東洋大学パワハラ裁判
第一審準備書面2
令和4年(ワ)第16508号 損害賠償請求事件
原 告 福田 拓也
被 告 学校法人東洋大学
準備書面2
2023(令和5)年1月18日
東京地方裁判所 民事部第42部合議A係 御中
原告訴訟代理人
弁 護 士 笹 山 尚 人
弁 護 士 本 間 耕 三
第1 本書面の内容と今後の主張立証予定
被告準備書面(1)に対し、原告は事実面の認否反論を検討するとともに、安全配慮義務、不法行為の内容について、主張するものとして準備をしてきた。ただし、原告の体調不良や、検討する論点の多さがあって、この全てについて原告が次回期日までに準備を行うことができない状況にある。
そこでまず前提として、訴状請求の原因第5において、「1」と項目で主張している事実を、「ハラスメント1」と呼称する。同様に、「2」から「9」までについて、それぞれを「ハラスメント2」「ハラスメント3」、と呼称していき、最後を「ハラスメント9」と呼称する。
本書面においては、訴状請求の原因第5のハラスメント1からハラスメント9までの各事実について、被告が反論しているもののうち、ハラスメント9を除いた8つのハラスメントの事実について、原告の認否反論を述べるものとする。
ハラスメント9についての事実主張、及び本書面とハラスメント9に関する事実、その他背景となる事実を踏まえて、安全配慮義務、不法行為の法的主張については次々回期日までに準備し、本書面及び次回書面に関する証拠も次々回期日までに提出する。
第2 ハラスメント1~8について(被告第1準備書面、第5)についての認否反論
1 ハラスメント1について
(1)認否
この点にかかる、被告第1準備書面、第5,1(5頁)について、フランス語担当教員が**でありその定年退職が2015年3月31日であること、**教員からのメールが「2015年10月23日」であることは、認める。
その余は否認ないし争う。
(2)原告の主張
被告第1準備書面、第5,2(6頁)について、被告は、原告の事実主張に関し、これを否定する主張である。しかし、原告は被告主張の事実面について、誤りである旨を主張する。
① 大学設置基準第13条には次のようにある。「大学における専任教員の数は、別表第一により当該大学に置く学部の種類及び規模に応じ定める教授等の数(共同学科を置く学部にあつては、当該学部における共同学科以外の学科を一の学部とみなして同表を適用して得られる教授等の数と第四十六条の規定により得られる当該共同学科に係る専任教員の数を合計した数)と別表第二により大学全体の収容定員に応じ定める教授等の数を合計した数以上とする」。
② フランス語教員の**氏の教員枠(以下、「**枠」という。)は大学設置基準第13条に定める「別表第二により大学全体の収容定員に応じ定める教授等」に相当する。東洋大学法学部には、この別表第二枠に相当する二人のフランス語教員が割り当てられている。一人は原告であり、もう一人は2015年度までは**氏であった。東洋大学法学部に割り当てられたこの二人のフランス語教員枠が「別表第二により大学全体の収容定員に応じ定める教授等」に相当する以上、それは東洋大学が大学設置基準第13条に従いつつ「大学全体の収容定員に応じ定め」たものである。つまり、東洋大学は、大学全体の収容定員と照らし合わせ、大学全体として必要なフランス語教員数を算定し、その上で法学部に二人のフランス語教員を充当したのである。
③ このような場合、**氏が定年退職したのであれば、被告の正当な選択肢は、**氏の後継としては新たなフランス語教員を雇用することのみである。
④ 教授会の決定がなく、勝手に決定したということは以下の通りである。
2015年10月23日の**語教員**氏から原告宛のメールに添付してある学部長文書には「先般の教授会で」「1名の専任枠で契約制2名の語学関係の教員を採用するということが決まりました」とある。その後の経過から「1名の専任枠」が**枠であることははっきりしている。
翌2016年1月30日の語学懇談会で当時の**学科長が原告に、**枠の中国語・ドイツ語契約制外人講師2名への転用は、2015年12月1日の定例教授会あるいは12月15日の判定教授会で決定されたと明言した(甲8)。
これは、2015年10月23日、**氏のメール添付学部長文書の決定が2015年10月23日以前であることを示す「先般の教授会で」という文言と矛盾する。
学部長文書か**の言述のどちらかが嘘であることになる。
さらに、2016年2月2日定例教授会で、**氏は**枠の中国語・ドイツ語契約制外人講師2名への転用が2015年9月22日の臨時教授会で決まったと言明した。 このように、いつどこの教授会で、**枠の教員採用で臨時教員枠が決まったのか、人によって言うことが全く異なるのであり、教授会で決定した事実を見いだせない。
2 ハラスメント2について
(1) 認否
この点については、被告は事実関係としては、原告の主張事実を争わない。
原告の主張するハラスメント性は認められないとの主張であると思料される。
原告は、この点について、ハラスメントであると主張するものである。
(2)原告の主張
① 紙幅、内容等の点で原稿に問題があった場合には、被告が原稿作成者に連絡し修正を依頼しながら当の原稿の掲載の可否を検討すべきであるのは常識に属する。ましてや原告は東洋大学法学部唯一のフランス語専任教員でありしかもフランスにフランス政府給費留学生として6年半にわたり留学しているパリ大学博士であることから、学生に対して質の高い授業を提供し続けていることからフランス語教育についての能力・見識が十分にあり、フランス語「語学選択のしおり」の適当・不適当に関して一番的確な見解を持っているのが原告である。それを知りながら被告が原告に全く連絡せずに当該原稿を載せなかったことは、被告が原告を故意に無視したことを意味する。
原告のフランス文学者及びフランス語教師としての専門性・価値・名誉という原告の人格権の核心について無視し否定するという人格権侵害を犯している。
② 2021年度、22年度のドイツ語紹介文に至っては、カラー写真入り、教師を漫画化したイラストに吹き出し付きというものである。これは、明らかにドイツ語以外の紹介より情報量的にも遥かに膨大であり、不均衡というほかない。被告においては、不均衡なものでも認められるのである。ゆえに原告の24行の原稿を認めれば不均衡というのは、不合理な主張である。
3 ハラスメント3について
(1) 認否
被告第1準備書面、第5,3(6頁)について、被告は、ドイツ語の記事だけを大々的に載せて宣伝した」のではない、と主張するが、その点は事実の主張として誤りである。
また、原告の担当のフランス語の記事が掲載されないのは、原告自身の問題であるかのように主張しているが、それも前提とする事実に誤りがある。
(2)原告の主張
① ドイツ語教員**氏がNHKラジオの講師をやっているという記事や雑誌にドイツ語に関するエッセーを書いたという記事を写真入りで掲載しており、しかも他の語学の記事は何も載せられていないという状態が何年か続いていた。
ほとんどドイツ語の新入生履修者数を増やすための宣伝と言っていい状態であった。
② 被告は、「法学部HPへの掲載記事は、教員が、掲載を希望する内容を自ら提案し、その内容の記事を掲載することに支障がなければ掲載するという取扱になっている」と主張している。
しかし、そもそもそのような取扱になったことはいつどのように決まったのか。少なくとも原告はそのことを被告から通知されたことはない。
**氏や法学部教務課を始めとする東洋大学法学部及び被告が法学部HPに語学関係記事が掲載可能な場があるということを、原告に知らせつつそこへの記事掲載がありうる旨を原告に連絡し、その機会の提供をしてきたことがないという点こそが原告が今回被告の問題とするポイントである。
東洋大学法学部にあっては、英語・中国語の履修者数が圧倒的に多く、フランス語とドイツ語は履修者数から言うと競合する状況である。したがって、**や法学部教務課を始めとする東洋大学法学部及び被告がHPでドイツ語だけを宣伝すれば、ドイツ語の新入生履修者を増やしそれに呼応してフランス語履修者を減らすことにつながる。これにより不利益を被るのはもっぱらフランス語である。もし**や法学部教務課を始めとする東洋大学法学部及び被告に良識があれば、このような不平等な状態が実現することを回避し、フランス語教員である原告にHPに語学宣伝用の場があることを教えそこに記事を掲載するか否かの検討を求めたはずである。にもかかわらず、原告にはそのような対応がなされなかった。
この点が、被告がフランス語に対する劣遇をすることが、原告の教育に対する悪意を持っていると解する理由である。
4 ハラスメント4について
(1)認否
被告第1準備書面、第5,4(7頁)について、被告主張中、「2022年度、専任語学教員14名のうち5名が教養演習あるいはセミナーを担当し」という点と、「原告も含め、教養科目担当教員に対し、「教養演習開講方針」が示され」という点は認め、「教養演習開講方針」が2011年であることについては確認不可能であるため不知、その余は否認する。
(2)原告の主張
①被告は、2022年度の「教養演習」あるいは「セミナー」について、原告のほかにも担当していないかのような主張をして、原告に「教養演習」あるいは「セミナー」を担当させていないのはそれほどおかしなことではないかのように主張しているが、これは印象操作である。
第1準備書面8頁に被告の掲げる「2022年度の「教養演習」の開講状況」の表には、**語教員**の教養演習、**語教員**のセミナーが書かれていない。第1準備書面8頁における被告の「英語教員や、中国語教員で「教養演習」を担当している者はいない」という主張は事実ではない。
また、第1準備書面7頁において被告は、2022年度、「**教員による教養演習は開講されていない」と書くが、その理由は**教員**氏が2022年度国内特別研究員になっており授業を一切担当していないためである。**氏は、2021年まで毎年教養演習を担当していた。
2022年度は5名であるとしても、2020年度、2021年度を見ると話は変わって来る。2020年度には**語教員である**氏が教養演習を、2021年度には**語教員**氏が教養演習を、**語教員**氏が春学期集中で「言語と文化」という科目を、それぞれ担当している。
つまり、2020年度、21年度、22年度の3年間で、**語教員**、**、**語教員**、**、**の5名の各氏に加えて、3名が教養演習等自身の専門に関わる科目を語学科目以外に担当している。
② 手元に残る授業評価アンケート実施科目一覧を見てみると、**教員の**氏は少なくとも2013年度から2018年度まで毎年、**語教員**氏と**大学に移った**教員金田英子氏は少なくとも2013年から2016年まで毎年、「教養演習」を担当している。
**語教員**氏と**氏は少なくとも2013年から2022年まで10年間にわたって毎年国際政治学という専門講義科目を担当している。**氏は、2017年度には少なくとも国際政治学という講義科目一つ、**は国際政治学という講義科目一つに加えセミナーを2つ担当している。
2017年度には**語教員**氏が少なくとも「組織内コーチング」という講義科目を担当している。
2018年度には、**氏が教養演習兼セミナー、セミナー、国際政治学の講義、**氏がセミナー2つに国際政治学の講義と、それぞれ語学科目以外の科目を3コマも担当している。2018年度にはまた、英語教員室松氏がセミナーと「国際社会とキャリア」の2科目、やはり英語教員である**氏と****氏が「言語と文化」という春学期集中講義を、中国語教員である*****氏とドイツ語教員****氏が教養演習を担当している。
③ 人ごとに見てみると、英語教員****氏は2018年度に引き続き(2019年度については手元に資料がない)2020~22年度の3年間、教養演習兼セミナーを2つと国際政治学講義の計3コマを担当している。ショート氏は2020年度にセミナー2つに国際政治学講義の計3コマ、2021年度と2022年度には少なくともセミナーと国際政治学講義の2コマを語学授業以外に担当している。
また、英語教員**氏は、2018年度と2020~22年度の3年間にセミナーと「国際社会とキャリア」あるいは「組織内コーチング」という名目の講義科目の計2科目を語学科目以外に担当し続けている。
ドイツ語教員田****氏は、少なくとも2021年度に教養演習とセミナー兼卒論ゼミという2科目を語学科目以外に担当している。ドイツ語教員バウアー氏は、2022年には教養演習に加えて「言語と文化」という講義科目をも担当している。
まとめてみると、2020年度、21年度、22年度の3年間で、専任語学教員14名のうち8名が教養演習等自身の専門に直接関わる語学以外の科目を担当している。
⑤ これに対し、原告の実績を見ると、原告は、2007年以来、教養演習、セミナー、講義といった、自身の専門である文学の授業を、全く担当していない。原告の専門性を東洋大学の教育の中で広げる機会が、ほかの教員には設けられているのに、原告については設けられてこなかった。
⑥ 被告は「履修希望者が少ない場合には開講できない」と主張するが、それは事実に反する。
原告が2006年、2007年の2年間行った教養演習における履修者は、6,7名であった。
原告の一年前である2005年度に教養演習を開講した英語の****氏、ドイツ語の*****氏、中国語の**氏ら3名は、3名とも3年間にわたり受講生ゼロだった。
この事実を考え合わせると、原告の教養演習の履修希望者が少ないとは考えられない。
⑦ 被告は、乙第3号証として、2011年のものであるとして、当時の****学部長による「教養演習開講について」という文書を提出している。ここに記載された「教養演習開講方針」には、「履修人数については、法学部時間割編成方針の「演習科目は、原則として最低10名の履修者を確保するものとする」に基づき、10名の履修者確保を目途とする。したがって、希望者が10名に満たない場合は、開講しないことがありうる」とされている。
しかし、2018年度、2020年度、2021年度、2022年度の4年分の法学部各教員の担当科目一覧を見てみると、履修者10名未満の演習科目が多数ある。
例えば、2022年度については、****氏の2つのセミナー兼教養演習が7名と8名、****氏のセミナーが2名、****氏の教養演習が0名、**氏のセミナーが1名、専門演習は、**氏2名、**氏1名、**氏6名、**氏3名、**氏9名、***氏6名、**氏8名となっている。
⑧ このように、被告が、原告の教養演習が2007年1年だけ履修者10名未満であっただけで翌年から開講しないことを決定したのは、履修者が少ないという理由によるのではない。原告の教育機会を積極的に奪っているのである。
⑨ 教養演習担当希望の有無について被告は、2011年7月21日にはかったとしており、確かにそのようなメール連絡はあった。
しかし、被告の東洋大学法学部が原告に諮ったのは、この2011年の、「教養演習開講方針」送付の際、一回のみである。
2007年以降現在に至るまで、この一回を除くと、会議、メール、口頭、いかなる形態のもとにおいても原告に教養演習担当希望の有無について諮られたことはない。
すでに2008年以降、教養演習の機会を奪われており、送信されている内容が10名以上の履修者というような条件がつけられているもとで、原告が被告からの送信に対してなんらの返信をしなかったとしてもそれほどおかしなことではない。
⑩ 以上のように、この教養演習の設置や、担当は、法学部長が実質的に気に入っている・気に入っていないといった価値判断のもと、担当できるかどうかが決まっているのであり、原告はそうした機会から一貫して排除されてきたのである。「教養演習開講方針」に定められた語学科目6コマ+教養演習1コマ計7コマが守られず、計6コマでの開講が多数あった。
こうした事実から、「教養演習開講方針」は、原告を排斥するための、ハラスメント目的で作成された文書であると解される。
5 ハラスメント5について
(1) 認否
被告第1準備書面、第5,5(9頁)について、被告の主張は、原告が「長」につく地位についたことがない事実は認めているものの、その理由として述べる点は、事実に反する。
(2)原告の主張
① 東洋大学法学部において委員会の「長」が互選によって定められているという被告の主張は完全なる虚偽である。そのようなことは全くない。例えば、語学委員会でも互選で委員長が定められたことは一度もない。
東洋大学法学部において委員長は、法学部長を中心とする執行部が定めている。
② この点に原告が異議を唱えた原告2016年4月23日のメールに、同日の返信で、ドイツ語教員****は「委員長の選出が「互選」ではなく、「学部長が行う」とはっきり言明している。
以下が**の返信からの引用である。
「私が着任しました2009年以降のことしか申し上げられないのですが、言われてみますと、2009年、2010年あたりは、4月の定例教授会の前後で、5分刻みぐらいの「第1回各種委員会」が開催され、その場で委員長の承認と議事録をとる書記の選出をしていたような記憶はあります。もちろん、委員長の選出は学部長がされますし、その頃も、各種委員会の長・メンバーの審議は、3月中の教授会でなされていたと思いますので、「追認」という手続きの有無だけの違いのような気はします。(記憶違いであればお許しください。)
この形式が形骸化し、さらにはいつの間にか廃止となったのだと思いますが、もしかすると、ある時期においてそのような(開催時間がたった5分であっても)「第1回各種委員会」で委員長の追認がなされていたことは、福田先生の書かれていることと方向性が同じであるかもしれません。ただ、委員長の選出が「互選」ではなく、学部長の「専権事項」であるということは変わらないと思いますので、もしも委員長の選出について提案をしようと思いました場合には、語学委員会だけでなく、法学部に設置されていますすべての各種委員会において、新たに「互選」とする提案をするか、「追認の手続き」を復活させるかなどのことが必要ではないかと存じます。私も、不勉強ながら、その道の可能性につきましては否定するものではありません」。[傍点引用者による]
③ つまり、原告は、学部長によって意図的に「長」のつく地位に選任されてこなかったということである。
これは、被告及び東洋大学法学部による仲間外しのハラスメントであり、原告が大学の自治に参画することを妨げることによって原告の人格権を棄損する不法行為である。
6 ハラスメント6について
(1) 認否
被告第1準備書面、第5,6(9頁)について、教員の採否の在り方について否認する。
ここで問題なのは、その選任の際に活用されるという審査結果通知書の作成の在り方であるが、被告は原告主張の事実については、否認しているところ、被告が否認しているのは誤りである。また、被告の主張は反論になっていないので、その旨指摘する。
(2) 原告の主張
① 「この審査にあたって、審査結果報告書に主査である原告の用意した所見は全く記載されず、副査の******文学部教授の所見のみが記載されていた」という訴状13頁の一文につき、被告は第1準備書面9頁において「否認ないし争う」としている。被告の言明は全くの虚偽である。
② 原告は、2019年1月28日に東洋大学法学部教務課に自身の所見を記載した非常勤講師業績審査報告書をメールで送っている。「主要業績の査読結果」として***氏の二つの論文についての所見を記している。
しかし、甲第16号証の「東洋大学 非常勤講師候補者の審査結果報告書」には原告の所見は全く掲載されず、そもそも原告の担当した「主要業績の査読結果」欄さえ全く設けられていない。つまり、「東洋大学 非常勤講師候補者の審査結果報告書」において、この報告書のために原告がやった仕事は全く無視された。
甲第16号証の「東洋大学 非常勤講師候補者の審査結果報告書」には、***教授の文章についてはこれを踏まえたことをはっきりと示しつつ、それによって、***教授のフランス文学者としての見識・専門性等を尊重した。
他方、原告には主要業績の査読結果を書かせておきながらその内容を全く無視して、原告のフランス文学者としての見識・専門性等についてはこれを完全に無視した。
井上貴也法学部長を始めとする被告及び東洋大学法学部による朝比奈教授の文章と原告の文章の扱いの間の甚だしい格差と対照は、井上貴也法学部長を始めとする被告及び東洋大学法学部が、両者間のこのコントラストを「東洋大学 非常勤講師候補者の審査結果報告書」において強調し待遇の差を見せつけることによって、原告に対するさげすみと差別、劣遇をいやがうえにも浮き彫りにしつつ原告に激しい屈辱感とそれに伴う激しい苦痛を感じさせる。
③被告の主張は、原告の主張に対する反論になっていない。
被告の言う原告の後任として、原告が***氏を指名したということが問題なのではない。
選定のプロセスにおいて、あえて原告の仕事や見識を無視する対応をしたということが問題である。
7 ハラスメント7について
(1) 認否
被告第1準備書面、第5,7(10頁)について、被告の指摘する事実は認める。
(2) 原告の主張
① 被告の指摘する事実は原告の主張する事実を認めるものになっているが、しかし、被告が事実について指摘する意味は全く不当である。
② 2007年から2017年まで、2016年を除いて、原告は10月推薦入試の際、留学生日本語試験の採点を担当した。うち2007年から少なくとも2014年までの8年間、原告の担当する留学生日本語試験採点の日には、他の法学部教員の出向は全くなく、その日の出向は法学部では毎年原告一人であった。
留学生日本語試験採点の他学部担当者は毎年入れ替わり、同じ教員が複数年続けて担当することは基本的にない。原告だけがほとんど10年連続でこれを担当するのは異様なことである。
留学生日本語試験採点は、主に日本人であれば誰でも知っているような基本的な漢字の読みをひらがなで書かせるといった日本語の基礎に関する答案の採点であり、日本人であれば誰でもできる仕事である。それに対して、面接試験は、大学の顔として、大学教員として受験生に相対する仕事である。
被告及び東洋大学法学部がほとんど10年間連続で原告にこれを強要したことは、原告にのみ過小な仕事をさせ、仲間外しとする、というハラスメントである。
被告は「2016年は、原告は、留学生試験の面接を担当した」と主張するが、11年間に一回だけ原告に面接試験を担当させたからといって、10年間にわたって原告に留学生日本語試験の採点をやらせながら面接試験を担当させなかったという仲間外しのハラスメントを何ら否定できるものではないから、この主張は反論となっていない。
8 ハラスメント8について
(1) 認否
被告第1準備書面、第5,8(10頁)について、否認する。
(2)原告の主張
①被告は、原告主張の事実を否認しているが、被告の主張は誤りである。
② 2018年6月25日に、東洋大学法学部教務課職員***氏に翌年の国内特別研究についての打ち合わせがあるということで法学部教務課に原告は呼び出された。
教務課では、**氏と****氏が対応した。
打ち合わせの途中で馬橋氏が原告の書いた研究計画書を原告にちらちら見えるような形で、手にもちひらひらさせていた。その時、原告には、研究計画書タイトルの「マルクスの欲望」が赤字で勝手に訂正され「マルクスの欲望について」とされ、その上、段落分けのなかった本文がやはり赤ペンで三つに段落分けされているのが見えた。しかし、馬橋は研究計画書に言及することも、赤字の添削について原告に相談することも、研究計画書を原告に渡すことも全くしなかった。
原告は打ち合わせの三日後の6月28日に、**氏にメールを送信した(甲17)。
その中で、「先日ひとつ申し忘れましたが、国内特別研究計画書についてタイトルの変更等ありますでしょうか?」と確認した。
それに対して**氏は、翌29日のメールで「お尋ねの件につきまして、国内特別研究計画書のタイトルといいますのは、先生の研究課題名のことでしょうか。もしくは、本書式のそのもののことでしょうか」と書いた。
しかし**氏の質問は不自然である。書式そのもののタイトル、つまり「2019年度 国内特別研究計画書」というタイトルに変更などあり得ないということは教務課職員であれば知らないことはない。
**氏のメールに対し、原告は、翌6月30日、「タイトルというのは私の書いた研究課題名の「マルクスの欲望」というところで、そこに赤で加筆があるように見えたので、御確認できれば幸いです。あと、研究計画の方は、赤で三つの段落に分けられていたかと思いますが、そちらはそれでかまいません、というか、そうして頂けると助かります」。
このメールに対して**氏は返信しなかった。
7月3日には教授会を控えており、そこに改竄された研究計画書を資料として出されては困るので、原告は7月2日、さらに**氏にメールを出し、「研究課題名についてですが、明日の教授会まで時間がないですので、加筆修正なしの「マルクスの欲望」で、本文も段落分けのみであとは私の書いた通り、ということでお願いできますでしょうか?」。
これに対し**氏は同日すぐに返信し、「タイトルにつきまして、先生の記載どおり「マルクスの欲望」で進めさせていただきます。本文につきましても、改行のみとさせていただきます」と回答した。
これが、「タイトルを書き換え、本文を勝手に段落分けした」事実である。
**氏は、メールのやり取りの中で、原告の原稿について勝手に手を入れる行為をしていなければ、「先生の送っていただいた原稿のままで対応します」と答えれば済むところを、あえてタイトルを先生の記載通りと回答し、改行のみ行うとして、どこでどんな改行をするかを尋ねもしないという連絡をしているから、原告に事前の承諾なく、原告の原稿に勝手に手を入れたことを暗に認めているといえる。
② 被告は、乙4の「2019年度国内特別研究計への画書」への原告による押印によって原告が記載内容を承諾していると主張するが、この押印は、2018年7月11日になされた。前述の原告と**氏とのメールのやり取りの後である。
つまり、最終的に原告が確認して押印したからといって、**氏が原告の原稿を勝手に改ざんした事実に変わりはない。
第3 「トロムソ」について
訴状25頁、26頁にある「トロムソ」という項目については、トロムソとはノルウェーの都市名で、そこで法学部英語教員****の専門である平和学の海外研修が行われている。この海外研修にここ数年多額の予算がついている。
以 上