入っているので、彼らをハラスメント防止委員会から外してほしいと****人事部長(ハラスメント相談室長)に再三要求するが、「学校法人東洋大学ハラスメントの防止等に関する規定」第5条第2項を盾に拒絶される。

4月1日の人事異動で、*と**はハラスメント防止委員会から外されたものの、**はそのまま残った上、今なお原告にハラスメントを繰り返している現法学部長の****がハラスメント防止委員会に入る。2月の原告によるハラスメント申立以降の4月に現法学部長を****学長が委員長であるハラスメント防止委員会に入れたという事実は、東洋大学全体が原告に対するハラスメントを隠蔽・もみ消しを図っていることの証左である。

6月 ****(教員/総合政策学科)、****(教員/経営学科)、****(職員/川越事務部)、****弁護士からなるハラスメント調査・苦情処理委員会が設置される。

9月6日 ハラスメント調査・苦情処理委員会第一回事情聴取。冒頭に原告が録画を撮っている旨を告げると****弁護士がプライバシーの観点からそれに反対し、録画撮影の可否をハラスメント防止委員会に相談して決めたいと言う。その際、**弁護士は、「学校法人東洋大学ハラスメントの防止等に関する規定」第18条第7項によれば独立が保証されなくてはならないはずのハラスメント調査・苦情処理委員会が法学部長****のいるハラスメント防止委員会に「紐付け」であることを明かす。この事実は、ハラスメント調査・苦情処理委員会が被申立人である**法学部長に相談しつつ機能するものであることを証明している。結局、ハラスメント調査・苦情処理委員たちの協議の結果、ビデオ撮影の可否を安斎隆理事長に問うという結論になり、この日の事情聴取は取りやめになる。

10月16日 被申立人がハラスメント調査苦情処理委員会に関わっている状態でハラスメント調査苦情処理委員会の公正な運営が不可能であることは明らかであるので、これ以上ヒアリングの日程は決めないでけっこうであると**人事部長に告げる。

11月4日 **人事部長からハラスメント調査苦情処理委員会を「終了」するというメールが来る。

東洋大学にハラスメント申立をした結果、東洋大学がハラスメントを解決する意志を全くもたないことが判明したので、原告は本件を提訴する決意を固めた。

第9 結語

 以上により,原告は,被告に対し,損害賠償請求権に基づき、金550万円及びこれに対する民事法定利率に基づく遅延損害金の支払いを求めて本件を提訴するものである。

原告としては、被告に対し、継続している原告に対する嫌がらせ行為の即時停止と今後の再発防止を要請するものである。

証 拠 方 法

別に提出する証拠説明書のとおり

附 属 書 類

1 甲号証写し     1通

2 証拠説明書写し     1通

3 訴訟委任状     1通