東洋大学パワハラと不正裁判を糾弾する会

東洋大学パワハラ裁判
第一審準備書面5

令和4年(ワ)第16058号 損害賠償請求事件

原 告 福田 拓也

被 告 学校法人東洋大学

準備書面5

2023(令和5)年8月13日

東京地方裁判所 民事部第42部合議A係 御中

原告       福  田  拓  也

第1 ハラスメント1~9について(被告第1準備書面、第5)についての認否反論

1 ハラスメント1について

(1)認否

 すべてにつき否認ないし争う。

(2)原告の主張

① 被告は、「主観的」、「客観的」という語を用いているが、被告準備書面こそ一貫して虚言と支離滅裂な論理に満ちた極度に主観的に歪められたものである。また、学内規定や厚労省の定義は引用するもののパワーハラスメント6類型には言及していない上に、6類型のうちの仲間外しや無視による人間関係からの切り離しについての原告の主張に何らの反論をも提出し得ていないなど、被告の議論が極めて主観的に歪められたもので客観性を全く欠いていることは言を俟たない。

② 被告は次のように主張する。「本件において、被告法学部で誰を採用するか、専任教員若しくは契約制外国語講師を採用するかは、被告法学部の専決事項、裁量事項である。したがって、被告法学部が、フランス語の専任教員を原告一人とし、その他は、契約制外国語講師を採用[…]したとしても、それは何ら問題のない適正な判断である」。しかし、「被告法学部の専決事項、裁量事項である」ことから被告の判断が「何ら問題のない適正な判断である」ことは論理的に全く帰結し得ない。被告はここで「裁量」に中に不正が入り込むことを最初から排除しているが、原告は被告法学部の「裁量」が既に不正なものであることを証明している。したがって、被告の主張は原告の主張への反論として全く機能し得ない。

③ 被告はまた第1準備書面において「原告が特定の授業を担当する権利は、教育課程編成の決定によって初めて発生する」という主張をしているが、ここでも被告は「教育課程の編成」が不正なものであり得る可能性を最初から排除するという誤った推論を犯している。「教育課程の編成」が不正なものであった場合には被告の主張は全く通らない。原告は「教育課程の編成」が不正であることを証明しているのだから、被告の主張は準備書面1における原告の主張への反論として機能し得ない。

 原告準備書面1の6~7頁には次のようにあった。「事実経緯1にある***教員の授業枠について、原告が直接担当する授業枠ではないものの、原告が担当するのと同じフランス語枠教科が行われている授業枠について、原告はこの授業枠を維持することについて、原告が担当しているのと同等の権利性がある」。不正な「教育課程の編成」を「原告が特定の授業を担当する権利」に優先させることができぬ以上、被告の主張は原告準備書面1への反論として機能しておらず、むしろ「教育課程の編成」における自身のハラスメントを不当に正当化するための主張であるというほかはない。

④ 被告はまた次のように主張する。「さらに、今回の決定は、原告のコマ数等に影響を与えておらず、原告の就労における不利益はなく、原告の尊厳を不当に傷つけたり、就労関係に悪影響を及ぼしているという事実はない」。

 「原告のコマ数等に影響を与えて」いないことから「原告の就労における不利益」がないこと等は論理的に帰結し得ない。「原告の就労における不利益」にはコマ数以外の様々な要因があり得るからだ。この主張から「したがって、ハラスメント1は、パワー・ハラスメントにはあたらない」と結論付ける原告の推論は全く論理性を欠き、無効であるというほかはない。

⑤ 被告は「原告の就労における不利益はなく」「就労関係に悪影響を及ぼしているという事実はない」と主張するが、これは全くの虚言である。この決定は、英語・ドイツ語・中国語が複数の専任教員を擁している、あるいは擁する予定であるところ、法学部フランス語専任教員だけを原告一人にすることによって、既に法学部内で仲間外しに遭っていた原告をさらに孤立させるための仲間外しのパワーハラスメントである。

また、フランス語教員としての原告の味方がいなくなることによりフランス語劣遇を容易にするものであり、それは例えば予算における際立ったフランス語劣遇措置という事実によって証明されている。また、各言語の教員がカリキュラム委員となっていたが、フランス語教員が原告一人となってほどなく原告はカリキュラム委員から外され、カリキュラム作成段階でフランス語教員だけが意見を述べる機会を奪われた。さらに、法学部が海外研修に際して専任教員の随行を義務付ける規則を作ったため、複数の専任教員のいる他の言語と異なりフランス語だけ海外研修が困難となり、事実法学部のフランス語短期海外研修は行われていない。

⑥ 被告はまた「原告の尊厳を不当に傷つけ」ているという事実はないと主張するが、これも虚言である。

 既に訴状20頁において、「原告担当の教科について原告に確認することもなく一方的に教員数を減らし他講座に教員をまわす」ことがフランス語教員としての専門性を有する「原告の精神をさいなむものであり、精神的な攻撃といえるものである」と主張されている。また、フランス語教員だけを原告一人にすることが「原告だけ他の教員と別異な取り扱いを受けることで、人間関係からの切り離しを受けるものでもある」ことであることも主張されている。原告の尊厳が不当に傷つけられていることを意味するこれらの主張に対して、被告はそのすべての準備書面において何ら有効な反論を提出し得ていない。

⑦ 被告は、フランス語教員枠の政治学教員枠への転用を英語による授業のできる教員の採用であるとして不当に正当化している。

 英語ができる教員を採用する必要があったとしても、フランス語の枠を利用することには何らの必然性もない。むしろフランス語教員を減らすことによる法学部教養教育の劣化に留意すべきである。英語ができる教員を採用したというのはハラスメント目的でフランス語教員を減らし、法令に違反する形で専門科目の教員を採用したことを正当化するための口実にすぎない。

⑧ 被告は次のように主張する。「なお、原告は、大学設置基準第13条を持ち出し、縷々述べるが、大学全体の収容定員に応じ定める教授等の数と、原告の業務内容に関連性はなく、フランス語教員枠の政治学教員枠への転用は原告のフランス語教員としての人格権を侵害するハラスメント行為にあたらない」。

 しかし、「大学全体の収容定員に応じ定める教授等の数と、原告の業務内容に関連性」がないことからフランス語教員枠の政治学教員枠への転用が「原告のフランス語教員としての人格権を侵害するハラスメント行為にあたらない」ことは帰結し得ないので、これは誤った推論である。

 フランス語教員としての専門性を有する原告に何らの相談もなくフランス語教員枠を政治学教員枠に転用することは、それが大学教員としての原告の人格権の核である専門性やそれに伴う名誉やプライドを傷つける限りで、原告の人格権を侵害するハラスメントであり不法行為である。

 それに対して、原告準備書面で指摘した通り、大学全体の収容定員に応じ定める教員数の配分を事実上変更することは、大学設置基準第13条に違反する法令違反である。この事実は、法令違反である決定あるいは「裁量」がいかなる合理性をも欠いた「業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」であることが明白であり、被告の主張する「業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導」に全く該当しないことから、フランス語教員枠の政治学教員枠への転用が「業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」であることを証明している。

⑨ したがって、フランス語教員枠の政治学教員枠への転用は、それが原告を仲間外しし無視することに存する人間関係からの切り離しと原告の精神をさいなむ人格への冒涜である精神的な攻撃によるパワーハラスメントであることに加え、厚生労働大臣の指針にある通り、①優越的な関係を背景とした言動であり、②それが合理性を欠いた法令違反であり、業務遂行上の手段として不適当な行為であることから、またフランス語教員枠を潰す必要性がないことから、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものであり、③原告の意見を全く聞くことなく転用を決めた無視と仲間外しによって、原告に精神的苦痛を与えると同時に、原告を法学部内で孤立させ不利な状況に追い込むことで職場環境を悪化させ不快なものとし、原告の発言力を奪うことによって原告の能力の発揮と大学運営への参加を妨げると同時にフランス語劣遇措置を容易にする限りにおいて、原告の就業環境が害されるものである点で明白にパワーハラスメントである。

⑩ フランス語教員枠の政治学教員枠への転用はまた「学校法人東洋大学ハラスメントの防止等に関する規程」に定める「パワー・ハラスメント」の定義に従えば、まさに「就労における権力又はその優越的な地位を利用」した「他の構成員の意に反する不適切で不当な言動」であり、フランス語教員としての原告を孤立させ原告の発言力を弱めフランス語劣遇措置を容易にすることから「就労における不利益又は不快感を与え」、原告の長い経歴に由来する専門性の発揮とそれに伴うプライドや名誉を徹底的に損傷することによって「個人としての尊厳を不当に傷つけ」るものであり、原告に精神的苦痛を与えると同時に、上述の理由によって「就労環境に悪影響を及ぼすこと」であり、パワー・ハラスメント以外の何ものでもない。

⑪ 原告法学部専任教員となった2000年から2008年まで法学部フランス語専任教員は原告一人であった。2009年に原告に加え*****もフランス語専任教員となった。その採用審査への原告の参加は一切許されず、原告を無視し仲間外しするハラスメントが犯された。***を採用した理由は、法学部にフランス語教員枠が二つあるからというものであり、学生数の目立った増加は一切なかった。

 ***就任直後の2009年4月の語学会議で、各語学の「核となる人物」というものが法学部によって一方的に定められ***が任命された。また各語学の代表者が参加するカリキュラム会議にも何らの議論もないままカリキュラム委員に任命された***が参加することとされた。基本的に3,4年生向けの一番レベルが高いフランス語Ⅲの授業も何らの議論もないまま***が担当することになった。

 これらの事実からして、被告が***を採用してフランス語教員を二人にしたことは、***を法学部フランス語運営の中心とすることによって、原告を無視・仲間外しし、原告の尊厳を傷つけることを狙ったハラスメント目的であると考えるほかはない。

⑫ 2022年度にフランス語履修者数がドイツ語履修者数を上回っていたにもかかわらずフランス語専任教員を増やすことが検討すらされなかったこと、2023年度にフランス語履修者数が増えていないにもかかわらず新たに非常勤講師3名を採用し原告を排除したことは原告準備書面4に指摘されている。被告は、これらの事実につき何らの反論・反証をも提出し得ていない。

⑬ 以上をまとめると、被告は、まず2008~9年に一人であったフランス語専任教員を二人にし***を重んずることによって原告を法学部フランス語運営から排除し、次いで2015~6年に二人いたフランス語専任教員を原告一人にすることによってフランス語劣遇措置がそのまま原告へのハラスメントになるような状況を作り、最後に2022~3年に法学部フランス語非常勤講師を3人増員することによって原告から授業を奪った。この過程を通して、法学部フランス語教員の増減はフランス語履修者数の増減と一切相関関係はない。

このように被告は、ある時は法学部フランス語教員枠二人を尊重しフランス語教員を雇い、ある時はフランス語教員枠を事実上減らしフランス語教員を採用しないようにしており、フランス語教員枠の被告による扱いは全く首尾一貫していない。首尾一貫しているのは、フランス語教員を増やす時も増やさない時も原告を貶める悪意(故意あるいは過失)のみである。同様に被告は、フランス語教員枠の政治学教員枠への転用に際してフランス語履修者減を理由とするが、他方でフランス語履修者の増減に関係なくフランス語教員を増やしている。そして、いずれの場合にも原告を無視し仲間外しし原告の尊厳を傷つける故意過失のみが一貫して確認されるのである。

 したがって、フランス語教員枠の政治学教員枠への転用に際して被告の主張する理由はすべて口実に過ぎぬものであり、この決定がハラスメント目的であり、悪意、すなわち故意過失によるものであることは明白である。

⑭ 被告は、平成27年10月の「語学委員会の書面会議において、履修者数がフランス語より多い中国語、ドイツ語で各1名を契約制外人講師として採用することが取りまとめられた」と主張するが、これは虚言である。

 「平成27年度第1回語学委員会書面会議について」(甲第7号証、乙第8号証)には、「語学委員会の答申(案)」として、「現況に鑑み、選択者数の多い中国語とドイツ語でそれぞれ契約制講師を採用する」とある。つまり、語学委員会で検討する以前に、原告に全く無断で中国語・ドイツ語の契約制講師採用が事実上決定されている。また、フランス語履修者数増が全くない時にフランス語教員を採用した事実があることから、履修者数の多寡は中国語及びドイツ語契約制講師採用の正当な理由とはなり得ず、この決定が原告へのハラスメント目的のものであることは既に指摘した。

⑮ 被告は続けて「これを受けた教授会では、平成28年4月、7月、10月と複数回の審議を経て当該2名の採用に至っており、教授会の審議を経ていないという事実はない」と主張するが、これも虚言である。

 2016年4月定例教授会資料の「平成25年度以降の教員人事ヒアリング」には「**枠を使用し、契約制外国語講師(中国語)および(ドイツ語)の教員公募を、また***枠については、法学部SGU対策の分野として学部で検討を行う」と注記されている。(甲第10号証)つまり、中国語及びドイツ語契約制講師については、当初の予定から変更して、文学部から「枠移動」した***枠を使用することになっている。したがって、被告が「平成28年4月、7月、10月と複数回の審議を経て当該2名の採用に至っており」というのは**枠での採用のことであり、たとえこれが教授会の審議を経ていたとしても、***枠とは関係がない。

 ***枠については、2016年4月時点までに、これを使って契約制外国語講師2名を採用することは教授会で審議されたとしても、この2名を中国語及びドイツ語教員とすることについては全く審議されていない。***枠を政治学枠にすることについては甲第8号証にあるように7月臨時教授会時点で既に決定されており、当時の****法学部長は4月定例教授会で決まったと虚言を吐くなど、どの教授会で審議決定されたか確定されない。被告は乙第7号証として教授会議事録を提出しているが、議事録に記録されていても、教授会資料がないのでは意味がない。議事録は、実際に審議されなかったことを後から書き足すこともできるのであるから、教授会で実際に審議されたことの証拠にはならない。また、もし実際に審議決定されていたとしても、それが法令違反の決定に過ぎないことは既に原告準備書面4に指摘した通りである。

⑯ 被告の主張する通り「スポーツ」という言葉自体が不適切でないにしても、この語の用いられる文脈や用い方次第では「スポーツ」という語を発するという行為が様々な価値をもち、例えばハラスメントになり得るということは言行為論の常識であり、一つの学問的言説として定着している。被告法学部の場合は、「スポーツ」という語を執拗に連呼した例が認められるため(例えば2008年4月のカリキュラム会議における****教授による「スポーツ」連呼の例)、業務上相当な範囲を超えており、原告を貶める意図があることは明白である。また、被告は、甲第43号証の****氏のメールへの何らの反証をも提出し得ていない。

2 ハラスメント2について

(1) 認否

 すべてにつき否認ないし争う。

(2)原告の主張

① 被告は、原告の原稿を「掲載するだけの紙幅」がなかったと主張する。しかし、フランス語紹介文の行数が他言語のそれに比べて突出し得るという問題が生じた場合、当然のことながらこれに対する可能な解決策として原告の原稿を無視すること以外にいくつかの選択肢がある以上、したがって原告の原稿を無視することは紙幅のないことから導出され得る唯一の帰結ではない以上、「掲載するだけの紙幅」がないことは原告の原稿を無視することの根拠としては機能し得ない。

② そもそも原告の原稿を掲載する紙幅がないという被告の主張が虚言である。

 確かに、2019年度「語学選択のしおり」を見ると、原告に無断で掲載された2018年フランス語紹介文は16行、中国語紹介文は15行、ドイツ語紹介文は10行となっており、もし24行の原告提出原稿を掲載すると原告提出原稿が突出することになる。しかし、翌2020年度、そして21年度、22年度と見て行くと、掲載原稿の行数は、つまり紙幅は増やされていることがわかる。行数からすると、2019年度「語学選択のしおり」として原告の提出した原稿は24行で、2022年度中国語「語学選択のしおり」の原稿は23行であり、行数にして1行の違いしかない。翌2020年度「語学選択のしおり」として掲載された原告の原稿は21行で、この場合も2019年度「語学選択のしおり」提出原稿と3行の違いしかない。つまり、フランス語紹介文の行数が他言語のそれに比べて突出し得るという問題に対する可能な解決策の一つとして、行数を削るよう依頼するという可能性の他に紙幅を増やすという可能性も選択肢としてあったことになる。そして、紙幅を増やすことが2020年度以降可能であったにもかかわらず2018年時点で不可能であったとはまず考えられない。

したがって、被告は2018年時点において、紙幅を増やすという当然可能であった選択肢を敢えて採らず、また原告に連絡しつつ検討するという選択肢をも採らず、原告の原稿を無視して原告にハラスメント及び不法行為を働くという解決策を悪意をもって選択したということになる。ここに故意過失が認められる。

 また、紙幅の問題がある場合には原告に連絡して検討することが常識に属することは既に原告準備書面2及び4で指摘されている。

③ また被告は、原告の原稿の内容が「教員と学生との間のくだけた会話形式となっており、法学部として不適切と判断した」と主張する。しかし、2021年度以降のドイツ語紹介文も教師を漫画化したイラストに吹き出し付きのくだけたものであり、原告の原稿が不適切でドイツ語紹介文を不適切でないとする被告法学部の判断は、その基準が全く明確でない極めて恣意的で不合理なものであり、法学部で原告が仲間外しされている状況を鑑みれば、被告法学部に原告を無視し原告の尊厳を傷つける悪意があったと考えることが至当である。したがって、原告の修正版を採用しなかったことに合理的な理由があるとする被告の主張は全く通らない。

④ 被告は、「そのことを原告に伝えなかったことは事実であるが、修正版を採用しなかったことは合理的な利用があり、殊更に無視をしたというものではない」と主張するが、合理的な理由があろうとなかろうと、原告に伝えずに原告の原稿を採用しなかったことが原告を無視することであり、たとえ修正版を採用しなかったことに合理的な理由があったとしても、それによって被告が原告を無視しなかったことにはならない。しかも合理的な理由は全くなかった。

⑤ 原告に何らの相談もせず原告の原稿を採用しなかったことにより原告の授業計画が学生に正確に伝達されないと同時に、原告は伝達されたと勘違いして授業することになるため、原告の授業についての双方の理解の間に齟齬が生じ、原告の授業運営がスムーズに行かなくなる。したがって、被告の行為は原告の授業を妨害することであり、原告の就労における不利益を与え、就労環境に悪影響を及ぼすものである。

⑥ したがって、原告の原稿を原告に全く連絡することなく無視した行為は、それが原告を仲間外しし無視することに存する人間関係からの切り離しと原告の精神をさいなむ人格への冒涜である精神的な攻撃によるパワーハラスメントであることに加え、厚生労働大臣の指針にある通り、①優越的な関係を背景とした言動であり、②それが人に原稿を頼む際の常識に反し、合理性を欠いた判断に基づく業務上の必要性がなく業務遂行上の手段として不適当な行為であることから業務上必要かつ相当な範囲を超えたものであり、③原告を無視することにより原告に精神的的苦痛を与え、原告の授業計画を学生に正確に伝えることを妨げる点において原告の授業を妨害し原告の能力の発揮を阻害する行為であることから、原告の就業環境が害されるものである点で明白にパワーハラスメントである。

⑦ この行為はまた「学校法人東洋大学ハラスメントの防止等に関する規程」に定める「パワー・ハラスメント」の定義に従えば、まさに「就労における権力又はその優越的な地位を利用」したものであり、常識に反して敢えて原告を無視した行為であることから「他の構成員の意に反する不適切で不当な言動」であり、原告が自身の授業についての情報を学生に与えることを妨げることにより原告の授業を妨害する行為であることから「就労における不利益又は不快感を与え」、原告の無視を通して原告の専門性の発揮とそれに伴うプライドや名誉を徹底的に損傷することによって「個人としての尊厳を不当に傷つけ」るものであり、原告を無視することにより原告の精神的的苦痛を与えると同時に、原告の授業計画と学生たちの抱く原告の授業についてのイメージとの間に齟齬を生ぜしめ、原告の授業運営を妨害し原告の能力の発揮を阻害する行為であることから「就労環境に悪影響を及ぼすこと」であり、パワー・ハラスメント以外の何ものでもない。

⑧ この行為は、原告の人格権の核である専門性やそれに伴う名誉やプライドを傷つける限りで、原告の人格権を侵害するハラスメントであり不法行為である。

3 ハラスメント3について

(1) 認否

 すべてにつき否認ないし争う。

(2)原告の主張

① 被告は、被告が「原告に限らず、被告教員全員に対し、HPに語学関係記事が掲載可能であることを連絡して」いると主張するが、これは全くの虚言である。被告が何らの証拠も出していない以上、この主張の信憑性はゼロであると言わねばならない。

 したがって被告の主張は、被告が原告を法学部専任教員扱いしていないという原告準備書面4に対する反論として全く機能していない。

② 原告から紹介記事の提案がなかったためHPへの掲載がなかったという被告の主張は、既に原告準備書面2で完璧に論駁されている。またかようなフランス語劣遇措置から原告の教育活動に対する被告法学部の悪意、つまり故意過失が結論されることも原告準備書面2で指摘されている。

③ フランス語紹介記事を法学部HPに長期間載せなかった行為は、それが原告を仲間外しし無視することに存する人間関係からの切り離しと原告の精神をさいなむ人格への冒涜である精神的な攻撃によるパワーハラスメントであることに加え、厚生労働大臣の指針にある通り、①優越的な関係を背景とした言動であり、②フランス語とドイツ語間の不平等な状態を何年もの間維持することに何ら業務上の必要性がなく、それが業務遂行上の手段として不適当な行為であり、しかも不平等状態の続いた期間が社会通念に照らして許容される範囲を超えるものであることから業務上必要かつ相当な範囲を超えたものであり、③フランス語劣遇を通して原告に精神的苦痛を与えると同時に、職場環境を原告にとって不利で不快なものとし、フランス語履修者減を生じさせることによって原告の能力の発揮を妨害することから、原告の就業環境が害されるものである点で明白にパワーハラスメントである。

⑦ この行為はまた「学校法人東洋大学ハラスメントの防止等に関する規程」に定める「パワー・ハラスメント」の定義に従えば、まさに「就労における権力又はその優越的な地位を利用」したものであり、フランス語劣遇によって原告の専門性を踏みにじる行為であることから「他の構成員の意に反する不適切で不当な言動」であり、フランス語よりドイツ語を優遇することによって原告の専門性を攻撃するとともにフランス語履修者減等の不利益を原告に与えることから「就労における不利益又は不快感を与え」、原告の無視を通して原告の専門性の発揮とそれに伴うプライドや名誉を徹底的に損傷することによって「個人としての尊厳を不当に傷つけ」るものであり、原告に精神的苦痛を与え、原告の担当するフランス語を不利な状況に陥らせることから「就労環境に悪影響を及ぼすこと」であり、パワー・ハラスメント以外の何ものでもない。

⑧ この行為は、原告の人格権の核である専門性やそれに伴う名誉やプライドを傷つける限りで、原告の人格権を侵害するハラスメントであり不法行為である。

4 ハラスメント4について

(1)認否

すべてにつき否認ないし争う。

(2)原告の主張

① 「被告が、原告以外の教員には専門性を広げる機会を設け、原告に対し、意図的にそのような機会を設けていないということはない」と言う被告の主張は、原告準備書面4において完全に論駁されている。

② 被告は、被告が「原告に対し、教養演習の担当希望を尋ねており、それに対し、原告は、ほとんど回答してこなかった」と主張するが、既に指摘した通り被告が原告に教養演習担当を打診したのは1回のみであるから、「ほとんど」という複数回を前提した語が使われている限りにおいて、被告の主張は虚言である。

③ 被告は次のように主張する。「また、***氏の採用によりフランス語専任教員二人体制となったが、フランス語履修者が僅少となった中、原告の授業が5コマになった際も被告法学部から教養演習の担当を勧めたが、原告は断った」。

 原告が教養演習担当を断ったという被告の主張は全くの虚言である。原告準備書面2と4にある通り、被告が原告に教養演習担当を諮ったのは2011年の「教養演習開講方針」送付の際の1回のみであり、この時に原告は返信しなかった。

 また、被告がフランス語履修者が僅少になったために原告の授業が5コマになったかのように言いなすのも虚言である。

 フランス語履修者増のない状況で***を採用したため、二人のフランス語専任教員の担当コマ数が法学部のみでは少なくなってしまったので、2009年と10年の二年間は、二人のフランス語専任教員各自につき社会学部の授業を1(あるいは2)コマ担当し、合計で各自6コマとしていた。2011年に****氏が社会学部フランス語専任教員に就任したため、原告と***が社会学部のフランス語授業を担当しなくなり、一時的に各自5コマ担当となったまでである。

 したがって、原告の授業が一時的に5コマとなったことは、法学部フランス語専任教員の採用が、被告の主張に反して、履修者数の増減とは関係ないという事実の証拠となるばかりである。

④ 被告は、「教養演習の講義を誰に担当させるか否かは、被告ないし被告法学部の専決・裁量事項であり、仮に希望が通らなかったとしても、人格権の侵害とはいえないことは明らかである」と主張する。

 「被告ないし被告法学部の専決・裁量事項」であることから、「人格権の侵害とはいえないこと」は論理的に帰結し得ない。被告法学部の裁量から予めそれが不正である可能性を排除した誤った前提に基づく誤った推論であるというほかはない。被告法学部の裁量が既に人格権侵害であれば、原告に教養演習を担当させないことが人格権侵害であることは明白であるから、被告の主張は原告の主張への反論として機能し得ない。

⑤ 原告のみに長年の間教養演習を担当させなかった行為は、それが原告を仲間外しし無視することに存する人間関係からの切り離しと原告の精神をさいなむ人格への冒涜である精神的な攻撃によるパワーハラスメントであることに加え、厚生労働大臣の指針にある通り、①優越的な関係を背景とした言動であり、②他の語学教員が教養演習を担当するなか原告にだけそれを担当させないという状況を長年の間維持することに何ら業務上の必要性がなく、それが業務遂行上の手段として不適当な行為であり、しかも当該行為の継続期間が社会通念に照らして許容される範囲を超えるものであることから業務上必要かつ相当な範囲を超えたものであり、③原告の専門性を踏みにじることによって、また原告だけを仲間外しし劣遇することによって、原告に精神的苦痛を与えると同時に、原告が自身の専門研究の深化に基づいて学生に教育を施すことを妨げることにより原告の能力の発揮を阻害することから、原告の就業環境が害されるものである点で明白にパワーハラスメントである。

⑦ この行為はまた「学校法人東洋大学ハラスメントの防止等に関する規程」に定める「パワー・ハラスメント」の定義に従えば、まさに「就労における権力又はその優越的な地位を利用」したものであり、原告の専門性を踏みにじる行為であり、原告にだけ教養演習をやらせないという仲間外しと無視による人間関係からの切り離しであることから、「他の構成員の意に反する不適切で不当な言動」であり、「就労における不利益又は不快感を与え」、「個人としての尊厳を不当に傷つけ」るものであり、上述の理由から「就労環境に悪影響を及ぼすこと」であり、パワー・ハラスメント以外の何ものでもない。

⑧ この行為は、原告の人格権の核である専門性やそれに伴う名誉やプライドを傷つける限りで、原告の人格権を侵害するハラスメントであり不法行為である。

 また、この行為は、原告が自身の専門研究の深化に基づいて学生に教育を施すことを可能とする地位を脅かすという意味でも、原告の人格権を侵害する不法行為である。

⑨ 原告準備書面2及び4で指摘した通り、2011年の法学長文書「教養演習開講について」は、原告の教養演習を開講をあきらめさせるためのものであり、ここに悪意、つまり故意あるいは過失が認められる。

5 ハラスメント5について

(1) 認否

 すべてにつき否認ないし争う。

 (2)原告の主張

① 被告は、委員会の「長」などが互選で決まっていると強調しながら、他方で「原告が20年間、「一切の役職が与えられていなかったとしても、それは互選がなかったまでである」と主張するが、正反対のことを同時に主張することになり、全く支離滅裂な主張であるというほかない。したがって原告の主張への反論として何ら機能していない。

② ほとんどの法学部教員が何らかの役職が与えられるなか、原告にだけ20年以上の間いかなる役職をも与えないのは、明らかに仲間外し・無視による人間関係からの切り離しのハラスメントである。

 また、長年の間役職を与えないことは、原告に対して何らの正当な根拠もなく役職に値しないという評価を与え、原告を不当に貶めることであり、その低評価を法学部の他の構成員に知らせることでもある。これにより、原告は精神的苦痛を感じ、法学部内での評価と立場が悪くなるのであるから、原告の就業環境が悪化することは明白である。したがって、これは明らかにパワーハラスメントである。

③ 原告準備書面1の5頁には、原告に「大学教員として大学の運営とその過程に参加」することを可能とする地位があり、「この地位を保持し行使することについての尊厳が人格権の内容をなす」のであり、「したがってこの地位を脅かす行動が行われると、原告の人格権が侵害されるものとなり、加害行為は、原告の人格権を侵害する違法行為となる」と主張されている。したがって、20年以上もの間、原告だけにいかなる役職をも与えないことは、原告に「大学教員として大学の運営とその過程に参加」することを可能とする地位を脅かすものであり、明らかに人格権侵害の違法行為である。

④ ほとんどの法学部教員が何らかの役職を与えられるなか原告にのみ20年以上の間何らの役職をも与えなかった行為は、それが原告を仲間外しし無視することに存する人間関係からの切り離しと原告の精神をさいなむ人格への冒涜である精神的な攻撃によるパワーハラスメントであることに加え、原告に原告の能力以下の仕事を強要する過小な要求によるパワーハラスメントである。

この行為はまた、厚生労働大臣の指針にある通り、①優越的な関係を背景とした言動であり、②原告のみに対するそのような劣遇に何ら業務上の必要性がなく、それが業務遂行上の手段として不適当な行為であり、しかも当該行為の継続期間が社会通念に照らして許容される範囲を超えるものであることから業務上必要かつ相当な範囲を超えたものであり、③原告に精神的苦痛を与えると同時に、法学部内での原告の立場を弱くし原告の発言力を弱め、それにより原告が自身の能力を発揮して大学の運営に積極的に参加することを妨害し原告を不利益に貶めることから、原告の就業環境が害されるものである点で明白にパワーハラスメントである。

⑤ この行為はまた「学校法人東洋大学ハラスメントの防止等に関する規程」に定める「パワー・ハラスメント」の定義に従えば、まさに「就労における権力又はその優越的な地位を利用」したものであり、仲間外しと無視による人間関係からの切り離しであることから、「他の構成員の意に反する不適切で不当な言動」であり、長年の間役職を与えないことを通して何ら正当な根拠のない低評価を原告に与えることによって「就労における不利益又は不快感を与え」、「個人としての尊厳を不当に傷つけ」、原告に精神的苦痛を与えると同時に、上述の理由によって「就労環境に悪影響を及ぼすこと」であり、パワー・ハラスメント以外の何ものでもない。

⑥ ほとんどの法学部教員が何らかの役職を与えられるなか原告にのみ20年以上の間何らの役職をも与えなかった行為は、これを偶然のものであると考えることはできず、被告の悪意、つまり故意過失によるものと考えるほかはない。

6 ハラスメント6について

(1) 認否

すべてにつき否認ないし争う。

(2) 原告の主張

① 被告は、「審査報告書に記載がないこと=審査結果に全く反映されていないということではない」と主張するが、審査報告書への記載の以外に審査結果への反映の痕跡や証拠は一切見出せない以上、この主張は空虚な虚言であるというほかはない。したがって、「原告の査読結果を含め、査読者の審査結果をとりまとめる形で、審査結果報告書が作成されている」という被告の主張も虚言である。

② 原告は、2019年1月28日に東洋大学法学部教務課に自身の所見を記載した非常勤講師業績審査報告書をメールで送っている。「主要業績の査読結果」として****氏の二つの論文についての所見を記している(甲第78号証の2)。それは次に引用する通りである。

まず「アンドレ・ジイドにおける「顔」を巡る闘争」という論文について。「本論は、フランス20世紀の作家アンドレ・ジイド作品の具体的な分析を通し、ジイドの作中人物たちにとって「顔」がどのように現われ「顔」を見るという行為がどのように機能しそれが自己と他者との関係においてどのような役割を果たしているかを検討し、自己と他者の関係性のあり方や他者が自己に対して作る虚像との抗争というジイド作品における重要な問題を解明することに成功している。よって、本論の著者は、本学法学部のフランス語非常勤講師としてフランス語の授業をするに十分な力量をもっているものと思量する」。

 次に「アンドレ・ジイド作品における日記の権力」という論文について。「本論の著者は、アンドレ・ジイドの作品群を他者によって「正真正銘の自分」やそうありたいと願う自己の姿から阻害された登場人物たちがそれを回復するための闘争を繰り返している場であると捉えている。本論では、他者に不当に押し付けられる自己のイメージに対して抵抗する闘争における登場人物間のイメージの調整や再構築のための道具としての「日記」が具体的な作品分析を通して考察されている。分析の結果、著者は「日記」が他者との闘争のなかで有効な道具として機能することの困難を結論づけ、この困難がジイドをして「日記」だけでなく自伝的小説や書簡など他の形式に赴かせたと推論し、「日記」をこれらの諸形式との関わりのなかに位置づけることに成功している。よって、本論の著者は、本学法学部のフランス語非常勤講師としてフランス語の授業をするに十分な力量をもっているものと思量する」。

 しかるに、甲第16号証として訴状に添付された「東洋大学 非常勤講師候補者の審査結果報告書」には原告が所見を書き込んだ「主要業績の査読結果」に関わる欄はなく、所見としては、「教育業績評価」、「研究業績評価」、そして「総合判定」として当時の法学部長である井上貴也記の「資格審査委員会所見」の三つの欄があるのみである。「教育業績評価」、「研究業績評価」の欄には無署名の所見が載せられているが、これは副査とされている文学部の*****教授に電話で確認したところ、***教授の所見であるとのことである。

 まずここでは、担当する仕事に不正な形で序列がつけられている。

 「総合判定」に分類された****法学部長の「資格審査委員会所見」がこの審査に関する最終判断であるから、当然一番重きを置いた扱いとなっている。次いで、副査の***教授の「教育業績評価」、「研究業績評価」がそれに次ぐ総合評価の位置づけとなっている。主査の原告の担当した「主要業績の査読結果」は、個別論文に関する所見であり、研究に関わる総合評価である朝比奈教授担当の「研究業績評価」の下に位置付けられている。

 しかるに、主査であり法学部教授である原告が副査である***文学部教授の担当した「教育業績評価」、「研究業績評価」を担当し、逆に副査である朝比奈教授が「主要業績の査読結果」を担当するのが本来あるべき役割配分であったであろう。ところが、****法学部長を始めとする被告及び東洋大学法学部は、原告が法学部教授であることからやむなく原告を主査としたものの、事実上の役割配分において、副査の***教授の仕事より一段し位置付けられる下働き的と言ってもよい「主要業績の査読結果」という仕事を原告に課し、そのことによって原告を貶め、原告の人格権の核心を構成する原告のフランス文学者としての専門性・価値・プライド・名誉を損傷し否定するハラスメント及び不法行為を犯している。

 しかも前述の通り、甲第16号証として訴状に添付された「東洋大学 非常勤講師候補者の審査結果報告書」には原告の所見は全く掲載されず、そもそも原告の担当した「主要業績の査読結果」欄さえ全く設けられていない。つまり、「東洋大学 非常勤講師候補者の審査結果報告書」において、この報告書のために原告がやった仕事は全く無視され、なかったことにされている。

 さらに、***文学部教授担当の「教育業績評価」、「研究業績評価」にも、****法学部長担当の「資格審査委員会所見」にも、原告の所見は全く反映されていない。

 ***文学部教授担当の「教育業績評価」、「研究業績評価」を次に引用する。

 まず「教育業績評価」である。「*氏は博士後期課程在籍により、教歴2年相当と換算した他、慶應義塾文学部非常勤講師としての教歴を有している。加えて、高等学校でもフランス語の非常勤を勤めた経験も有しており、本学部の初修外国語としてのフランス語非常勤講師として「フランス語ⅡAA/AB、フランス語ⅡBA/BB・ⅢA/B/ⅣA/B」を指導する能力・資格を有すると認められる」。

次いで「研究業績評価」である。「*氏は、20世紀のフランスの作家アンドレ・ジイドの作品研究を行っている。先行研究にも目を配りつつ、現在思想の視点を取り入れるという斬新さを持ち、明確な論の構成を持って展開されている。フランス語原典を丹念に参照しながら展開される考察から確かなフランス語力が窺われることから、本学法学部のフランス語非常勤講師として、十分な力量を持っていると評価する」。

 「教育業績評価」が*氏の論文についての所見である原告の「主要業績の査読結果」を全く反映していないことは当然としても、「研究業績評価」もまた「主要業績の査読結果」を全く反映していない。明らかに朝比奈教授は原告の「主要業績の査読結果」を全く参照せずに、原告とは全く没交渉に「教育業績評価」と「研究業績評価」を作成している。しかしこれはあってはならないことである。「研究業績評価」は当然のことながら「主要業績の査読結果」を踏まえて書かれねばならない。

しかるに****法学部長を始めとする被告及び東洋大学法学部は、***教授に原告の「主要業績の査読結果」を見せることなしに、「教育業績評価」と「研究業績評価」を依頼したために、***教授の「研究業績評価」は原告の「主要業績の査読結果」とは全く関係なく書かれ、したがって「主要業績の査読結果」を何ら反映しないものとなった。「主要業績の査読結果」を参照せずに書かれた「研究業績評価」は本来無効なものであり、したがってその「研究業績評価」と「教育業績評価」を参照して書かれた「総合判定」として位置付けられた****法学部長の「資格審査委員会所見」も必然的に無効なものとなる。したがって、無効な「資格審査委員会所見」に基づいて結論を出したこの審査の過程自体は不正なものである。

 「総合判定」としての「資格審査委員会所見」は、原告の「主要業績の査読結果」を全く参照していない一方で、***教授の「教育業績評価」と「研究業績評価」の方は一部コピペするくらいに反映している。以下が****法学部長による「総合判定」としての「資格審査委員会所見」の引用である。

 「*氏は、博士後期課程在籍による教歴換算の他、他大学でのフランス語非常勤講師としての経験、高等学校での教諭としての経験も有している。研究業績においてもフランス語原典を丹念に参照しながら展開される考察から確かなフランス語力が窺われることから、本学法学部のフランス語非常勤講師として十分な見識と能力を持った人物であると評価できる」。

 ****法学部長による「資格審査委員会所見」の最初の一文「*氏は、博士後期課程在籍による教歴換算の他、他大学でのフランス語非常勤講師としての経験、高等学校での教諭としての経験も有している」は、***教授による「教育業績評価」の「*氏は博士後期課程在籍により、教歴2年相当と換算した他、慶應義塾文学部非常勤講師としての教歴を有している。加えて、高等学校でもフランス語の非常勤を勤めた経験も有しており」を踏まえつつ短縮したものである。さらに、「資格審査委員会所見」の「研究業績においてもフランス語原典を丹念に参照しながら展開される考察から確かなフランス語力が窺われることから、本学法学部のフランス語非常勤講師として十分な見識と能力を持った人物であると評価できる」という文は、明らかに***教授による「研究業績評価」の「フランス語原典を丹念に参照しながら展開される考察から確かなフランス語力が窺われることから、本学法学部のフランス語非常勤講師として、十分な力量を持っていると評価する」[下線は引用者による]という文をほとんどそのまま踏まえ、下線部に至ってはそのままコピペされている。

 このように、****法学部長は、***教授の文章についてはこれを踏まえたことをはっきりと示しつつ、それによって、***教授のフランス文学者としての見識・専門性等を尊重している。そして、これによって、このように一教員の見識や専門性を尊重することが大学における常識であり、遵守されねばならない責務であることを示している。それに対して、****法学部長を始めとする被告及び東洋大学法学部は、原告に対しては、原告に所見を書かせておきながらその文章を審査結果報告書に全く掲載しないのみならず、原告の文章を全く参照し踏まえることすらせず、原告のフランス文学者としての知見、見識、専門性、そしてそれらに伴うプライドや名誉を踏みにじり、原告の人格権を侵害するという不法行為を明らかに意図的に悪意をもって犯している。

 ****法学部長を始めとする被告及び東洋大学法学部は、このように原告の「主要業績の査読結果」を全く掲載もしないし踏まえもしない「東洋大学 非常勤講師候補者の審査結果報告書」を作成することを通して、原告が自身のフランス文学の専門家としての経験、知見、見識、専門性を発揮して書いた「主要業績の査読結果」を全く無用で無益なものとみなし無視し去ることによって、原告の専門性、プライド、名誉を損傷し原告の人格権を侵害するという不法行為を犯したのである。

 端的に言って、審査結果報告書が主査である原告の所見を全く掲載もせず踏まえもしない一方で副査である***教授の所見のみを掲載するということは、通常はあり得ない。****法学部長を始めとする被告及び東洋大学法学部がなぜこのような普通はあり得ないような内容の「東洋大学 非常勤講師候補者の審査結果報告書」を作成したかと言えば、それはフランス文学者としての専門性を核とする原告の人格を攻撃し、原告の精神を意図的に悪意をもってさいなむために他ならない。ここに被告不法学部の悪意、つまり故意あるいは過失が認められる。

③ 被告は次のように主張する。「原告を人事に関わらせないということであれば、原告を主査とすることから拒否することになるが、原告は非常勤講師候補者の主査を務めており、主査としての業務を果たしている」。しかし「原告を主査とすることから拒否すること」のみが「原告を人事に関わらせないということ」ではなく、主査にしながらも原告を極力人事に関わらせないことは可能であるので、この推論は誤っている。事実、原告を形だけ主査にしながら、主査として扱わず原告を無視し、原告が主査としての業務を果たすことを事実上妨げたことは前述した通りである。

④ 「東洋大学 非常勤講師候補者の審査結果報告書」に原告の所見を反映させなかった行為は、原告を仲間外しし無視することに存する人間関係からの切り離しによるパワーハラスメントであり、原告の精神をさいなむ人格への冒涜である精神的な攻撃によるパワーハラスメントであり、さらに原告の所見を全く無視し原告の労働を不要なものにしたことから不要な労働の強制という過大な要求によるハラスメントでもある。それはまた、厚生労働大臣の指針にある通り、①優越的な関係を背景とした言動であり、②主査である原告の所見を副査のそれより下位に置いたり、審査結果報告書に全く掲載もせず反映もさせないことに何ら業務上の必要性がなく、それが業務遂行上の手段として不適当な行為であることから業務上必要かつ相当な範囲を超えたものであり、③原告に精神的苦痛を与えると同時に、法学部フランス語非常勤講師審査という原告が当然果たすべき大学業務への十全なる参加を妨げ、原告の能力の発揮を妨害することから、原告の就業環境が害されるものである点で明白にパワーハラスメントである。

⑤ この行為はまた「学校法人東洋大学ハラスメントの防止等に関する規程」に定める「パワー・ハラスメント」の定義に従えば、まさに「就労における権力又はその優越的な地位を利用」したものであり、仲間外しと無視による人間関係からの切り離しであり過大な要求であることから、また原告のフランス文学者としての専門性を傷つけることから、「他の構成員の意に反する不適切で不当な言動」であり、「就労における不利益又は不快感を与え」、「個人としての尊厳を不当に傷つけ」、原告に精神的苦痛を与えると同時に、上述の理由から「就労環境に悪影響を及ぼすこと」であり、パワー・ハラスメント以外の何ものでもない。

⑧ この行為は、原告の人格権の核であるフランス文学者としての専門性やそれに伴う名誉やプライドを傷つける限りで、原告の人格権を侵害するハラスメントであり不法行為である。

 また、この行為は、原告が自身の専門研究の成果を生かしつつ大学運営に参加することを可能とする地位を脅かす点においても、原告の人格権を侵害する不法行為である。

7 ハラスメント7について

(1) 認否

すべてにつき否認ないし争う。

(2) 原告の主張

① 被告は、「留学生試験の採点を担当するか、面接を担当するかは、被告法学部に裁量があり、教員の希望に沿って決めるわけではない」と主張するが、原告はその裁量がすなわちハラスメント及び人格権侵害の不法行為を構成すると主張してるので、被告の主張は自身のハラスメントを不当に正当化しているにすぎない。

② 2007年から少なくとも2014年まで(あるいは2015年まで)の8年間(あるいは9年間)にわたって、被告及び東洋大学法学部は、教授会資料に載る10月・11月推薦入試出向教員一覧の一番上に他から切り離した形でしかも他の教員の氏名より大きな活字で原告の氏名を印刷した。ちなみに原告の氏名は一覧表などに載る時はいつも一番下や最後に書かれるので、一番上に書かれたのはこの時だけである。

 留学生日本語試験採点の日は法学部での試験監督出向は原告だけであり、被告及び東洋大学法学部がこれを10年間にわたってさせたのは明らかに法学部内での原告の人間関係からの切り離しを狙ったものである。そして、原告が法学部内で人間関係から隔離され仲間外しされていることを新任教員も含めた法学部教員たちに象徴的に示すために、そして原告に対しても自身が仲間外しされていることをはっきり示し、これによって原告に精神的苦痛を与え原告の精神をさいなむために、教授会資料に挿入される、出向日ごとに入試業務担当教員を分類・区分した10月・11月推薦入試出向教員一覧表において、例えば10月19日であれば、一番上に置かれた10月19日の欄に一人だけ書かれた原告の氏名をことさら大きな活字で印刷し、その下の別の日にち欄に印刷された多数の法学部教員の氏名との対照を際立たせることによって、一覧表の上でも原告が隔離され差別されているということを示したのである。

③ 原告のみにほぼ10年連続で留学生日本語試験採点の仕事を強要した行為は、それが原告を仲間外しし無視することに存する人間関係からの切り離しによるパワーハラスメントであり、原告の精神をさいなむ人格への冒涜である精神的な攻撃によるパワーハラスメントであることに加え、ひらがなで書かれた日本人であれば誰でも採点可能なごく基本的な日本語の採点を法学部では原告のみに10年連続で強要したという事実より、明らかに過小な要求によるパワーハラスメントである。

この行為はまた、厚生労働大臣の指針にある通り、①優越的な関係を背景とした言動であり、②ほぼ10年連続で留学生日本語試験採点の仕事を原告のみに強要することに何ら業務上の必要性がなく、それが業務遂行上の手段として不適当な行為であり、10年連続という期間が社会通念に照らして許容される範囲を超えるものであることから、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものであり、③人間関係からの切り離しと過小な要求によって原告に精神的苦痛を与えると同時に、ほぼ10年間にわたって原告の入試業務を留学生日本語試験採点に限定することによって原告の通常の大学教員としての正常かつ健全な入試業務への参加を、つまり大学運営への十全なる参加を妨害し原告の能力の発揮を阻むことから、原告の就業環境が害されるものである点で明白にパワーハラスメントである。

④ この行為はまた「学校法人東洋大学ハラスメントの防止等に関する規程」に定める「パワー・ハラスメント」の定義に従えば、まさに「就労における権力又はその優越的な地位を利用」したものであり、人間関係からの切り離しと過小な要求であることから、「他の構成員の意に反する不適切で不当な言動」であり、「就労における不利益又は不快感を与え」、「個人としての尊厳を不当に傷つけ」るものであり、原告に精神的苦痛を与え、原告の一大学教員としての正常な入試業務への参加を妨げることから「就労環境に悪影響を及ぼすこと」であり、パワー・ハラスメント以外の何ものでもない。

⑧ この行為は、日本人であれば誰にでも可能な日本語能力の不完全な留学生によるひらがなで書かれた解答の採点業務を法学部のみならず東洋大学全学で原告のみにほぼ10年連続で強要することにより、フランス文学者としての原告の人格権の核である専門性をことさら無視し、それに伴う名誉やプライドを傷つける限りで、原告の人格権を侵害するハラスメントであり不法行為である。

 また、この行為は、原告が入試採点業務を通して大学運営に参加することを可能とする地位を脅かす点においても、原告の人格権を侵害する不法行為である。

⑨ 東洋大学でただ一人原告のみに留学生日本語試験採点をほぼ10年連続で強要する行為は、偶然にはなされ得ず、被告に原告への悪意、つまり故意あるいは過失によるものであると考えるほかはない。

8 ハラスメント8について

(1) 認否

すべてにつき否認ないし争う。

 (2)原告の主張

① 被告法学部教務課職員が、原告に何ら相談もなく原告の原稿を修正した行為及び目の前にいる原告に全く相談することなく原告の原稿の修正点についての検討を続行しようとした行為は、いずれも原告も交えて検討するのが常識であることから、極めて異常な行為である。いずれの行為においても、原告に相談するというごく自然な選択肢を被告法学部教務課職員が敢えて採らなかったという事実に原告を仲間外ししようという悪意、つまり故意過失が認められる。同時に、原告を仲間外しすることが法学部内で常態化していたことも確認される。

② 被告は、「内容面での修正ではなく形式面を修正しようとしただけであって」と主張するが、内容と完全に切り離された形式はない。また「形式面」だけであるということから「何ら人格権侵害にはあたらない」ことは論理的に帰結し得ない。したがって、被告の主張は無効である。

③ 2018年6月25日に「勝手に題名を書き換えたり、段落分けをしたという事実」を原告が確認し、7月3日に被告の引用する水島のメールがあったことは原告準備書面2で確認済みである。

④ 原告の証言を何らの根拠もなく「被害妄想」と決めつけるのは単なる誹謗中傷以外の何ものでもない。

⑤ 被告法学部職員が原告の研究計画書を勝手に改竄した行為は、それが原告を仲間外しし無視することに存する人間関係からの切り離しによるパワーハラスメントであり、フランス文学者としての、そして大学教員としての原告の精神をさいなむ人格への冒涜である精神的な攻撃によるパワーハラスメントである。

この行為はまた、厚生労働大臣の指針にある通り、①優越的な関係を背景とした言動であり、②法学部教務課職員が原告を無視して原告の研究計画書に手を入れ、それについての検討を原告を交えずにすることに何ら業務上の必要性がなく、それが業務遂行上の手段として不適当な行為であることから業務上必要かつ相当な範囲を超えたものであり、③人間関係からの切り離しと原告の専門性とそれに伴う名誉やプライドを傷つけることによって原告に精神的苦痛を与えると同時に、原告の研究テーマについての法学部教務課職員の不当な介入によって原告が自由に自身の研究を追及することを妨害することから、原告の就業環境が害されるものである点で明白にパワーハラスメントである。

④ この行為はまた「学校法人東洋大学ハラスメントの防止等に関する規程」に定める「パワー・ハラスメント」の定義に従えば、まさに「就労における権力又はその優越的な地位を利用」したものであり、上記の理由から、「他の構成員の意に反する不適切で不当な言動」であり、「就労における不利益又は不快感を与え」、「個人としての尊厳を不当に傷つけ」るものであり、「就労環境に悪影響を及ぼすこと」であり、パワー・ハラスメント以外の何ものでもない。

⑧ この行為は、原告の人格権の核であるフランス文学者としての、そして大学教員としての専門性やそれに伴う名誉やプライドを傷つける点で、原告の人格権を侵害するハラスメントであり不法行為である。

 またこの行為は、法学部教務課職員が原告の研究領域に不当に介入して原告の研究の自由な展開を妨害するものであることから、原告準備書面1にある通り、原告が「自らの研究テーマについて学究を深め」ることを可能とする地位を脅かすものであり、その意味でも原告の人格権を侵害する不法行為である。

9 ハラスメント9について

(1) 認否

すべてにつき否認ないし争う。

 (2)原告の主張

① 被告の主張はすべて原告準備書面3の12頁~13頁及び原告準備書面4の13頁~14頁において完全に論駁されている。よって何ら反論としての有効性をもたない。

 被告は、10年以上も続く予算格差を是正する試みを全くせず、そればかりか、海外研修に専任教員の付き添いを急遽義務付けてフランス語海外研修実現を困難にしたり、予算格差を是正するためにフランス語予算を増やして欲しいという原告の度重なる訴えを拒否あるいは無視し、「2022年度法学部予算執行要領」によって教材費によるDVD購入を禁じるなど、悪意、つまり故意過失をもって予算格差を維持あるいは拡大することを図った。したがって、明らかにハラスメントが存在する。

② 被告法学部が法学部4語学のうちフランス語のみに10年以上の長きにわたって予算をつけなかった行為は、それが法学部唯一のフランス語専任教員である原告を仲間外しし無視することに存する人間関係からの切り離しによるパワーハラスメントであり、フランス語教員としての原告の精神をさいなむ人格への冒涜である精神的な攻撃によるパワーハラスメントである。

この行為はまた、厚生労働大臣の指針にある通り、①優越的な関係を背景とした言動であり、②10年以上もの間フランス語のみに予算をつけず、フランス語と他言語との間の予算格差を維持することに何ら業務上の必要性がなく、それが業務遂行上の手段として不適当な行為であり、10年以上という期間が社会通念に照らして許容される範囲を超えるものであることから、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものであり、③人間関係からの切り離しと原告の専門性とそれに伴う名誉やプライドを傷つけることによって原告に精神的苦痛を与えると同時に、原告が学生に提供し得るフランス語教育の質を高めることを妨害することから、また原告が大学内において自らの研究成果に基づき多様な手段を用いて学生に教育を施すことを妨害し原告の能力を発揮を阻害することから、原告の就業環境が害されるものである点で明白にパワーハラスメントである。

③ この行為はまた「学校法人東洋大学ハラスメントの防止等に関する規程」に定める「パワー・ハラスメント」の定義に従えば、まさに「就労における権力又はその優越的な地位を利用」したものであり、上記の理由から、「他の構成員の意に反する不適切で不当な言動」であり、「就労における不利益又は不快感を与え」、「個人としての尊厳を不当に傷つけ」るものであり、「就労環境に悪影響を及ぼすこと」であり、パワー・ハラスメント以外の何ものでもない。

⑧ この行為は、フランス語劣遇を通して、原告の人格権の核であるフランス文学者及びフランス語教員としての専門性やそれに伴う名誉やプライドを傷つける点で、原告の人格権を侵害するハラスメントであり不法行為である。

またこの行為は、原告が大学内において自らの研究成果に基づいて学生に教育を施すことを可能とする地位を脅かすものであり、その意味でも原告の人格権を侵害する不法行為である。

⑨ 原告準備書面3の13頁で既に指摘した通り、「原告が予算措置に対する要望をしたにもかかわらず被告がそれを無視して他語学科目の予算措置には増加計上した事実経緯」によりこの行為には故意過失が認められる。

10 被告が原告の授業コマ数を4コマに減らしたことについて

(1)認否

すべてにつき否認ないし争う。

(2)原告の主張

① 被告は「大学の授業も対面授業を基本とする方針となった」と主張するが、原告準備書面4の18頁に指摘した通り、数多くの非対面授業が開講されているなかで、また「2023年度教育課程実施及び授業運営等の考え方について」(乙第10号証、16頁、18頁)にある通り、被告が科目によっては非対面授業開講を勧めており、その上非対面授業としては双方向性で劣るオンデマンド授業を勧めている状況において、原告の授業だけを何としても対面にすることに相当な理由はなく、これに固執することは原告への悪意によるものと考えるほかはない。

② 被告は「原告が正当、客観的な理由を示すことなく、非対面の授業に固執した」と主張するが、原告準備書面3に指摘した通り、原告が例外的少数者であるくも膜下出血生存者である事実、公知の事実である新型コロナと脳血管疾患や心疾患など循環器系疾患との因果関係等はまさに「正当、客観的な理由」である。これを「正当、客観的な理由」であると認めないところに、原告のくも膜下出血を「不知」としたことと相俟って、被告の原告への根強い悪意が確認される。

③ 被告は「被告が、学生の対面での授業を受ける権利を第一に考え」と主張するが、10年以上フランス語に予算をつけないことにより、また原告準備書面4の19頁~20頁に指摘した通り、学生に多大な不利益を与えた被告法学部が学生のためを思うポーズを取るのは、原告に対する自身の悪意あるハラスメントを不当に正当化するための口実によるものであると言うほかはない。

また被告が本当にそう考えているならば、法学部では原告の非対面授業以外に非対面授業は開講されていないはずであるが、事実は多数開講されている。(甲第70号証)被告の主張が虚言である証左である。

④ 「友人作り」は双方向型オンライン授業でも十分可能である。原告は、2020年度及び21年度に希望学生たちに授業後残ってもらって学生同士話し合い、ラインID交換などする機会を与えた。したがって、「友人作り」はただの口実であり、原告に対面授業を強要する正当は理由とはなり得ない。

⑤ 「3文科高第9号」(令和3年4月2日)には次のようにある。「新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、本来授業計画において面接授業の実施を予定していた授業科目に係る授業の全部又は一部を面接授業により予定通り実施することが困難な場合において、大学設置基準第25条1項等に規定する面接授業の特例的な措置として遠隔授業を行うなどの弾力的な運用が認められているが、[…]」(甲第69号証)。

 つまり、原告の非対面授業は「大学設置基準第25条1項等に規定する面接授業の特例的な措置」としての「遠隔授業」であるので、被告はこれを大学設置基準第25条2項に規定する「メディア授業」としてではなく通常の対面授業として扱わねばならない。したがって、「大学設置基準第25条1項等に規定する面接授業」として扱うべき原告の非対面授業を対面授業と対置して、学生に対し「対面/非対面の希望調査」を行うことは大学設置基準に反する法令違反の不正である。

 そもそも通常の対面授業として扱われるべき原告の非対面授業に対置し得る対面授業を学生の選択肢として設定することが不正である。被告は、原告がこれまでずっと担当して来た法学部1年生向けフランス語4クラス担当から2023年度に原告を外し、この4クラスを対面授業として設定し新たに採用した非常勤講師に担当させた。その上で、新入生に対面/非対面という対立軸以外の情報を与えずに希望調査をすれば対面授業を希望する学生が多数となることは当然である。

 被告のやるべきは反対に、原告の非対面授業を対面授業として設定し、万が一対面授業を希望する学生がいたとしても原告の命や健康を守るために事情を説明して原告の非対面授業を受けさせることであった。

⑥ 被告が当然なすべきことをなさず、原告の非対面授業に対置すべき対面授業を2023年度に新たに設置し、学生に希望調査を施して後者を選ばせるという合理性を全く欠いた法令違反の行為を敢えてなしたのは、原告の授業を受講する学生を減らすことにより原告を不利益に陥らせようと悪意をもって企図したからにほかならない。被告は、原告が自身の命を守るために非対面授業にしていることを認める代わりに非対面授業をすることで原告に不利益を生じさせようと悪意をもって画策したに過ぎない。被告が原告に対面授業を強要する際にも、非対面授業を認める代わりに原告を不利益に貶める際にも、一貫して確認されるのは、被告が原告に不利益を生ぜしめ原告の心身をさいなむことを目論む悪意のみである。ここに被告の故意過失確認される。

 被告は「授業を対面に戻すと判断したことは何ら不合理ではなく、それを実施できない者のコマ数が減少することには相当性がある」と主張するが、上述の通り、被告の判断は極めて不合理かつ不正なものであるから、原告のコマ数を減らしたことに相当性など全くなく、被告の主張は無効であるというほかはない。

⑦ 被告は、被告の教養演習開講を妨害する時には「法学部時間割編成方針」を援用し、語学教員は6コマ担当すべきだとし、また第一準備書面においてもそのように主張している。しかるに、原告の授業を減らす時には、6コマやる必要はないと反対の主張している。つまり、被告にとっては、原告が不利益に貶められるのであれば、ある時は6コマやるべきであり、ある時は6コマやる必要はないということであり、この両者に一貫して認められるのは、原告を不利益に陥れ、原告の精神を苛まんとする被告の悪意のみである。ここでも被告の故意過失が証明される。

 被告は、「6コマではなく5コマが基準であることを附言する」と主張するが、「法学部時間割編成方針」には「6コマを基本とする」とあり、「教育課程実施及び授業運営等の考え方」には週5コマ以上担当することが「原則」であるとある。「原則」を「基本」に優先させる根拠が全くなく、被告の主張は通らない。被告は、原告にハラスメントしたりハラスメントを不当に正当化する都合に合わせて6コマと言ったり5コマと言ったりするだけであって、被告の主張が論としての体をなしていないことは明白である。

⑧ 被告の執拗なる診断書要求が不要なことや遂行不可能なことの強制による過大な要求というパワーハラスメントであることは、原告準備書面4の18頁及び甲第71号証の4にある「学長回答」によって証明されている。「学長回答」には、「学生に非対面で実施することについて可否を聞き、了解が得られたら、特別に非対面とすることを認め、コロナのレベルがゼロになったら対面での授業を行う、ということを誓約書として出してもらうような方法もあろうかと思います」とあり、診断書が必要ないことを明白に証している。

 そして、原告は、甲第71号証の3、5,6として提出された**法学部長へのメールで、原告が非対面授業をする必要性を強調し、対面授業の強要と診断書要求がハラスメントであることを再三指摘している。したがって、原告が診断書の提出を「拒否し続けていたため、非対面での授業の正当性が判断できなかった」という被告の主張は虚言であるというほかはない。

⑨ 被告は次のように主張する。「今回、原告の担当コマ数が4コマになったのは、上記の理由があり、合理的な理由もあることから、4コマへ減少したことは何らハラスメントには該当しない」。

 しかし、「教育課程実施及び授業運営等の考え方」に週5コマ以上担当することが「原則」であるとある以上、原告に授業を4コマにしたことは明らかに学内規則違反であり、合理的な理由があるとは言えない。

⑩ 被告が2023年度の原告の授業を週6コマから週4コマに減らした行為は、それが原告をそれまで原告が担当していた1年生4クラス担当から外し非常勤講師にこれを委ねることによって事実上法学部フランス語教育体制から原告を排除するという行為に伴われる以上、仲間外しし無視することに存する人間関係からの切り離しによるパワーハラスメントであり、フランス語教員としての原告の精神を苛む人格への冒涜である精神的な攻撃によるパワーハラスメントであり、さらに法学部専任教員に通常要求される週6コマを原告にさせないことにより、業務上の合理性なく仕事を与えないことに存する過小な要求によるパワーハラスメントである。

この行為はまた、厚生労働大臣の指針にある通り、①優越的な関係を背景とした言動であり、②週6コマが常識であるところ学内規則に違反してまで原告の授業を週4コマとすることに何ら業務上の必要性がなく、それが業務遂行上の手段として不適当な行為であることから業務上必要かつ相当な範囲を超えたものであり、③人間関係からの切り離しと原告の専門性とそれに伴う名誉やプライドを傷つけることによって原告に精神的苦痛を与えると同時に、コマ数を減らすことにより原告の教育活動を妨害し原告のフランス語教員としての能力の発揮を妨げることから、原告の就業環境が害されるものである点で明白にパワーハラスメントである。

⑪ この行為はまた「学校法人東洋大学ハラスメントの防止等に関する規程」に定める「パワー・ハラスメント」の定義に従えば、まさに「就労における権力又はその優越的な地位を利用」したものであり、上記の理由から、「他の構成員の意に反する不適切で不当な言動」であり、「就労における不利益又は不快感を与え」、「個人としての尊厳を不当に傷つけ」るものであり、「就労環境に悪影響を及ぼすこと」であり、パワー・ハラスメント以外の何ものでもない。

⑫ この行為は、原告の人格権の核であるフランス文学者及びフランス語教員としての専門性の発揮を妨げ、それに伴う名誉やプライドを傷つける点で、原告の人格権を侵害するハラスメントであり不法行為である。

またこの行為は、原告が大学内において自らの研究成果に基づいて学生に教育を施すことを可能とする地位を脅かすものであり、その意味でも原告の人格権を侵害する不法行為である。

11 被告が2021年度、2022年度の2年間の研究費の一部を原告に支払わなかったことについて

(1)認否

すべてにつき否認ないし争う。

(2)原告の主張

① 被告は、「支払い明細書では、カード利用による引き落としが確認できないため、カード利用明細書の提出により支払いを確認している」と主張するが、引き落とし日についてはカード会社ごとに決まっており、支払日が確定すれば引き落とし日も確定するのであるから、クレジットカード会社発行の請求明細書の提出を求めるのはハラスメント以外の何ものでもない。

② 被告は「この扱いは、原告のみならず教員全員に適用されており、原告のみ不利益に扱ってはいない」と主張するが、何らの証拠をも示さない以上、この主張は全く無効であると考えるほかはない。

③ 消費税法上正式のものではないクレジットカード会社発行の請求明細書でも可とするのであれば理解可能であるが、消費税法上正式の書類である支払い明細書を提出しても受け付けず、研究費を支払いもしないという行為は、明らかに合理性を欠いた不当なものであり、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものであるというほかはない。

④ 被告が2021年度、2022年度の2年間の研究費の一部を原告に支払わなかった行為は、それが、原告の研究活動を妨害することにより、フランス文学者語教員としての原告の精神をさいなむ人格への冒涜である精神的な攻撃によるパワーハラスメントであり、業務上明らかに不要なことの強制であり、原告の研究活動という仕事の妨害である点で、過大な要求によるパワーハラスメントである。

この行為はまた、厚生労働大臣の指針にある通り、①優越的な関係を背景とした言動であり、②法的に正式な書類を受けつけようとしないこと及びそれを受け取っても研究費の支払いをしないことに何ら業務上の必要性がなく、それが業務遂行上の手段として不適当な行為であることから、また、原告のメールでの訴えを何度も拒否していることにより、当該行為の回数が社会通念に照らして許容される範囲を超えるものであることから、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものであり、③原告の研究活動の妨害によって原告の専門性の発揮を妨げることを通して原告に精神的苦痛を与えると同時に、研究活動の妨害を通して原告の能力の発揮を阻害することから、原告の就業環境が害されるものである点で明白にパワーハラスメントである。

⑤ この行為はまた「学校法人東洋大学ハラスメントの防止等に関する規程」に定める「パワー・ハラスメント」の定義に従えば、まさに「就労における権力又はその優越的な地位を利用」したものであり、上記の理由から、「他の構成員の意に反する不適切で不当な言動」であり、「就労における不利益又は不快感を与え」、「個人としての尊厳を不当に傷つけ」るものであり、「就労環境に悪影響を及ぼすこと」であり、パワー・ハラスメント以外の何ものでもない。

⑥ この行為は、原告の研究活動を経済的に妨害することにより、原告の人格権の核であるフランス文学者としての専門性の発揮を妨げ、それに伴う名誉やプライドを傷つける点で、原告の人格権を侵害するハラスメントであり不法行為である。

またこの行為は、原告が大学内において自らの研究テーマについて学究を深めることを可能とする地位を脅かすものであり、その意味でも原告の人格権を侵害する不法行為である。

12 被告が原告に診断書提出を執拗に要求して原告が対面授業を拒否することを困難な状況に陥れたことについて

(1)認否

すべてにつき否認ないし争う。

(2)原告の主張

① 被告は「被告が授業の方針として対面授業を原則とすることは何ら問題はなく」と主張するが、被告が原告の健康状態やコロナ流行下であるという状況を一切考慮せず原告に対面授業を強要したという原告準備書面3の16頁の指摘への反論として何ら機能していない。

② 被告は次のように主張する。「体調不良を理由とした非対面授業実施については、診断書の提出を求めるという教務部長文書(乙11)を根拠に、学長と法学部長が対面授業ができない理由として診断書の提出を求めることには合理性がある」。

 しかし、被告が証拠として挙げる「2023年度教育課程実施及び授業運営等の考え方について」(乙第10号証)と「対面単位認定科目における非対面での授業実施の取扱いについて」(乙第11号証)には、新型コロナ流行下における大学の対応について規定した「事 務 連 絡 令和2年7月27日」、「2文科高第864号 令和2年12月23日」、「事 務 連 絡 令和4年3月22日」、「3 文 科 高 第 9 号 令 和 3 年 4 月 2 日」等の文部科学省事務連絡が全く言及されておらず、参照も指示されていないことから、これらの文書がコロナ禍下における大学の授業運営方針として法令に依拠したものではないことは明白である。したがってこれらの文書は、コロナ流行下における大学の授業運営方針を記した文書としては法令に鑑みて無効である。(甲第69号証)

 したがって、無効な文書を根拠とした****学長と****法学部長の原告への診断書提出要求にはいかなる合理性もない。

 また、実際に診断書提出が不要であったことは、本準備書面5の10⑧において証明されている。

③ 被告による執拗な診断書提出要求は、被告が文科省による新型コロナ流行下での特例措置という必要な情報を原告に与えず、のみならずそもそも東洋大学における特例措置の可能性を大学の授業運営方針から法令に反して不当に排除してしまっていることにより、原告が自身の非対面授業のあり方について正確な観念をもち適正に判断し、自分の命と健康を守るのにふさわしい働き方を選択するために最良の意思決定することの困難な状況に原告を置くことから、原告の就業環境を害するものである。また、端的に学長や法学部長ら原告の就労に大きな影響力をもつ大学上層部がこのように原告を騙しつつ原告に敵対しながら不正な要求をする状況が作られてしまったことで、原告の就労がストレスに満ちたものとなり原告の能力の十全な発揮を阻害するものとなったという意味においても、被告による執拗な診断書提出要求が就業環境を害するものであることは明白である。

④ 被告が原告に診断書提出を執拗に要求した行為は、再三の「学長回答」や「学長文書」、被告弁護士からの「御連絡」と題された文書の送付という威圧的な手法によって原告の精神を執拗にさいなむ精神的な攻撃によるパワーハラスメントであり(甲第71号証の2,4,8,10,11)、法令に依拠せず作成された授業運営方針を掲げる文書である「教育課程実施及び授業運営等の考え方について」に基づく要求である点において、そして実際の運用において証明された通り、業務上明らかに不要なことの強制である点で、過大な要求によるパワーハラスメントであり、診断書提出要求に再三抗議する原告の訴えのメールに一切返信せず完全に無視し、原告の訴えがなかったかのように診断書要求を何度も繰り返すことに存する人間関係からの切り離しによるパワーハラスメントである。(甲第71号証の3,5,6)

この行為はまた、厚生労働大臣の指針にある通り、①優越的な関係を背景とした言動であり、②法令に依拠せず作成された授業運営方針を掲げる文書に基づく要求である点において、そして実際の運用において証明されたように、何ら業務上の必要性がなく、それが業務遂行上の手段として不適当な行為であることから、また、法学部長からのメールや「学長文書」等の送付回数が社会通念に照らして許容される範囲を超えるものであることから、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものであり、③再三の「学長回答」や「学長文書」、被告弁護士からの「御連絡」と題された文書の送付という威圧的な手法によって原告に精神的苦痛を与えると同時に、前述の理由によって原告の就業環境が害されるものである点で明白にパワーハラスメントである。

⑤ この行為はまた「学校法人東洋大学ハラスメントの防止等に関する規程」に定める「パワー・ハラスメント」の定義に従えば、まさに「就労における権力又はその優越的な地位を利用」したものであり、上記の理由から、「他の構成員の意に反する不適切で不当な言動」であり、「就労における不利益又は不快感を与え」、文科省による新型コロナ流行下での特例措置を全学でなかったことにして原告を欺きつつ原告に自身の命と健康に関わる決定を強要することから「個人としての尊厳を不当に傷つけ」るものであり、「就労環境に悪影響を及ぼすこと」であり、パワー・ハラスメント以外の何ものでもない。

⑤ 文科省による新型コロナ流行下での特例措置により、原告の非対面授業は対面授業として扱われるので、対面授業として通用させるために半数以上を対面授業にする必要はない。にもかかわらず、被告は、原告に診断書を要求する法学部長メールあるいは「学長回答」等において半数以上を対面授業にすることを不当に要求した。原告の健康状態を考えれば、半数以上を対面授業にした場合、原告の生命と健康が危険にさらされる可能性は大きい。矢口悦子学長及び多田英明法学部長ら被告が原告の既往症と公知の事実である新型コロナと脳血管疾患や心疾患など循環器系疾患との因果関係を知りながら原告に半数以上を対面授業とすることを強要したのは、原告の生命と健康を危険にさらそうという悪意、つまり故意過失によるものである。

13 被告が原告の授業評価アンケート結果を低く改竄したことについて

(1)認否

すべてにつき否認ないし争う。

(2)原告の主張

① 原告が証拠を示しつつ主張しているところ、被告にあって何らの反証をも提出せず、ただ否認するというのでは、原告の主張に対する何らの反論をも提出したことにならない。

② 被告が原告の授業評価アンケート結果を低く改竄した行為は、原告の教育活動の成果を貶めることによって、原告の精神をさいなむ人格への冒涜である精神的な攻撃によるパワーハラスメントであり、原告の教育活動という仕事の妨害である点で、過大な要求によるパワーハラスメントであり、それが高等教育推進支援室という学長室に近い全学規模の組織によるものである点で、全学規模で結託して原告の就労の価値を不当に貶める仲間外しに存する人間関係からの切り離しによるパワーハラスメントである。

この行為はまた、厚生労働大臣の指針にある通り、①優越的な関係を背景とした言動であり、②業務上明らかに必要性のない行為であり、業務の目的を大きく逸脱した行為でり、業務遂行上の手段として不適当な行為であることから、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものであり、③原告に精神的苦痛を与えると同時に、原告の授業運営の努力を無にする教育活動の妨害を通して原告の能力の発揮を阻害し、原告の就労に悪影響を及ぼすことから、原告の就業環境が害されるものである点で明白にパワーハラスメントである。

⑤ この行為はまた「学校法人東洋大学ハラスメントの防止等に関する規程」に定める「パワー・ハラスメント」の定義に従えば、まさに「就労における権力又はその優越的な地位を利用」したものであり、上記の理由から、「他の構成員の意に反する不適切で不当な言動」であり、「就労における不利益又は不快感を与え」、フランス語教員としての原告の人格権を侵害することによって「個人としての尊厳を不当に傷つけ」るものであり、「就労環境に悪影響を及ぼすこと」であり、パワー・ハラスメント以外の何ものでもない。

⑥ この行為は、原告の授業運営の努力を無にし、原告の教育活動を妨害することにより、原告の人格権の核であるフランス語教員としての専門性の発揮を妨げ、それに伴う名誉やプライドを傷つける点で、原告の人格権を侵害するハラスメントであり不法行為である。

またこの行為は、原告が大学内において自らの研究に基づいて学生への教育を施すことを可能とする地位を脅かすものであり、その意味でも原告の人格権を侵害する不法行為である。

⑦ 高評価である授業評価アンケート結果を極端に低く改竄することは、原告の教育活動を不当に貶め、原告に不利益を生じさせようとする悪意、つまり故意過失によるものと考えるほかはない。

14 被告が原告の2023年度法学部フランス語授業を原告に全く相談することなく設定したことについて

(1)認否

すべてにつき否認ないし争う。

(2)原告の主張

① 被告が原告の2023年度法学部フランス語授業を原告に全く相談することなく設定した行為は、法学部唯一のフランス語専任教員である原告を仲間外しし無視することに存する人間関係からの切り離しによるパワーハラスメントであり、原告を仲間外しし無視することによって、原告の精神をさいなむ人格への冒涜である精神的な攻撃によるパワーハラスメントであり、原告を授業設定という学部業務に全く参加させないことによって原告の仕事の範囲を狭く限定し、その結果、業務上の合理性なく原告の能力に値するに十分な仕事を与えないことに存する過小な要求によるパワーハラスメントである。

この行為はまた、厚生労働大臣の指針にある通り、①優越的な関係を背景とした言動であり、②法学部唯一のフランス語専任教員である原告を無視し法学部フランス語授業を設定することは普通起こり得ないことであるため、その態様や手段が社 会通念に照らして許容される範囲を超える行為であり、業務上明らかに必要性なく、業務の目的を大きく逸脱した、業務遂行上の手段として不適当な行為であることから、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものであり、③原告に精神的苦痛を与えると同時に、法学部唯一のフランス語専任教員である原告が法学部フランス語授業を設定するに値しないという評価を暗黙のうちに与えることによって原告の当然の権利である大学運営への参加を妨げ、原告の知見やそれに基づく意図が法学部フランス語授業に反映されなくなる危険を孕むものであり、原告の能力の発揮を妨害することから、原告の就業環境が害されるものである点で明白にパワーハラスメントである。

② この行為はまた「学校法人東洋大学ハラスメントの防止等に関する規程」に定める「パワー・ハラスメント」の定義に従えば、まさに「就労における権力又はその優越的な地位を利用」したものであり、上記の理由から、「他の構成員の意に反する不適切で不当な言動」であり、「就労における不利益又は不快感を与え」、フランス語教員としての原告の人格権を侵害することによって「個人としての尊厳を不当に傷つけ」るものであり、「就労環境に悪影響を及ぼすこと」であり、パワー・ハラスメント以外の何ものでもない。

③ この行為は、法学部唯一のフランス語専任教員である原告の人格権の核であるフランス語教員としての専門性の発揮を妨げ、それに伴う名誉やプライドを傷つける点で、原告の人格権を侵害するハラスメントであり不法行為である。

またこの行為は、原告が大学教員として大学の運営に参加することを可能とする地位を脅かすものであり、その意味でも原告の人格権を侵害する不法行為である。

④ 原告が法学部唯一のフランス語専任教員であることから、常識的には原告を法学部のフランス語授業設定に原告を参加させることが常識であるところ、敢えて原告を仲間外しし無視するのであるから、そこには原告を精神的にさいなもうとする悪意、つまり故意過失があるというほかはない。

15 被告が原告に全く相談することなく新たに非常勤講師3名を雇用したことについて

(1)認否

すべてにつき否認ないし争う。

(2)原告の主張

① 被告が原告に全く相談することなく新たに非常勤講師3名を雇用した行為は、原告が20年以上担当していた1年生4クラス担当から原告を外すことを通して、原告をフランス語教育体制から排除することによって、原告の精神をさいなむ人格への冒涜である精神的な攻撃によるパワーハラスメントであり、法学部唯一のフランス語専任教員である原告を仲間外しし無視することに存する人間関係からの切り離しによるパワーハラスメントである。

この行為はまた、厚生労働大臣の指針にある通り、①優越的な関係を背景とした言動であり、②原告の、あるいは法学部のフランス語授業を何としても対面授業にするという目的が何らの合理性をももたぬ、悪意あるハラスメントの口実に過ぎないものであることが証明された以上、業務上明らかに必要性のない行為であり、業務の目的を大きく逸脱した行為であり、業務遂行上の手段として不適当な行為であることから、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものであり、③原告に精神的苦痛を与えると同時に、新たに雇われた非常勤講師たちを法学部フランス語教育体制の主力として、原告を20年以上担当していた1年生4クラス担当から外して付随的役割に追いやり、フランス語教員としての原告の能力の発揮を妨害することによって、原告の就業環境を害するものである点で明白にパワーハラスメントである。

⑤ この行為はまた「学校法人東洋大学ハラスメントの防止等に関する規程」に定める「パワー・ハラスメント」の定義に従えば、まさに「就労における権力又はその優越的な地位を利用」したものであり、上記の理由から、「他の構成員の意に反する不適切で不当な言動」であり、「就労における不利益又は不快感を与え」、フランス語教員としての原告の人格権を侵害することによって「個人としての尊厳を不当に傷つけ」るものであり、「就労環境に悪影響を及ぼすこと」であり、パワー・ハラスメント以外の何ものでもない。

⑥ この行為は、原告を無視することによって、また原告を法学部フランス語教育体制から排除することによって、原告の人格権の核であるフランス語教員としての専門性の発揮を妨げ、それに伴う名誉やプライドを傷つける点で、原告の人格権を侵害するハラスメントであり不法行為である。

またこの行為は、原告が大学教員として大学の運営に参加し、自らの研究に基づいて学生への教育を施すことを可能とする地位を脅かすものであり、その意味でも原告の人格権を侵害する不法行為である。

⑦ 従来、原告と非常勤講師二人で担当していたところを何らの必要性もなく非常勤講師を3人に増やし、しかも原告を20年以上担当していた1年生4クラス担当から外すという行為は、原告を排除しようという悪意、あるいは故意過失なくしてはあり得ない。

16 被告が2023年度1年生フランス語履修者への対面/非対面希望調査によって原告の授業を履修する学生を著しく減らしたことについて

(1)認否

すべてにつき否認ないし争う。

(2)原告の主張

① 被告が2023年度1年生フランス語履修者への対面/非対面希望調査によって原告の授業を履修する学生を著しく減らした行為は、原告の担当する授業の学生を不当に奪うことによって、原告の精神をさいなむ人格への冒涜である精神的な攻撃によるパワーハラスメントであり、法学部唯一のフランス語専任教員である原告に全く相談なしにアンケートを実施し原告の担当する授業の履修者数を極度に減らすことにより、原告を仲間外しし無視することに存する人間関係からの切り離しによるパワーハラスメントである。

この行為はまた、厚生労働大臣の指針にある通り、①優越的な関係を背景とした言動であり、②原告の、あるいは法学部のフランス語授業を何としても対面授業にするという目的が何らの合理性をももたぬ、悪意あるハラスメントの口実に過ぎないものであることが証明された以上、業務上明らかに必要性のない行為であり、業務の目的を大きく逸脱した行為であり、業務遂行上の手段として不適当な行為であることから、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものであり、③原告に精神的苦痛を与えると同時に、新たに雇われた非常勤講師たちを法学部フランス語教育体制の主力として、原告を20年以上担当していた1年生4クラス担当から外して付随的役割に追いやった上で、さらに原告担当の授業から学生を奪うことにより、原告が自身の研究成果に基づく知見を生かして広く学生に教育を施す機会を原告から奪うことを通して原告の能力の発揮を妨害することによって、原告の就業環境を害するものである点で明白にパワーハラスメントである。

⑤ この行為はまた「学校法人東洋大学ハラスメントの防止等に関する規程」に定める「パワー・ハラスメント」の定義に従えば、まさに「就労における権力又はその優越的な地位を利用」したものであり、上記の理由から、「他の構成員の意に反する不適切で不当な言動」であり、「就労における不利益又は不快感を与え」、フランス語教員としての原告の人格権を侵害することによって「個人としての尊厳を不当に傷つけ」るものであり、「就労環境に悪影響を及ぼすこと」であり、パワー・ハラスメント以外の何ものでもない。

⑥ この行為は、原告を無視することによって、また原告を法学部フランス語教育体制から排除することによって、さらに原告が自身の専門研究を生かして広く学生たちに教育を施す機会を原告から奪うことによって、原告の人格権の核であるフランス語教員としての専門性の発揮を妨げ、それに伴う名誉やプライドを傷つける点で、原告の人格権を侵害するハラスメントであり不法行為である。

またこの行為は、原告が大学教員として大学の運営に参加し、自らの研究に基づいて学生への教育を施すことを可能とする地位を脅かすものであり、その意味でも原告の人格権を侵害する不法行為である。

⑦ 原告が非対面授業をしていることに乗じ、対面授業を重んじるという口実を設け、学生に原告の授業についての適切な情報を与えないまま対面/非対面希望調査をすることは、原告の担当する授業の履修者数を減らして原告の教育活動を妨害し、原告に不利益を生ぜしめることを狙った悪意、あるいは故意過失なくしてはあり得ない。

17 被告がスポーツという語を連呼して原告を苛んだことについて

(1)認否

すべてにつき否認ないし争う。

(2)原告の主張

① 被告がスポーツという語を連呼して原告を苛んだ行為は、私的なことに過度に立ち入ることによって個の侵害によるパワーハラスメントであり、原告の精神をさいなむ人格への冒涜である精神的な攻撃によるパワーハラスメントであり、それが法学部教授会を始めとする会議の席上など複数の教職員の集まる場で原告に対してのみなされたことから、原告を仲間外しすることに存する人間関係からの切り離しによるパワーハラスメントである。

この行為はまた、厚生労働大臣の指針にある通り、①学部長を始めとする法学部教職員の圧倒的多数から仲間外しされ孤立した原告を標的になされたことから優越的な関係を背景とした言動であり、②過度に「スポーツ」という語を強調し連呼することにより、業務上明らかに必要性のない行為であり、業務の目的を大きく逸脱した行為であり、その頻度が社会通念に照らして許容される範囲を超える行為であることから、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものであり、③原告に精神的苦痛を与えると同時に、複数の教職員が集まる場でそのように精神を苛まれることにより、そしてそのような行為が連鎖反応的により多くの教職員の間に広まることにより、原告が積極的に大学運営に参加することを妨げることから、原告の就業環境を害するものである点で明白にパワーハラスメントである。

⑤ この行為はまた「学校法人東洋大学ハラスメントの防止等に関する規程」に定める「パワー・ハラスメント」の定義に従えば、まさに「就労における権力又はその優越的な地位を利用」したものであり、上記の理由から、「他の構成員の意に反する不適切で不当な言動」であり、「就労における不利益又は不快感を与え」、「個人としての尊厳を不当に傷つけ」るものであり、「就労環境に悪影響を及ぼすこと」であり、パワー・ハラスメント以外の何ものでもない。

⑥ この行為は、複数の教職員が集まる公の場で原告を苛むものであることから、原告を傷つけ委縮せしめると同時に、それが他の教職員たちに伝播することにより原告の周囲に敵対的な環境を醸成することによって、原告が大学教員として積極的に大学の運営に参加することを可能とする地位を脅かすものであり、原告の人格権を侵害する不法行為である。

⑦ 不必要に「スポーツ」という語を連呼して原告を苛み喜ぶ行為が、原告への悪意、あるいは故意過失なくしてなされることはあり得ない。

18 文科省の特例措置を無視した教務部長名文書について

全学の授業運営方針を提示する教務部長名文書「教育課程実施及び授業運営等の考え方について」は、文科省通達にあったコロナ流行下において非対面授業を対面授業扱いにすることを可能にする特例措置を全く無視しつつ、コロナ流行下ではない平常時の対面授業及び非対面授業にしか言及していない。被告は、法令違反であるこの不正な文書を根拠にして原告に対面授業を強要するハラスメントを企てた。(甲第79号証の2)

 またこの文書と関連する教務部長名文書「非対面単位認定科目の教育課程及び授業運営上の取り扱いの考え方について」の14頁には、「「非対面単位認定科目」として選定する場合の例」として、「知識付与型の授業内容の科目」と並んで、「科目の担当教員(原則として専任教員を除く)に、キャンパスでの実施が困難であるとする、やむを得ない事情があると認められる科目」が挙げられている。(甲第79号証の1)ここに書かれた「原則として専任教員を除く」という注記によって、専任教員の担当科目が「やむを得ない事情」で非対面授業に分類されることは原則不可能にされている。つまり、被告は、文科省の認める特例措置を無視した上で全学の授業運営方針を定めた上で、さらに「やむを得ない事情」で非対面授業にするしかない専任教員がいたとしても、その担当科目を平常時の非対面授業にすらできないように予め決定したのである。

 専任教員をそのように扱う特段の合理的理由のないことから、この注記によって被告が原告の授業を予め非対面授業に分類できないように画策したと考えることが至当である。

上記の両文書はともに、コロナ流行下において原告が自らの健康と命を守るために非対面授業を選択することを不可能にしていることから、また、文科省による特例措置の存在を無視し隠蔽していることから、原告に対するハラスメント目的で作成された不正な文書である。

19 結論

 かくして、ハラスメント1~9のすべて、及び8件の付随的ハラスメント、計17件の事案がすべてパワーハラスメントであり、原告の人格権を侵害する不法行為であることが証明された。

 17件のパワーハラスメントのすべてが、被告が悪意があって原告の精神を苛んでいることを何らかの口実を設けて不当に正当化するという手法を採っている。また、しばしば大学全体で原告にハラスメントを働く法学部を支援する形になっており、その悪意の深刻さと規模の大きさにおいて極めて悪質な前代未聞のパワーハラスメントであると言える。

 大部分のケースで、原告の研究・教育活動を妨害する形となっており、教育基本法第7条、学校教育法第83条に抵触するこのようなパワーハラスメントを犯すのみならず、これを温存し隠蔽せんとする東洋大学のこれ以上の存続を許しておいてよいものであるか議論されねばならないと考える。

以上述べたところに照らし、被告の原告に対する不法行為と安全配慮義務違反が認められ、それに基づく原告の賠償請求が認められるところである。

以 上